ジ・ルクスの翼①
「【電光石火】」
セレスが静かに呟く。
それがスキル発動の引き金。
セレスが消えた。否、一瞬にして移動したのだ。
目にも止まらぬ早さで殺人人形に肉薄し、片手剣で正確に胸元のコアを穿った。
素材をドロップする魔物、機械天使が出現するのは六層以下の下層、上層ではなるべく戦闘を避けて体力を温存する作戦だ。
そしてこの作戦を可能にするのがセレスのジョブである。
【閃姫】
雷系統の上級魔法剣士職の亜種、ユニークジョブである。
そのステータスは一級品の素早さと高い火力を有し、反対に防御性能は物理・魔法ともに紙装甲という尖ったものだ。
まるで当たらなければどんな攻撃も意味はないと言わんばかりである。
加えて、セレスの【閃姫】だけに言えることではないが、職名に姫がついているものは巫女的な性質も併せ持つ。
高い感受性を持ち、五感に加えて第六感ともいえる勘が冴えて、索敵能力も高い。
そんなセレス先導のもとに駆けていく。
「とまって、右の通路に殺人人形3体、私が右手側の2体を、左の1体をお願い」
「了解」
「シッ」とかけ声と共に角を曲がり右の通路に入る。
それと同時に敵を斬る。
セレスの実力は確かであった、ソロでCランクにまで至ったのも頷ける。
索敵しながら避けられる敵は避け、避けられない敵は素早く倒す、これを繰り返して、あっという間に第一層の階層主までたどり着いた。
「この先の部屋にいるわ、いけるわよね?」
「もちろん」
扉を開ける。
中にいたのは赤銅色の殺人人形が一体、血染め機械人形
大きさは二メートル程だ。先ほどまで相手にしていた奴等と比べても頭1つ分大きいだけである。
ボスというにはあまり強そうでなくてそれが逆に不気味であった。
血染め機械人形が流星達の方を向いた。
のっぺりとした頭部には瞳などないが確かに侵入者を認識したのだろう。
その腕を向けた。
シュン、血染め機械人形の肩口から剣が射出された。
真横に飛び回避するセレスと、剣で打ち落とす流星。
「あの腕、飛ばせるのかよ」
殺人人形にはなかった飛び道具である。
「散開するわよ」
二人は左右に別れて駆ける。
「あの剣、また生えてくるのかよ」
血染め機械人形は既に次弾が装填されていた。
シュンっと風を切り裂いて射出される剣を打ち落とす流星。
敵から剣が連射される。
「クッ」
2、3本、払ったところで流星の腕に痺れがはしる。
それなりの重量を持つ物が風を切るスピードで飛来するのだ、腕に伝わる衝撃は、たとえスキルによって強化していたところでかなりのものだ。
流星もセレス同様、回避主体に切り替える。
「【炎連弾】」
流星が剣の雨を掻い潜りながら放った魔法に、血染め機械人形は回避も防御もとらない。
直撃するも無傷。
「効かないのか?なら【炎槍】!」
今度は火連弾よりも一撃の威力が高い魔法だ。
しかし敵はまたも回避も防御もとらないまま無傷。
セレスも流星にあわせて雷属性の魔法や水属性の魔法を放つもののそれも効かない。
……炎に耐性があるのではない、魔法そのものに耐性があるのか?
流星は腰にさした短剣を抜き、敵のコア目掛けて投擲した。
血染め機械人形が始めて防御にでた。
物理攻撃なら効く。
しかし、次々と飛んで来る剣によって近づくこともできない。
闇を纏いし星屑ならなんとかなるが、今の流星のジョブは《焔の剣士》であった。
俺にはこの剣の嵐の中、間合いをつめ切り裂くことはできない。
けど、俺がやる必要はない!
「セレス合流!、俺が盾になる!」
流星はパートナーに向かって叫んだ。
二人は弧を描きながら互いのもとへと走る。
二人が血染め機械人形と直線上に重なる。
流星が前方、セレスが後方だ。
敵の連射性能は恐ろしいものであるがタイムラグがゼロという訳ではない。
次弾を装填し射出するまでに2秒ほどかかっていた。
ならその2秒で間合いをつめ斬ればいい。
そしてセレスはそれを可能にするスキルを有している。
「俺があの攻撃を防ぎます、斬ってください」
それだけで伝わったのだろう。
「貴方の左脇を駆けるわ」
シュパン!
2本の剣が射出された。
流星は前に飛び出し、その攻撃を切り払う、もちろんセレスの邪魔にならぬよう右側へと。
流星が動くのと同時にセレスもまたスキルを発動していた。
「【電光石火】」
一瞬で敵へと迫るセレス。
「【紫電】」
そして一閃。
紫の稲光が血染め機械人形を切り裂いた。
光の粒子となって迷宮に溶けていく血染め機械人形。
カラン、と音をたてて一振りの剣だけが跡に残った。
血染め機械人形のドロップアイテムだ。
ヤツと同じく赤銅色の片手剣である。
流星が手にとってみた。
持ち手のところに引き金がついている。
それを引くとシュンっと刀身が射出された。
「わっ、面白いさっきのヤツと同じ能力の魔法剣か」
「はいはい遊んでないで次行くわよ」
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