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幸運の器  作者: ユキ。


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4-6(謎解き回)

 アリスは真っ暗闇の中で途方に暮れていた。

「もー!何なのよ!暗すぎてどこから来たのかもわからなくなっちゃったじゃない!」

 アリスは、腹いせ紛れで目の前の謎の物体を思いっきり蹴り飛ばした。すると、ゴゴゴゴゴゴと何処からか鈍い音が聞こえたと思ったら、パッと明かりがついた。

「っ!まぶしっ!」

 しかしその眩しさも一瞬のことで、閉じた瞼の裏には光の残像だけが残った。しばらくしてから、恐る恐る目を開けると異様な空間が広がっていた。そこは、思った通り何もない空間だった。いや、正確には地面にはアリスが蹴り飛ばしたもの以外何もなかった。しかし、壁面にはびっしりとモニターが埋め込まれていた。何かの数値がずらっと並んでいるものもあれば何処かの場所を映し出しているものもある。監視カメラのようなものなのかもしれない。そのどれもが今は暗視カメラで映しているような映像が流れている。その一つにリンたちの姿を見つけた。

「リン君!」

 アリスはそのモニターの前まで駆け寄った。リンは、扉に体当たりをしているところだった。

「何?これ?どうなってるの?」

 アリスは視線を横にずらすと、そこには椅子に縛られてグッタリしている人物が目に入る。

「っ!リュウ君!?」

 リュウの方は、ピクリとも動かない。アリスは不安に駆られて、何かできないか手当たり次第にその辺を触りまくった。

「何かないの?大抵こう言うところにはボタンみたいなのがあるんじゃないの?」

 バンバン叩き回っていたので、アリスはその気配に気付くのが遅れた。そして、気がついた時には遅かった。頭を何か硬いもので殴られた衝撃を感じた瞬間、アリスの意識は遠のいて行った。それでもアリスは最後の瞬間まで無意識で体を動かす。その手が何かを掠めた。そして、完全に意識を失った。


 プシューと何か空気が抜ける音が聞こえた。リンは立ち上がると扉に手をかけた。あんなにまで頑なだった扉は何の抵抗もなく開く。

「カノン!こちらに」

 リンは手を伸ばしてカノンの手を掴むと素早く扉の外へと抜け出した。

「どうして開いたの?」

「わかりません。でも、好機です」

「あっ!」

 カノンが小さく声を上げる。

「どうしました?」

「わたしもよくわからないけど、リュウくんの居場所がわかるかも」

「本当ですか!」

「・・・多分」

「それでも構いません。リュウは、何処にいそうですか?」

「うん。ちょっと待って」

 カノンは目を閉じ、意識を集中させる。すると、次に目を開いた時にはすっかり様子が変わっていた。

「こちらじゃ」

 カノンは、スッと手を伸ばすと奥の扉を指差した。

「カノン?」

 雰囲気の変わったカノンにリンは戸惑う。それには構わずカノンはスタスタと歩を進める。

「何をしておる。行くぞ」

 リンは言いたいことをグッと堪えてカノンの後に続いた。カノンは何の迷いもないように足を進める。廊下の突き当たりの扉の前に着くとノブを回した。しかし、鍵が掛かっているのかびくともしない。

「これは困ったの」

 カノンは顎に手をかけ首を傾げる。雰囲気は一変したが、体力的なものは変化がないらしい。代わりにリンがノブを回す。確かに鍵が掛かっていて開きそうもない。

「この中にリュウはいるのですね」

「ふむ。中と言うよりかはもっと下の方じゃな」

「下?更に地下に続いていると言うことですか?」

「ふむ。まあ、そうじゃろうな。下の方は、もっと複雑な構造になっているようじゃ。我とて近づかなければ正確な位置が割り出せぬ」

「なるほど」

 リンは扉に手を当ててみる。先ほど触れた時何か違和感のようなものを感じたからだ。集中してみると、扉から自分の中に何かが流れ込んでくるのがわかった。そして、徐々に扉にかかっていた膜のようなものが剥がれていくのを感じる。しばらくすると、スッと扉と自分の間にあった膜が消える感覚がした。改めてノブに手をかけてみる。すると何の抵抗もなく開いた。

「それが其方の力なのかのう?」

「僕の力?」

「詳しいことは調べてみなければわからぬが今はそれよりもーーー」

「そうですね。先を急ぎましょう」

 扉の中は左右に一つずつさらに扉があった。そして、その真ん中にエレベーターが設置されていた。すぐに乗り込もうとするリンだったが、カノンが近くに落ちていた紙片を拾った。

「何ですか?それは」

「はて?なんじゃろうな。じゃが、何かしら必要になる気がするのう」

「ちょっと見せてもらってもいいですか?」

「よいぞ」

 カノンはリンに紙片を渡した。その紙片には次のような単語と数字が並んでいた。


【Stroke、Height、Order

 SHOW the truth


 Order1=add、Order2=sub、Order3=mix、Order4=abs、Order5=rel


 3、-4、3】


「これだけではよくわかりませんね。ひとまず、今は先を急ぎましょう」

 リンが、エレベーターの呼び出しボタンを押すとすぐに扉が開いた。二人は無言で乗り込んだ。庫内のボタンは何の表示もないものが縦に五つ並んでいた。

「カノン、わかりますか?」

「おそらく一番下じゃろう」

「わかりました」

 何の迷いもなくリンは一番下のボタンを押した。すぐにエレベーターが動き出した。随分と長く感じたが実際には数十秒といったところだったのだろうが、ようやくと言うように動きが止まった。扉が音もなく開く。

