ジ・ルクスの翼③
第六層にたどり着いた二人、ここからは目的の素材をドロップする魔物が出現する。
上層とは違い積極的に敵とのエンカウントを狙う。
機械天使。
機械人形の背中から白い翼をはやしている。
機械天使の強さは羽の数できまる。二枚から八枚、枚数が多くなるにつれて強さもあがる。
六層にて確認されていいるのは四枚羽までであった。
「くるわ、四体」
三体の二枚羽が一体の四体羽を囲む陣形で歩いていた。
流星たちが気づいたのと同様、機械天使も侵入者に気づいた。
その無機質な瞳に捉えた侵入者に対して三体の二枚羽が槍を構えて突撃する。後方の四枚羽も光の矢を放ってくる。
流星は剣で三本の槍を受け流す。
流星が二枚羽を受け持っている間に、セレスは雷短槍で光の矢を打ち落としながら側面の壁へと走る。
そしてその身軽さを利用し壁面を駆けて前衛を突破し、後方の四枚羽を相手取った。
強い、三体の機械天使の連携が厄介なのだ。
槍と剣、得物による間合いの不利は、焔を付与することで打ち消せる。
付与した焔は刀身を伸ばすことも斬撃を飛ばすことも可能だからだ。
敵の槍を受け流し、伸ばした刀身でコアを狙おうにも他の2体に阻まれてしまう。
幸いなのは迷宮の通路であったこと、機械天使が横に三体並べばほとんど幅がなく、槍を大きく振るえないこと、飛行動作に気を付けてさえいれば背後をとられることはないということだ。
流星は三体の機械天使をひきつけながら防御に撤する。無理に倒しにはいかない。
待っているのだ、彼女を。
四枚羽を倒したセレスが援護にくるのを。
そして反撃の時が来た。
セレスが反転し、二枚羽の背後から強襲する。
同時に流星も反撃に転じる。
「「ハッ」」
烈帛の気合いと共に敵を切り裂いた。
「強いな」
「ええ」
これで下級。上級の機械天使なんて相手取りたくないなと思う。
「次行くわよ」
「ああ」
☆☆☆
「よし、これで30個」
あれから2日をかけてなんとかノルマを達成した。
巡回している機械天使を見つけては狭い通路まで誘導して機動力を封じてから戦闘を繰り返して、3つの素材とも集め終わった。
全ての敵からドロップがあった訳ではない、手にいれた素材の数以上の戦闘をこなし二人の疲労もたまっていた。
「どうしますか?きりあげませんか?」
「もう少しレベルあげしていくわ、貴方は帰ってもいいわよ、五層の転移陣から帰還できるわ」
「なら付き合います」
「そう」
☆☆☆
「シッ」
機械天使を倒していく、幾度も繰り返してきた連携で、戦闘というよりかは作業になってきていた。
「いくわよ」
機械天使の部隊を発見し駆けていくセレス。
しかし蓄積された疲労と単調な戦闘が彼女の勘を鈍らせていた。
カチリ、踏み込んだ瞬間、そんな音が聞こえた。
バラバラと崩れ落ちていく、地面。
ふわりと身体が浮いた。
罠、気づいたときにはもうセレスは奈落へと吸い込まれていた。
「リューセイ!撤退しなさい」
セレスは落ちながら叫ぶ。
しかし流星は躊躇わず穴に飛び込んだ。
「いてて……セレス、無事か?」
「……なんで一緒にきたのよ」
「仲間だから」
見誤った、自らの心身の疲労を。
まだいけると思った、レベルをあげるには程よい強さの敵、欲が出た。
リューセイの提案どおり、ノルマ達成したところで切り上げればよかった。
それよりももっと前、ちゃんと仲間をつくって一緒に強くなるべきだった?
冒険をどこか楽しんでいる者達をみると真面目にやっていない、この人達ととじゃ強くなれないって思った。
周りに自分の理想を押し付けて自分のペースについてこれない者は切り捨てた。
それでも私はこの人達とは違う。独りでいい。その方が強くなれる。
ホントに?《ジ・ルクスの翼》私1人で六層まで来れた?
無理だった。
私のペースに文句1つ言わずについてきた彼。
打てば響くように連携がとれて心地よかった。
きっと初めてできた仲間。
でも私の慢心が彼を死地においやった。
セレスの胸を占めるのは激しい後悔だった。
「セレスッ!!」
流星の叫び声とともに突き飛ばされた。
セレスがさっきまでいた場所には閃光がはしっていた。
そして無防備にセレスが受けるはずだった敵の攻撃を流星が変わりに剣の腹で受け止めていた。
「くっ」
受け止めきれずに吹き飛ばされる流星。
放物線すら描くことなく直線に飛ばされていく。
「リューセイッ!!!」
……また、私は。
黙視できないくらい後方に飛ばされた彼。
それをやった原因を睨み付けた。
「……八枚羽」
目の前にいたのは最上位の機械天使だった。
いったい、どこの階層まで落ちたというの?
もしかして第十層?最悪が頭をよぎる。
けれど今は目の前の敵。
リューセイが生きていることを信じて、こいつを倒して助けにいく。
「あぁぁぁぁぁあーーー!」
私は恐怖を打ち消すために雄叫びをあげた。
「【レッドスプライト】!!!」
放つのは私の最強。
真紅の雷撃。
だけど私の最強は最上位の機械天使の表面をほんのり焦がしただけだった。
心が折れそうになる。
だけどッ私はまだ死ねない。彼だけは地上に還すんだ。
震える脚に力をいれて駆ける。
いつもと同じように。
壁を蹴って、縦横無尽に。
速く速く速く。
折を見て攻撃を加えていく。
刺突。
斬撃。
魔法。
どれも効かない。
それでも諦めない。
攻撃を避けながら敵を観察して弱点を見つけるんだ!
駆けて駆けて駆けて
……限界が来た。
プツンと糸が切れたみたいに。
脚が動かなくなったんだ。
ああ死ぬんだ。
無機質で無慈悲な一撃が振り下ろされる。
……ごめんなさい
目をつむり終わりを待つ。
けれど覚悟していた衝撃はいつまで経っても訪れなかった。
変わりに私の身体を包み込んだのは暖かさだ。
ギュイーーン
機械天使の一撃と何かがぶつかる音が響いてる。
……守られている?
身体を包む温もりが彼に感じた心地よさに似ていた。
まさかリューセイ?恐る恐る目を開けた。
そこに居たのは漆黒。
闇夜を纏い星の如き剣を振るう剣士であった。
一度だけ見たことがある。
その人の名前は【流れ星】
Sランク冒険者だ。
そうよね、リューセイな訳ないわよね。
あれ何で私はガッカリしてるのだろう?これ以上ない応援なのに。
神の使いと闇夜の使者。
目の前の神話ような闘いは何処か夢を見ているかのようで、ぼんやりとした頭でとりとめのないことを考えてしまう。
その闘いはあっさりと決着がついた。
星の剣が神の使いを切り裂いたのだ。
そして私も限界、けれどそのまえに言わないといけないことがあった。
「お願いします!私があげられるもの全部、支払うから、リューセイを、私の仲間を助けて!!!」
漆黒のマントにすがり付き泣き叫ぶ私を優しく抱き止め、
「わかった」
耳元で響いた何処か聞き覚えのある声。
それを聞いて私の意識は闇へと包まれた。
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