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66_ちょっと気づいた私の変化?

 

 魔塔に帰りついた私は、複雑な思いを抱えて疲れ切っていた。


 ──少しでも役に立てて良かった。だけど、誤解なんかされないようにもっとうまくやれていれば、魔獣ちゃんを治癒してもらえたかもしれない……。


「ルーツィア、神官ソレイユやリゼット・リーステラは、俺達がなにをどうしても文句をつけて魔塔側が悪いかのように非難しただろう。魔獣を治癒してもらえなかったのは残念だったが、あれは仕方ないから自分が悪いのかもしれないなどと思い悩まないでくれ」


 空からそのまま魔塔に入り、セルヒ様とオーランド様と手を離したところで、すぐさまセルヒ様がそう声をかけてくれる。

 セルヒ様は本当に心配そうな表情を浮かべていて、私を心から励まそうとしてくれているのだと伝わった。


「はい……」


「そうそう!ルーツィアちゃんが悪いなんてことはぜーったいにないから。むしろ助けてやったのに、難癖にもほどがあるよねー。ていうかそもそもセルヒが護衛依頼を断った時点でリゼット嬢のご機嫌はとっくに損ねていたわけだし~」

「ぐっ!ノース、確かに俺の行動が全てのはじまりではあるが……!ル、ルーツィア、本当にすまない。しかしだな、どれだけ考えても『あの時くだらん護衛依頼を受けておくべきだった』とはどうしても思えなくて……!」

「そんなことしたらセルヒは死んじゃうもんねえ」


 けらけらと笑うノース様と悔しげに謝るセルヒ様のやりとりに、私の方が慌ててしまう。


「いえ!私がリゼットといい関係性を築いてこられなかったことが一番最初の問題なので……!」


 セルヒ様とノース様は、私を和ませるためか、その後もセルヒ様のやり方が悪かったとわいわいやりとりしていて。


 そんな騒ぎが気になったのか、魔獣ちゃんがモゾっと動き、私のローブの懐から頭を出した。


「キュキュウ」


「魔獣ちゃん、大丈夫?」


 さっきまで、とても怯えて警戒している様子だった魔獣ちゃん。けれど今は私の言葉にこちらを見ると、きゅるんきゅるんの瞳で可愛く見つめてくれている。

 よかった、すっかり気持ちは落ち着いたみたいだわ。


 だけど、その体を撫でていて気付いてしまった。


 ……いつも以上に体に傷がつき、目が潤んでいる。


 瘴気だまりに近づいたことで、いつも以上に瘴気の影響が強く出てしまったのかもしれない。まさかそんな作用があるなんて思わなくて、リゼットに治してもらえたらすぐに良くなるって簡単に考えて……完全に軽率だった。


「ごめんね、魔獣ちゃん。あなたを治癒してもらえたらよかったんだけれど……」


 そうすれば魔獣ちゃんがこれ以上辛い思いをすることはなかったはずなのに。

 討伐で使った残りの回復薬を魔獣ちゃんにそっと飲ませてあげながら、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまう。


 ギズリ様を攻撃したと誤解されたことで、リゼットからの心象はさらに悪くなってしまっている。きっと今後どれだけお願いしても、リゼットが魔獣ちゃんを治癒してくれることはないだろうって、さすがの私にも分かっていた。


 でも、どうしようもないことは仕方ない。私は私にできることをやるしかない。

 私は、さっき討伐現場で訓練の成果がきちんと発揮できたことを思いながら、もう一度決意を新たにしていた。


「魔獣ちゃん、私、もっともっと頑張って、魔力量を増やして、魔獣ちゃんがどんな力を持っていても大丈夫だと思えるくらいになってきっとあなたと契約できるようにしてみせるからね……!」


 そう、今のところ考えつく方法は、それくらいだから。


 私の魔獣ちゃんへの宣言が耳に届いたのか、ノース様とじゃれて(?)いたセルヒ様が、何かを思い出したように近づいて来た。


「そういえば……今日ずっと気になっていたんだ」

「なんでしょうか?」


 セルヒ様の改まった様子に、ノース様とオーランド様も注目する。


「瘴気だまりを見ることができたこと、ずっと神官騎士のサポートをし続けていられていたこと、俺よりも先にギズリ神官騎士の危険を察知できたこと……どれも、ちょっと魔力量が多いくらいではできることではない。ルーツィア、ひょっとして君の魔力量はとんでもなく増大しているんじゃないのか?」


「え……?」


 思ってもみなかったことに、目をぱちくりとさせてしまう。


「それは僕も思っていたんだよねえ。だけど最近は訓練も勉強もほとんどずっと僕が見ているけれど、何か特別なことをしているわけじゃないし」


 うーん?と不思議そうに首を傾げるオーランド様。

 だけど私はじわりと興奮していた。

 ……ひょっとして、毎日魔力量をあげるためにしていたことがほんの少しでも実を結んでいたの?


「あの、実は……」


 私は毎日、訓練などが全部終わって夜に自室で一人になったあと、魔力量を増やしたり健康になるため、勉強したり調べた方法などを試していたことを告白した。


「ルーツィアちゃん、そんなことしてたの!?日中あれだけオーランドと頑張ったあとに!?本当、努力家なんだから~」


 ノース様は驚いてそう言ってくれたけれど。


「ルーツィア、明らかにオーバーワークだったんじゃない?何もなかったからいいものの、それで体調を崩す可能性だってあったんだよ。僕に相談してくれればよかったのに……」

「はい、ごめんなさい……」


 オーランド様には叱られてしまった。だけど、それが私を心配してくれているからだと分かるので、罪悪感が湧きあがってくる。

 しょんぼりする私を見たオーランド様は、仕方がないなとばかりにため息をつくと、頭を撫でてくれた。


「なっ!オーランド、俺の前でルーツィアに触れるなどやっぱりルーツィアの指導をしてくれているとはいえどなかなか許しがたい光景なんだが俺のこの湧きあがる激情は一体どうしたらいいんだ」

「あはは!ルーツィアちゃんは師匠に撫でてもらって嬉しそうだけど?お前は黙って我慢すればいいと思うよ~」


 オーランド様はそのまま私に尋ねる。


「それにしても、聞いている内容は確かに魔力量を増やすのに有効だとは思うけど、さすがに短期間で魔力の増え方が異常だよねえ。さすがに気になるから、ちょっと実際にやって見せてもらえる?」


「分かりました」



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