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幸運の器  作者: ユキ。


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4‐7(解答回)

 リンたちが乗った車は、豪邸の門の中へ滑り込んでいく。広い前庭には車寄せがあり車は玄関前へと乗りつけた。助手席に乗っていた男性が素早く降りるとリンが乗っている側のドアを開ける。ついで、運転手も降りると彼はアリスが乗っている側のドアを開けた。

「あの・・・。どうも」

 状況が理解できずにしどろもどろになりながら何とか降りると既にリンは玄関前へと到達していた。

「アリスさん、こちらへ」

 促されるままリンと共に中へと入る。

「・・・」

 ある程度の覚悟はしていたつもりだったが、アリスは玄関ホールがあって、そこに螺旋階段がある家を初めて見た。開いた口が閉じられない衝撃が続く。

凜禰(りんね)様。お帰りなさいませ」

 いかにも執事という感じの初老の男性と、これまたいかにもメイドという感じの中年の女性が頭を下げてリンを迎え入れる。

「遅くなってすみません。それと急な来客で申し訳ないですけど、よろしくお願いします」

「かしこまりました」

 二人は自分のなすべきことを理解しているらしく躊躇いもなく動き出した。二人と入れ替えに若いメイド姿の女性が現れ、三人を先導する。

「どうぞこちらへ」

 リンに倣ってアリスは後に続く。通されたのはリビングと言うには大袈裟すぎる、強いて言うなれば応接室と言ったところだろうか。そして、かなり豪華と言える部類の部屋に通された。

「とりあえず、座ってください」

 調度品はどれも高級そうに見える。審美眼がある訳では無いが、それぐらいはわかる程、手触りから座り心地まで全てが完璧に思えた。

「う、うん」

 所在なさげに座るアリスを見てリンは申し訳ない気持ちになる。リンもアリスの前の席に腰を下ろし、抱き抱えていたカノンをそっと横たわらせる。

「すみません。いきなり連れてきてしまって。ただ、あなたの安全を考えるのならここが最適かと判断したことだと理解していただけたら助かります」

「ええ?あーうん。その辺はちゃんと理解してるよ。ただ、ココって何処なの?」

 リンは虚をつかれたような顔をして、次いで破顔する。

「すみません。そうですよね、僕とはつい最近出会ったばかりなのに、何だかそんな気がしなくて失念していました。ここは、僕の実家です」

「ご実家・・・」

 ポカンと開いた口が塞がらない。そんな気はしていたが、リンはとんでもないお坊ちゃんだったようだ。

「とりあえずここにいれば安心ですから。いくらでもいていいですからね」

「いやいや、すぐに帰るから」

「ですから、今アリスさんが一人になると危険なんです。外出する時には護衛をつけますから」

「だから、そんな大袈裟だって!」

 リンは頭をフルフルと振る。

「あなたこそわかっていないです。本当に、危険なんです」

 リンの真剣な表情にそれ以上強くは言えず、別の話題を振る。

「わかったわ。じゃあ、この状況を説明して」

「そうですね。何も知らないのにこんなところに無理やり連れてこられても納得できないですよね。では、あなたの質問に答える形で話しましょう」

「わかった。じぁあ、まず、ずっと気になってたんだけど、その子は誰?」

「その子?」

 リンは不思議そうに首を傾げてから、自分の膝を枕にして寝ている少女を見下ろした。

「あれ?初対面でしたったけ?」

「そうよ!」

「それは失礼しました。彼女は『百目鬼華音』です。僕たちの関係は、そうですね・・・。兄妹のようなものでしょうか?」

「百目鬼?」

 アリスはリンが思ってたのとは少し違う反応を示した。

「どうしました?」

「百目鬼って珍しい名前よね?」

「そうですね」

「その子って、兄弟いる?」

「・・・」

 リンは、ハルカのことを思い出していた。確か、ハルカも同じような反応をしていたはずだ。

「もしかして、別の百目鬼さんをご存じなのですか?」

「ええ、まあ。アタシの大学の先輩と仲良かった人が確か百目鬼って名前だったはずなんだけど・・・」

「この子と似ていたんですか?」

 リンに言われて、アリスはカノンのことを改めてよく見た。この小さな女の子はどう見ても生粋の日本人には見えない。だけど、雰囲気だけみれば似ているような気もする。

「うーん。良くはわからないけど、アタシが知ってる人はサラサラの黒の長髪で、とんでもなく美形ってことくらいかな」

「そうですか・・・」

 リンは、アリスの話を聞いて一つの仮説を立ててみた。

「もしかしてですが、カミヤハルカさんという方をご存じじゃないですか?」

「!」

 アリスは、驚きで目を見開き食い入るようにリンのことを見た。

「ハルカ先輩のこと知ってるの!?さっき話した先輩っていうのがハルカ先輩のことなんだけど・・・」

「なるほど。少しだけ線がつながった気がします」

「なに一人で納得してるのよ!どういうこと?」

「納得はしていませんよ。ただ、もしかしたら、あなたとも出会うべくして出会ったのかもしない。そう思っただけです」

 リンの言葉に、アリスの顔面は一気に赤く染まった。もちろんアリスには、リンがその言葉に特別な意味を持たせていないことはわかっていたが、そんなことを言われたら運命的なものを感じてしまうのは仕方ないことだ。自分を落ち着かせるためにも、アリスはことさら何でもないことのように、少し大きめの声で話を別に振った。