「待て」

 カノンの鋭い声にリンは足を止める。

「リュウキの気配が消えた」

「えっ?」

 リンは驚いて振り向く。

「どう言うことですか!?まさかーーー」

「いや、おそらく其方の想像しているようなことではあるまい。ふむ。これは、どう言うことじゃ?」

「カノンでもわからないことなのですか?」

「一先ず、このビルから出た方が良さそうじゃ。戻るぞ」

 リンは名残惜しそうにエレベーターの外に視線を向けるが、意を決してドアを閉めた。リンは一番上のボタンを押した。再びエレベーターが動き出す。先ほどよりも長く感じたが、動きが止まり扉が開く。

「っ!?ここは?」

 そこは先ほど乗り込んだ場所とは明らかに違う場所だった。暗いので違いなどわからなそうだが、二人にははっきりと違う場所だと言うことがわかった。なぜなら、目の前に人が倒れていたからだ。暗がりなので誰なのかはわからない。倒れている人物も全く動かない。

「罠でしょうか?」

 カノンは少し考える素振りを見せてから首を横に振った。

「いや、この者は運を全て抜き取られておるようじゃな」

「運が抜き取られる?それはどう言う状態なのですか?」

「我も完全に抜き取られた者を見るのは初めてじゃ」

 リンは、そっと倒れている人物に近づいた。近づいてわかった。

「アリスさん!?」

「知り合いか?」

「知り合いというほどではないのですが・・・。説明は後です」

 素早くアリスの元に駆け寄ったリンは、そっと彼女を抱き起こした。顔には生気がなくまるで死んでいるようだった。

「あなたは帰ったはずではなかったのですか!?何でこんな無茶を」

 リンは、アリスが意識を取り戻すことを強く願った。すると、また不思議な感覚を覚えた。先ほどとは逆で、自分の中の何かがアリスへと流れ込んでいく感覚だ。リンは本能的に、それがアリスにとって最善だと認識してしばらくそのままでいた。するとーーー。ピクっ。アリスの指先が微かに動いた。ついでゆっくりと瞼が開く。

「アリス!」

 ゆっくりと数度瞬きをするとアリスは微笑み、手をあげリンの頬に触れた。

「良かった。無事だったのね」

「何、人の心配してるんですか!」

 アリスは不思議そうに目をパチパチさせた。

「リン君がそんなに声を荒げるのって結構レアなんじゃない?」

「は?」

「そうでもないぞ。こやつは他人が傷ついたりした時は結構な割合でキャラが崩壊するのじゃ」

 カノンが横槍を入れてくる。

「そういえば、喫茶店でもそうだったっけ・・・」

 カノンとアリスは視線を合わせると、理解しあった者同士のように頷きあっている。その様子を見てリンは、ごまかす様に慌てて話を逸らす。

「カノン!あなたは大体何なんですか!あなたこそ普段と全然違うじゃないですか!」

「ほう。今になってそこに言及するのじゃな」

「最初から問いただしたかったですがそんな場合じゃなかったじゃないですか!」

「まあ、そうじゃな。それより、そろそろここを離れんと更に状況が悪化するぞよ」

「ーーーっ!わかりました!とにかく、アリスさん、立てますか?」

「あら?もう呼び捨てにはしてくれないの?」

「からかわないでください。今は本当に時間がないんです」

「ごめんごめん。ーーーちょっと嬉しくなっちゃって」

 最後の方は小声でだったためリンには届かない。

「何か言いましたか?」

「ううん。何でもない。ほら、行こ」

 アリスはよろけながらも立ち上がった。三人は再びエレベーターに乗り込む。

「さて、どのボタンを押せば良いのかの?」

 ボタンは五つ並んでおり、一番下と一番上は押した。と言うことは、単純に考えれば真ん中のボタンを押せば地上に出られるように思われるが、リンの手は止まる。

「おそらく普通に押しただけでは元の場所には辿り着けない気がします」

「そうじゃの」

「そうなの?」

「何かヒントになりそうなものはないですかね」

「そういえばお主」

「えっ?アタシ?」

「そうじゃ。お主は如何様にあの場へと辿り着いた」

「アタシは、普通に階段を登っただけよ」

「階段ですか。何階まで登ったのですか?」

「何階?さあ?真っ暗だったからよくわからないのよね。だけど、一番上だったのは確かだと思う。階段がそこで途切れてたから」

「そうですか・・・。それで、その階には何があったのですか?変わったものや気づいたことがあれば何でもいいので教えてください」

「そうね・・・。私がいた階にはモニターが沢山あったわ。警備員室みたいにいろんな部屋を映し出してたみたい。そういえば、一つだけ『SHO』って書いてあるやつがあったの。ちょうどリン君たちが映ってたモニターだったはず。それに、何か数字も書いてあったんだよね。あれは、なんとなく何かの日付っぽかった気がするけど・・・何か役に立つ?」

