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幸運の器  作者: ユキ。


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24/44

4‐4

 リンはスマホで何度もリュウにメッセージを送っていた。しかし、返ってきたのは最初の一通のみ。もう、かれこれリンは喫茶店に1時間はいる。そして、その向かいには相変わらずアリスがいた。

「バイトはいいんですか」

 不機嫌さを丸出しにしながらリンはアリスに尋ねた。

「今日はバイトないもの」

「じゃあ、何でここにいるんですか」

「アタシが休みにどこに行こうと勝手でしょ?」

「それはそうですが・・・」

「ねえ、リン君」

 リンはギョッとした様にアリスを見た。

「何よその顔」

「いえ、名前を覚えてるとは思ってなかったもので」

「どんだけアタシをアホだと思ってるのよ」

「そうではないのですが、あまり知らない方に名前を呼ばれ慣れていないもので」

「プッ。アハハハハハ」

「何故笑うんですか」

 訝しげなリンに対してアリスはとても楽しそうだった。

「だって!どんだけ人見知りなのよ」

「人見知り?僕が?」

「何その初めて知りましたって顔は」

「うるさいですよ。そんなことはいいですから、何か聞きたい事があったんじゃないですか?」

「ああ、そうそう。もう一人のイケメン君、リュウ君だっけ?彼は今日はいないの?それとも待ち合わせ?」

 リンの顔が曇る。それを見て、アリスも笑顔を引っ込めて真剣な表情をした。

「ねえ、あなたたち。危ない事、してないわよね」

「あなたには関係ない事です」

「そうね。確かに関係ないけど、それでもあなたたちと知り合っちゃったんだからほっとけないわ」

「それでも、放っておいて下さい」

「でもーーー」

 ブルルルル。

 リンのスマホが震え出した。表示にリュウの名前がある。リンはあからさまにホッとした表情を見せてスマホを手に取った。

「リュウ、何回連絡したとーーー」

 そこでリンは口を閉ざした。

「お前は、誰だ」

 押し殺してはいるが、殺気だったリンの声にアリスも息を潜める。

「君たちは百目鬼家の者ですか?」

「・・・違う」

「なるほど。百目鬼家ではないが何かしらの関係はあるという事ですね」

「そんなことはどうでもいい!リュウは無事か!?」

「ああ。このスマホの持ち主ですか。それなら。まだ無事です」

「まだ?」

「ええ。こちらの要求をのむなら無事に帰しましょう。ただし、百目鬼家には知らせてはいけません。知らせれば、直ちに彼には消えてもらいます」

「っ!ーーーわかった。どうすればいい」

「そうですね。まずは、百目鬼家の当主、百目鬼華音を連れてきてもらいましょうか」

「・・・今、百目鬼家には知らせるなと言わなかったか?」

「ふふふ。そうですね。百目鬼家には知らさないでください。そのうえで、百目鬼華音を連れてきてください」

「ッ!・・・カノンをどうするつもりだ!」

「おやおや、あなたは百目鬼家ご当主とは懇意なのですか?でも、安心して下さい。殺しはしません」

「ころっーーー本当だな」

「ええ。ワタシは嘘が嫌いなのです」

「わかった。どこに連れて行けばいいんだ」

「あなたの目の前のビルですよ。このスマホの持ち主もいますからね」

「・・・わかった。時間は?」

「そうですね。一時間後にしましょう」

「一時間後だな。約束は守れよ」

「ええ、もちろんです。ワタシはウソと約束を破る事が大嫌いなんですよ。では、一時間後にーーー」

 そこで電話が切れた。

「っクソ!」

「ちょっとリン君?」

 リンは、ハッとして顔を上げた。自分が今どこにいて誰といたかをようやく思い出した。

「すみません。僕は用ができたのでこれで失礼させていただきます」

 そう言って立ちあがろうとするリンの腕をアリスは咄嗟に掴んだ。

「何ですか?」

 リンは訝しげな顔をする。

「大丈夫なの?」

「あなたには関係ない事です。手を離して下さい」

「ほっとけないよ!そんな泣きそうな顔してるのに!」

 リンは、またしても自分では無自覚で表情が崩れていたことに気づく。取り繕うように手で顔を隠す。

「泣いてなどいないです」

「でも・・・。役に立たないかもしれない。だけど、アタシにも何か手伝わせて!」

 リンは、優しい手つきでアリスの手を自分の腕から引き離した。その優しい仕草とは裏腹に強い拒絶を感じた。

「すみません。もう行きますね。気をつけて帰ってください」

 それだけ言い残すとリンは足早に店を後にした。

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