ジ・ルクスの翼④
「セレスッ!!」
流星は反射的に機械天使とセレスの間に身を踊らせていた。
セレスの身代わりになって攻撃を受け吹っ飛ばされた。
ギリギリで身体と閃光の間に剣をいれ、剣で受けることができた。
付与魔法を剣にかけ続ける。
強化を解けば死ぬ。
攻撃が止むのが先か自らの魔力が尽きるのが先か祈るしかなかった。
身を焦がすほどの熱量と圧し潰されそうな質量に身体が悲鳴をあげていた。
攻撃が途切れたのと剣が折れたのは同時だった。
閃光に圧されて吹き飛んでいた流星は地面に転がった。
「……っう、セレスッ」
セレスとの距離はかなり離れてしまっていた。
戻らないと、焦る流星の耳にギュインと機械音が響いた。
……なんの音だ?起動音みたいな?
周りを見渡すと壁一面に機械天使が整然と並んでいた。
格納庫、そんな言葉が頭をよぎった。
そう流星が吹き飛ばされて転がり込んだ部屋は機械天使の格納庫であった。
広い空間、その壁に敷き詰められた機械天使はざっと1000を越えるだろう。
その上、数体は先ほどの攻撃してきた機械天使と同型。
その全てが一斉に起動していた。
まずい、ステータスを切り換える。
ひびの入った胸当てを脱ぎ捨て漆黒のローブと指貫グローブ、そして仮面を身に纏う。
【闇を纏いし星屑】へと変身をした。
そして星剣と魔剣を召喚し構える。
それと同時に、起動を終えた機械天使が襲撃してくる。
それは弾丸のように次々と突っ込んでくる。
斬っても斬っても尽きる事のない弾丸。
疲労とダメージが蓄積された身体では捌ききることなどできなかった。
苦し紛れに最強の技、回数制限のあるスキルを放った。
「星竜解放!【星竜の翼撃】!」
三日月状の斬撃が機械天使を凪ぎ払う。
半数の天使は削れただろうか、しかし、まだ五百を超える下位天使と数体の最上位機械天使が残っている。
……ここまでか、
いやまだだ!セレスだけは助けないと。
瞳に再び闘志を灯した流星が突如闇に包まれた。
暗い、だけど不思議と不安は感じなかった。
暖かなものに包まれているような感じがした。
闇が晴れた。
そこには何もない、真っ白な空間が広がっていた。
先ほどまで周りを埋め尽くしていた機械天使が一体もいない、何もない。
ここはどこだ?迷宮の中なのか?
すると、目の前に黒い靄が広がり、人の形を作った。
そしてそこに顕れたのは一人の女性だ。
濡れたような艶のある黒髪の長髪。
しかしながら日本人離れ、いや人間離れした美貌。
泣き笑いのような表情をした彼女は……
「……ルクス」
流星の口から自然と言葉がでた。
なんだかそう確信したのだ、彼女が女神であると。
「やっと会えましたね、私の使徒」
「貴女が私を呼んだのですか?(このセカイに)」
後半は言葉にしなかったけれども伝わった。
「否、正確には授けたと言った方がいいでしょう、ハリエスの勇者召喚に割り込んで貴女に加護を授けました」
《ハリエス》このセカイの神、それもジ・ルクスと並ぶ程の大神と同じ名前だ。
「ハリエスとは?大神ラ・ハリエスのことでしょうか?それと私達を召喚したのはアルティミア王国ではないのでしょうか?」
「前半は肯、後半は否、異なるセカイから大勢の人間を拐い、そのうえで壊しもせずにこちらのセカイに適した肉体にすることなどどんなに優秀な魔法導師であろうと人間には不可能です、神の力が働いています」
「何故、私に加護を授けたのですか?」
「私の変わりにこのセカイを守って欲しいのです」
「魔王からですか?」
「否、ハリエスからです」
「へ?」
流星は神の御前であるにもかかわらずすっとんきょうな声を出してしまった。
「ハリエスは私からこのセカイの主神の座を奪おうとしています、夜の眷属とされる魔族を使い人間を絶望に追いやり私への信仰を失墜させようとしています、そして、自らの使徒たる光の勇者により絶望の縁よりセカイを救うことで一身に信仰を得ようとしているのです」
ジ・ルクスは夜を司っている、つまり魔族はルクスの眷属であると一般的にいわれていた。
「しかしながらそもそも魔族は私の眷属ではありません、ハリエスが彼女のセカイから連れてきた、彼女の眷属です、すべて彼女の自作自演です」
「連れてきたとは?」
「ハリエスは異世界の女神です、私の力はハリエスによって、3つにわけられて迷宮に封印されています、なけなしの神力を振り絞って勇者召喚に介入しましたが、それによって私は暫くは現世に干渉できないでしょう、今回は貴方の方から私の近くまで来てくれたからこうして会えましたが」
ジ・ルクスの迷宮とはルクスが人に与えた試練などではなく、ルクスの封印の場所なのか。
「まあ、急な話で信用なんてできないでしょうけど、貴方が私の願いを聞き届けてくれるのなら、私も1つだけ約束しましょう、貴方と共にやってきた娘が助かることを」
……セレスを助けられる?
急なことで頭の整理が追い付かない、けれども、その言葉だけは俺のなかにすっとはいってきたんだ。
それに、ルクスは勇者召喚を拐うと表現した。
だから、この女神を信じてみようと思う。
「何をすればいいのでしょうか?」
「先ずは夜の欠片を集めてください」
「夜の欠片とはなんですか?」
「私の力がハリエスに砕かれ封印される際に飛び散った私の力の欠片です、それにハリエスが悪意を混ぜ劇薬にしました、絶望の種です」
「どうやって見つければいいのですか?」
「そうですね……あら貴女いいものを持っていますね」
そう言ってルクスは流星の胸に人差し指で触れた。
正確には流星の胸元にかけられた折れた短剣に。
すると銀色だった短剣の刃が黒く染まった。
「その短剣に私の神力を注ぎました、欠片へはその短剣が導いてくれます、それから……」
そう言うと流星の頭に手のひらをのせた。
「……身体が軽くなった」
「ええ、貴方の身体から疲労とダメージを取り除きました、これで大丈夫でしょう」
この大丈夫はセレスのもとにたどり着けるという意味だろう。
「ですが、これは一時的なものです、後で揺り戻しがありますので、暫くの間は万全とはいかないでしょう、嗚呼、時間ですね……勇者には気を付けて」
流星の身体が再び闇に包まれる。
そして、目が覚めた。
☆☆☆
流星が覚醒するとそこは先程までと同じ戦場のなかであった。
目の前に迫るのは機械天使の槍。
先程までと違うのは身体中に漲る力。
回し蹴りで迫る槍を折る、二刀をふるい、天使を一掃した。
「9月17日、晴れ、俺は走った。誰よりも疾く、疾く。過去も現在もすべてを置き去りにして俺は未来へ行く……発動【スピードスター】」
スキルを発動して駆けるセレスのもとへと一直線に。
……間に合ってくれ!
ギュイーーン
セレスを抱き締め星剣で最上位機械天使のの攻撃を受け止めた。
間に合った。
後はこいつを倒すだけだ!
勢いのままに切り結び打ち倒した。
セレスの方へ振り替えると彼女は必死に訴えてきた。
「お願いします!私があげられるもの全部、支払うから、リューセイを、私の仲間を助けて!!!」
「わかった」
その言葉を聞いて安心して眠りについたセレスを抱き止めながら感じる彼女の体温。
けどそれ以上に私の仲間を助けてっていう彼女の言葉に胸が暖かくなったんだ。
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