ジ・ルクスの翼⑤
「ん……」
セレスは目を覚ますと医務室の簡易ベットの上に寝かされていることに気づいた。
徐々に意識がはっきりしていく。
「あれ?私、迷宮で死にそうになって……助けられて……ッ!リューセイッ!」
流星の安否が心配で飛び起きたセレス。
しかし、その美貌を真っ青な顔から一転、真っ赤に染めることになった。
「大丈夫、俺も無事だよ」
ベットの脇の椅子に座った流星が動揺している自分をみて微笑んでいたからだ。
いままでずっとすました顔で馴れ合うつもりなんてないみたいな態度をとっていただけに本気で流星の身を案じている自分の姿を見られるのが恥ずかしかったのだ。
セレスはクシクシと前髪を弄りながら
「……貴方が無事でよかったわ」
と消え入りそうな声で言った。
「うん」
「それから……その、ごめんなさい」
泣き出しそうな声であった。
「いいよ、二人とも無事だったんだから」
「それでも、私が貴方を危険にさらしたのよ」
「もともと迷宮は危険な場所だよ」
「はぐらかさないで、ノルマを達成したところで引き返せばよかった、私の勝手で……」
「いいよ、次から気を付ければ」
迷宮は危険だ、命懸けの闘いの中に次なんてないのかもしれない、けれど、今回は次があった、二人とも無事で帰還した、ならそれは次に活かせばいい。
それに彼女はもう深く反省してる、自分の過ちを悔いている、ならもう俺が責めるようなことはないんだ。
そもそも仲間に力を隠していた俺にそんなことを言う資格なんてない。
「次って、またパーティー組んでくれるの……?」
「もちろん、君さえよかったらだけど」
「……ほんと?また一緒に冒険したいわ」
流星は、はじめて見る、しおらしいセレスになんだか物足りなさを感じてしまう。
「だからさ、いつものセレスらしくさ、仕方ないから組んであげるわ、せいぜい足を引っ張らないでッくらい言ってくれよ」
「……ッ!?な、なによ!貴方、私のことなんだと思ってるの!?それに何、それ私の真似!?」
「ははは、元気になったね、その調子その調子」
セリスは愉快に笑う流星をキッと睨み付けるが、はぁと脱力する。
そんなセレスにひとしきり笑った流星は真剣な顔で尋ねる。
「身体は大丈夫?」
「大丈夫よ、私はそこまで大きな傷は負っていないわ、疲労と魔力切れで動けなくなっただけ、すこし寝たからもう大丈夫よ」
「そうか、じゃあ帰りますかウォーグレンに、俺、馬車の手配してくるね」
行きのことを思い返し、セレスは寄り道もせず最短効率でこなそうとするだろうと帰路の馬車の手配を申し出た。
そして、きびすを返して医務室から出ようとすると、袖をきゅっとセレスに掴まれ足を止めた。
セレスは振りかえる流星に、一瞬だけいい淀んだ様子を見せたものの意を決したように言葉を紡いだ。
「……ま、待ちなさい!、まだやることが残っているわ!う、打ち上げするわよ!」
「へ?」
セレスは予想外の言葉にキョトンとする流星に対し焦ったように言葉を繋げる。
「だ、だから打ち上げ!パーティーはね、迷宮から帰還した後にメンバー同士で飲み食いして騒ぐものなの!そうやって結束を高めていくのよ」
「セレス、そういうの嫌いじゃ?いままで一度も参加したことないって聞いたけど?」
「ッ!?そ、それは、だってあの人たちのこと一度も仲間だって思ったことなかったし……ギルドマスターに言われたから仕方なく何度か一緒に依頼をこなしただけで……で、でもリューセイのことは仲間だと思っているし……貴方のこともっと知りたいもの」
後半にいくにつれてしりつぼみするセレスの言葉を流星は全て聞き取ることができなかった。
セレスは突然、ハッとして、今度は怒ったように顔を赤くして
「だ、だから冒険者の先輩である私がルーキーの貴方に冒険者の作法を教えてあげるっていっているのよ!どうするの!」
「ぜ、是非宜しくお願いします!」
その剣幕に背筋をピンとただして答える流星。
「よろしい、では先ずは串焼き食べにいくわよ」
「へ?それって」
迷宮に潜る前に流星が食べたいって言っていたものだ。
覚えてくれてたんだと流星は嬉しくなる。
そんな流星をみてセレスは、
「よ、余計な詮索は禁止よ!黙って私の後についてきなさい」
そう言うとベットから華麗に飛び降り、綺麗に髪を靡かせながら歩きだした。
「はい先輩!」
流星はそう返事してスタスタと歩くセレスの後を追った。
流星がセレスの横に並ぼうとするとセレスもスピードを速めてしまう。
「ちょっと先輩速いですって、もう少しゆっくり歩きましょうよ」
スタスタスタ
「せ、先輩?セレス?セレスさーん?」
スピードを弛めるどころか更に速めるセレス。
「い、いいから貴方は黙って私の後をついてきなさい」
その言葉は、セレスの耳の後ろまでが朱く染まっていたことと無関係ではないだろう。
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