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リュウからの電話の後、リンたちはすぐに行動を起こした。そして今、リンとカノンそしてメグの三人は、例の百目鬼家の分家があったとされる場所にきていた。
「これは、どういう事ですかね?」
「おかしいね」
「メグにはサッパリ状況がわからないのですけど、何がどうおかしいのですか?」
この場所に初めて来たメグにとっては二人の困惑の理由がわからなかった。その疑問を受けてカノンが説明をする。
「あのね、ココに確かにもう一つビルが入るくらいの空間があったの。特殊な条件を満たさないと見られないと言うことはあったけど、わたしたちなら問題なかったはずなんだけど・・・」
今、三人の目の前にはただ普通の雑居ビルが並んでいるのが見えていた。リンがその隙間に手を入れてみるが、なんの違和感もない。
「何か手がかりはないですかね・・・」
三人とも打つ手がなく途方にくれているところに上空からヒラヒラと何かが落ちてきた。それをリンが拾う。
「これは・・・!」
「どうしたの?」
「どうしましたの?」
カノンとメグがリンの手元を覗き込む。そして、二人は首を傾げる。
「どういうことですの?」
「何でココ?」
「分かりません。それに、おそらくこれは十中八九、罠でしょうね」
「だったら、もうちょっと準備とかしたほうが・・・」
リンは、どうすべきか頭をフル回転して考えていた。そんなリンの手元からメグが紙片を取り上げた。
「メグ?」
「ねえ、リン様。メグは、やっぱり足手まといでしょうか?」
「どうしたんですか。そんなことを言うなんてメグらしくもないですね」
メグは、じっと紙片を見つめている。その紙片には『百目鬼家当主が通う学校にてお待ちしております。ご当主をお連れ頂けましたらあなたの知りたいことをお教えいたしましょう』と書かれていた。
「このお手紙はリン様に宛てられたものですわよね。ということは、リン様とかんちゃんが揃っていればいいってことですわ。メグの入る余地がないですわ」
「メグ」
リンは、メグのことをそっと抱き寄せるとポンポンと背中を優しくたたく。
「まったく、あなたは頭が良すぎるんですよ。勝手に理解して結論を出さないでください」
「でも・・・」
「確かに、この手紙にはあなたの存在はこれっぽちも触れられていません。それは、当たり前のことです。あなたの存在は、この送り主にとってイレギュラーなんですから」
「そうだよ。メグさんは前ここに来たときはいなかったんだから、手紙に触れられてなくて当たり前だよ」
「それに、メグの存在が知られていないということは僕たちにとっては大きな武器になるはずです」
「リン様・・・好き」
「えっ!?な、なんで急に・・・」
メグは、少しだけリンから離れるとその頬にそっと触れるだけの口づけをした。リンは、頬に手を当てて顔を真っ赤にしている。
「ありがとう、リン様。それに、かんちゃんも。メグはお二人の最終兵器になりますわ」
少し頬を赤らめ、それでもとても幸せそうな笑顔見せたメグが二人の手を取る。
「とにかく行ってみましょう。ここにこれ以上いても仕方ないですわ」
「そうですね。では、虎穴に入らずんば虎子を得ずといいますし、行ってみましょう」
「・・・」
二人の決意する表情を見てカノンは、また少し不安になっていた。この手紙の主は、おそらくカノンに何らかの価値を見出しているように思える。このまま、二人を連れて行って本当にいいのかわからない。できれば、一人でどうにかしたいけど、自分一人で二人を振り切ることができるとも思えない。それに、やはり一人では心細いというのが本音だ。だから、自分の存在を利用して二人を守ることができるなら最大限に利用しようと心に誓った。
リンたちはカノンが通っている小学校へと来ていた。すでにあたりには帳が下りており、人通りはない。学校内には誰もいないようでどこにも明かりはついていない。門も締まっているためこのままいくと不法侵入することになりそうだ。
「本当にここでいいのかな?」
「そうですね。なぜ、ここなのかはわかりませんが、ここに何かがあるのは確かだと思います」
「でも、罠の可能性が高いのですわよね」
「それは、考慮の上です。そのうえであえて乗ってみるんです。二人のことは僕が守りますから」
「リン様がそうおっしゃるならメグは従うだけですわ。でも、メグだってリン様を守りますわ」
「わたしも、二人のこと守るから!」
カノンにしては、語気が強い。ここのところずっとカノンと一緒にいたリンにとって、今のカノンの様子は普通には見えなかった。
「何か心配でもありますか?」
「う、ん」
歯切れ悪そうに返事をすると、カノンは不安そうなまなざしを学校へと向けた。何か良くないことが起こる予感がするが、それがどういったものであるのかはカノンにもわからない。ただ、漠然とした不安があるだけだ。だけど、ここまで来たからには引き返す気もなかった。
「カノン」
リンが優しく声をかける。
「気が進まないのなら、カノンはここで待っていますか?」
カノンは、リンの気遣いに思わず甘えて頷きたくなるが、それではいけないということも感じていた。カノンは首を横にフルフルと振った。
「行く。わたしも行く。多分わたしが行かなくちゃいけないんだと思う。たとえ、何があっても」
「カノン・・・」
リンは、この小さな女の子を絶対に守ろうと誓い、その頭にそっと手を乗せた。
「カノン、僕のそばを離れないでくださいね」
カノンは、リンの瞳を見つめ神妙な面持ちでうなずいた。
「では、行きますか」
三人が門に近づくと、三人を迎え入れるように門はゆっくりと開いていく。
「どうやらお待ちかねのようですね」
三人はそれぞれに視線を合わせてお互いの意思を確認すると、ゆっくりと門の中へと足を踏み入れていった。




