ジ・ルクスの翼⑥
セレスの頬の朱みもひいたのか、二人は並んで歩いていた。
「あ、ついたわね、串焼き二本貰えるかしら」
「へい、お待ち」
「ありがとう」
セレスはお代と引き換えに串焼きを受け取り、はいと一本を流星に渡す。
流星はお礼をいって、お金を渡そうとするも「ここは先輩のおごりよ」と受け取ってもらえない。
流星はもう一度ありがとう、いただきますといって一口食べようとするも、
「待って、こういったものには食べ方の作法があるのよ、見てなさい、こうよ」
そう言ってセレスは横から豪快にかぶりついて半分ほどの肉を串から引き抜く。
お嬢様らしからぬ気持ちのいい食べッぷりに流星は固まるものの、同じようにかぶりついた。
一度に口に含みすぎた二人は暫くの間、無言でほっぺをふくらませながら、もぐもぐとしていた。
もちろん、セレスの方は口元を左手で隠しながらであった。
ごくん、と二人はほぼ同時に飲み込むとなんだか可笑しくなって笑った。
(よかった、リューセイ、笑ってくれた)
セレスははじめてだったのだ、こんな風に友達と町を歩くことが、いつもクエストや戦闘のことばっかだったから、こんな時どんなことを話せばいいのかわからなかったけれど、流星が楽しそうにしているのをみて嬉しくなった。
「こういったものをはじめて食べたのだけれど、結構美味しいのね、知らなかったわ」
「セレス、はじめてだったの?さっき作法とか言ってたのに?」
「そ、それはあれよ、昔、数回だけ一緒にクエスト受けた人たちが言ってたのよ」
「ふふ、なんだそれ」
二人並んで歩きながら残りの半分の肉をゆっくり食べながら歩いた。
「少し、喉乾いたね、俺、飲み物買ってくるよ」
そう言って流星は近くの飲み物屋の屋台へ走っていく。
「はい、どうぞ、リンゴジュースでよかった?」
「ありがとう、いくらだった?」
「ん?いいよ、今度は俺が出すよ」
「そういうことなら、いただきます、貴方もジュースなのね、てっきりエールとか飲むものだと思っていたわ」
「実はさ、苦手なんだエール、あの苦さがなんとも」
「ふふ、そうよね、私もジュースの方が好きよ」
二人して色んなお店を冷やかして歩いた。
空も暗くなってきた。
「もうこんな時間ね、帰りましょうか」
「そうだね」
宿の前まで一緒に歩いて、おやすみなさいと言って別れた。
☆☆☆
「おやすみなさいか、久しぶりに言ったな」
流星はベットに寝転がりなが独り呟く。
ソロで行動してると言わない言葉だ、なんだか悪くないなって思った。
それから《ジ・ルクスの翼》でのことを考える。
女神ルクスの言葉。
夜の欠片を集める。
そして……
「……勇者には気を付けてか」
勇者とは何を指すのだろう?
ジョブとしての勇者か、それとも召喚された者達か。
正直なところ、そろそろ姫宮さん達のところに戻ろうと考えていたのだ。
《焔の剣士》として闘えるのであれば、黒歴史が恥ずかしくて人前、特に姫宮さんの前でスキルを使えないっていう理由がなくなる。
今回のクエストで路金は充分過ぎるほどに貯まったのだ。
会いに行けると思ったんだけどな……
勇者には気を付けて、この言葉を信じるのであれば、いま戻るのは危険であろう。
それに、迷宮から戻ってからステータスが変なのだ。
焔の剣士で固定されている。
闇を纏いし星屑に戻れないのだ。
無茶をしたつけ、おそらく女神ルクスの言っていた揺り戻しと言うやつであろう。
暫くの間は最強になれないまま闘うしかない。
切り札を使わないのと使えないのでは大きく違う。
この状態で誰が敵なのかわからない、チート持ちのところにいくのは御免被る。
しばらくは別行動かな。
☆☆☆
翌日、二人は馬車に乗ってウォーグレンへの帰路につく。
帰りの馬車での話題はもっぱら、強い冒険者や騎士の話題であった。
と言ってもセレスが話すのを流星が聞いているという形であったのだが、二人とも楽しそうであった。
セレスは強くなりたいという思いから強者の情報収集は怠らなかった、なんなら趣味ですらあった。
そして、強者には必ずと言っていいほど二つ名があった。
そう、自分で自分の二つ名を沢山考えていた程の痛々しい子供だった流星からしたらとても興味深い話だった。
子供の様に目を輝かせて聞く流星にセレスも口がよくまわる。
そんなこんなであっという間にウォーグレンに着いたのだ。
ギルドにいって納品をする。
「はい、確かに規定数量受け取りました、お疲れ様でした、報酬の方、振り込ませていただきます、それからギルドマスターが話あるそうなのでお時間頂けますでしょうか」
「はい、大丈夫ですよ」
「では、こちらに」
受付嬢の案内で応接室に通されてしばらく待つ。
ギルドマスターがやってきた。
「すまない、待たせた、クエストご苦労さん、帰って来たばっかで悪いんだが、次の依頼だ」
「ーーールストブライド大渓谷の調査をお願いしたい」
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