「そういえば、さっきのこの子、全然子供らしくなかったけどいつもそうなの?」

「ああ、あれは実は僕も驚いているんです。普段はもう少し子供らしい子なのですが・・・」

「そうなの?すっごく年季が入っているようにも感じたけど。まあ、いいわ。それより、無事に脱出できて良かったわよね」

「無事・・・ですかね・・・」

 リンがどこか落ち込んだ感じなのが気にはなるが、アリスは本当によくあの場所から帰ってこれたと感心していた。

「だって、あんな暗号みたいなのパッと解いちゃってたじゃない。あれって、どういうことだったの?」

「ああ、あれですか・・・」

 リンは、特に関心がなさそうにあの暗号の謎を教えてくれた。

「僕たちがアリスさんと出会う前、ちょうどエレベーターに乗るときにある紙切れを拾ったんですよ。その紙切れと、アリスさんの発言でそれが暗号でどうやって解けばいいのかなんとなくわかったんです」


 リンによると、カノンが拾った紙片は暗号の解き方を示していて、アリスが見たSHOという文字と数字がキーになっていたということだった。SHOはもちろんショウのことを指している。そして、カノンからショウの誕生日が三月二十五日ということを聞いたので、『325』という数字が浮かび上がった。

 最初はそのまま『325』という数字を押してみたが、そんな単純にはいかなかった。それで、拾った紙片のことを思い出したらしい。

 紙片には「Stroke、Height、Order」と書かれていたので、「Stroke=ボタンを押す回数」「Height=ボタンを押す位置」「Order=ボタンを押す順序」と仮定して、ショウの誕生日である『325』をそれぞれに当てはめて、「Stroke=3」「Height=2」「Order=5」とした。

 そうなると、ボタンを押す回数は3回なのは、わかった。

 次に紙片にはOrderに関しての記述もあったので、『Order=5』にあたる、『rel』に注目した。Order1=add(加算)、Order2=sub(減算)、Order3=mix(加減混合)、Order4=abs(絶対値)、Order5=rel(相対値)とすると、『Order5=rel』は相対値で何かをすることが分かる。

 さらに、紙片の最後には、『3、-4、3』と書かれていたのでこれが相対値の鍵になると再び仮定し、H=2が2番目のボタンが基準になると仮定した。

 それらをまとめると、2+3=5、5-4=1、1+3=4で「514」の順番でボタンを押せばいいことが分かった。その結果が、隠しボタンを顕現させるということに繋がったらしいということだった。


「うわー、なんかよくわかんないけどすごーい!」

 瞳をキラキラさせて尊敬の眼差しを向けてくるアリスに、ちょっと照れくささを感じリンは視線を逸らす。そんな照れた顔のリンを見て、アリスは自分でもどうしようもない感情が溢れてくるのを感じた。もう自分でもごまかしきれなくなっている気持ちは、今はまだそっとしまっておくことにして、もう一つ疑問に思っていたことを尋ねた。

「それにしても、あなたたちはなんであそこにいたの?目的は?」

「目的、ですか?それは・・・まあ、人探し、みたいなものです」

「人探し?誰を?」

「リュウの・・・」

「リュウ君?」

 そこでアリスは思い出した。気を失う前に見た光景を。

「そうだ!リュウ君は大丈夫なの!?」

「?何故です?何故あなたがリュウの安否を気にするのですか?」

「だって、アタシ見たのよ。リュウ君が椅子に縛られているところ」

「何処で!」

 あまりのリンの勢いに思わず腰を引く。

「モニター越しに見ただけだから・・・。ごめんなさい。場所は分からないの」

「はー」

 リンは大きなため息を吐くとしばらく下を向いたまま手を握りしめていた。

「すみません。驚かせてしまって」

「う、ううん。大丈夫。もしかして、リュウ君とは連絡取れないの?」

「そうなんです。カノンが途中まではリュウの気配を感じていたのですが、どうやら何らかの理由でそれがわからなくなってしまって・・・。僕が、できることがあるなら何でもするのに・・・」

 最後の方は、思わず思っていることがこぼれ出したかのように消え入りそうな声で呟いた。そこに先程の執事が戻ってきた。

「お部屋の準備が整いました」

 執事の言葉に、リンは気を取り直すように姿勢を正す。

「ありがとうございます」

「そちらのお嬢様は私がお連れ致しましょうか?」

「大丈夫です。僕が運びます」

 リンはカノンを再び抱き上げると立ち上がりアリスを見た。

「アリスさん。あなたの部屋も用意したので来てください」

「えっ?う、うん。わかった」

 アリスは未だ疑問が渦巻く中だったが、自分がどうしようもない疲労感に苛まれていることに気づいた。

「お言葉に甘えさせて貰うわ。何だかとても疲れたみたい」

「ゆっくり休んでください」

 リンに促されるままアリスは後について行く。

「そちらのお嬢様はどうぞこちらの部屋をお使い下さい」

 アリスは、執事に案内された部屋に入る。とてつもなく広い部屋にでも通されるかと思ったが、予想外にそれほどの広さはなかった。しかし、とても居心地が良い空間だった。

「なんだろう?すっごい落ち着くー」

 アリスは部屋に設置されているベッドに飛び込んだ。

「うわー!何これ。めちゃくちゃ寝心地いいんですけど・・・」

 着替えなども用意されているのが目の端に入ったがアリスは睡魔に負け、気づけば深い眠りへと落ちていった。


 一方リンはカノンを別の部屋へと連れてきた。子供には大きすぎるベッドの上にそっとカノンを横たわらせる。

「カノン。あなたに無茶をさせてしまってすみません。今日は、ゆっくり休んでください」

 カノンの顔にかかる髪の毛をそっと払い優しくその頭を撫でると表情を引きしめて立ち上がった。

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