「『SHO』ですか・・・。きっとこれはそのままショウのことでしょうね。となると、数字は誕生日か何かでしょうか・・・」

「ふむ。ツカゴシショウの誕生日なら三月二十五日じゃな」

「なんで、そんなこと知っているの?」

 と不思議がるアリスを置き去りに、リンは何かを思いついたようでボタンと向き合う。しばらく考えた後、リンは素早くボタンをいくつか押した。すると「ブッ」と短く音がした。

「違いましたか・・・」

 そこで、リンは何かを思い出したようにカノンのことを見た。

「そういえば、カノン。先ほど拾った紙を見せてくれませんか?」

「これかの?」

 と、先ほどエレベーターを乗る前に見つけた紙を取り出しリンへと渡した。それをじっと見つめながら、リンは何やらブツブツと呟いいている。少し首をかしげながら、再びボタンをいくつか押した。「ブッブッ」と音がする。

「なるほど。間違えられるのは後一回ぐらいですかね」

 リンはもう一度、紙片へと視線を落とす。「多分考え方はあっているはずなんですよね・・・」と呟きながら、しばらく考え込むと意を決したように顔を上げると、慎重に手を動かして、またいくつかのボタンを押した。すると、今度はボタンが並んでいる下がスーッと開き別のボタンが現れた。

「ビンゴみたいですね」

「スゴイ!何でわかったの?」

「あなたのお陰です」

 リンはアリスを見つめると隠しきれない嬉しさを滲ませながらニコリと微笑んだ。

(うわっ。ヤバ。今の不意打ち笑顔、破壊力半端ないんだけど)とアリスが心の中で一人悶えていることも知らず、リンはスッと表情を戻すと三人ともエレベーターに乗っていることを確認し、そのボタンを押した。

「お主もなかなかやるのう」

「お褒めに預かり光栄です。と言いたいところですが、カノンはいつまでその状態なのですか?」

「ふむ。それは我にも分からぬ。我も急に呼び出されたのでな」

「呼び出された?」

 リンが問いかけると同時にエレベーターが止まりドアが開いた。

「どうやら元の場所に戻れたみたいですね。やはり先ほどの暗号のようなものはショウの部屋への直通番号だったのですね」

「そのようじゃな。それより、しばし待て。害意がないか探ってみるゆえ」

 カノンは少しの間集中すると緊張を解いた。

「詳細は分からぬが、どうやら近くに害をなそうとするものはいなそうじゃ」

「そうですか。一先ずラッキーと思うことにしましょう。では、急いで外に出ましょう」

 三人は、来た道を戻り玄関から外へと出た。

「どうにか脱出はできましたが、この後はどうしましょうか」

「・・・」

 リンの問いかけにカノンは返事を返さない。

「カノン?」

 不審に思いカノンを見るとフラフラと体を揺らし、今まさに倒れそうになっていた。

「カノン!」

 慌ててリンが抱き抱えて倒れるのを阻止したが、リンの問いかけに応えることはない。

「カノン!どうしたんですか!しっかりしてください!」

「ちょっと落ち着いて」

「しかしーーー」

 アリスは落ち着いた様子でカノンの状態を検めた。

「うん。大丈夫そう。緊張が解けて寝ちゃったみたいね」

「寝・・・た?」

「うん。寝てるだけ」

「はー。全く驚かさないでくださいよ。しかし、困りましたね」

「何が?」

「あなたを一人にするのは心配なのでカノンの家に匿ってもらおうと思っていたのですが・・・」

「えっ?大丈夫よ。アタシなら。一人で帰れるから」

「そう言うわけにはいきません。ご家族にもご迷惑が」

「あーそれなら大丈夫。一人暮らしだし、親もあんまりアタシに興味はないから」

「ーーーあの」

「いーって、いーって。気にしないで。まあ、そう言うわけで何の心配もないから」

「・・・そうですか。では余計にあなたを一人にするわけにはいきません」

 リンはそう言うとスマホを取り出し何処かへと連絡した。

「では、一先ずこの場から離れましょう」

 リンはカノンを抱き上げるとスタスタと歩き出した。

「ちょっとどこ行くのよ」

「とりあえず安全な場所です」

 人通りの多いところに出て程なく、三人が歩くすぐそばにスーッと高級そうな車が止まった。リンは何の躊躇いもなくその後部座席を開けるとアリスを促す。

「乗ってください」

「えっ?ちょっと待っーーー」

「待ちません。説明は後でします」

 そう言われてしまったら返す言葉もなく、アリスは大人しく車に乗り込んだ。リンもそれに続く。車は音もなく走り出す。特に何の指示も出すことなく走り続けること数十分。車は、立派な門に囲まれた豪邸の前で止まった。アリスはただその大きさに圧倒されるばかりだった・・・。

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