迷宮都市《ムーラン》
そうして二日後、《ジ・ルクスの翼》の入り口がある迷宮都市ムーランに到着した。
「それでは、私はここまでですので、御二人とも後武運を」
門で馭者と別れて二人は都市へと入った。
迷宮都市ムーランは《ジ・ルクスの翼》の入り口を中心とした円形の都市である。
その周囲は頑強な壁に覆われている。幾重にも重ねられた魔方陣による結界、下手をしたら首都の城壁よりも強固であるかもしれない。
その理由はいたってシンプル、迷宮は金になるからである。
希少な魔物の素材に秘薬にアーティファクトと様々な恩恵を授ける。
故に迷宮、とりわけ神の試練は国家によって厳重に管理されていた。
この迷宮都市ムーランもアリーズ王国とその同盟国であるクリムシスタ王国によって管理されている。
《ジ・ルクスの翼》が発見されたのは比較的新しく、ほんの30年程前である。
迷宮の入り口がちょうど2国の国境線の上にまたがるようにして発見されたのだ。
どちらの国に属するのか戦になりかけたが、帝国の脅威もあり戦争をし疲弊した所で帝国に攻められ奪われるくらいなら共同で管理しようということになったのである。
迷宮を中心にした円形の都市、その東の半円がアリーズ王国、西がクリムシスタ王国の領土となっている、珍しい都市だ。
迷宮へと続く大通りを歩いていく。
通りに沿うように武器屋に防具屋、薬屋に飲食店と所せましに多様な店が軒を連ねている。
活気に溢れお祭りみたいな雰囲気である。
物珍しそうにキョロキョロしながら歩く流星と対称的に脇目も振らずにスタスタと歩くセレス。
香ばしいいい匂いが漂ってきた。
どうやら串焼きの屋台らしい、思わず唾液が分泌された流星は、少し前を歩くセレスを呼び止める。
「ちょっと待って、腹ごしらえしていきませんか」
そう言って屋台を指差すものの、
「朝食なら馬車で食べたでしょう、はやく探索にいきますよ」
「いや、美味しそうですし」
「観光にきたわけじゃない、依頼が先、それに私ははやく強くならないといけない、私の邪魔だけはしないで」
流星は鋭く睨まれ、何も言えなくなった。
何故、ここまで強くなることに固執するのだろうか、疑問に思いながらも彼女の背中を追った。
☆☆☆
「ここよ」
街の中心部、すなわち《ジ・ルクスの翼》の入り口へとたどり着いた。
「これが入り口?なんていうかギルドの入り口みたいな」
「ええ、そうギルドの入り口、迷宮の入り口はこの建物の中にあるの」
目の前にそびえ立つのは大きな建物だ。
中心に円柱形の一際背の高い黒い建物。
それを囲うように三階建ての赤い煉瓦造りのように見える長方形の同じデザインの建物が建っており正方形を形作っていた。
その壁には黒いラインで意匠が施されている。
二人は四棟の建物の1つ、ギルドの旗が掲げられていたものの中に入った。
普通のギルドと同じサービスが受けられる。
加えてダンジョンへの受付がある。
もう一棟が買い取った素材の保管庫や解体場になっている。
残りの二棟はというと協会である。
ダンジョン、つまり神の試練に挑む前に祈りを捧げたいという冒険者も少なくはない。
しかしながら二人は祈る時間さえも惜しいとばかりに受付へむかった。
ウォーグレンのギルドにてもらった許可証を提示し手続きをすると迷宮への入り口に案内された。
中庭にそびえ立つ漆黒の円柱である。
つるりとした表面、ギルドの職員が手を触れると入り口が開いた。
円柱の中には下り階段があった。
まるで冥府へと続いているかのような深い階段だ。
流星はごくりと唾をのみ、一瞬躊躇うものの隣にいたセレスが迷いない足取りで進んでいく姿を見てその後を追った。
胸元にぶら下げた折れた短剣を握りしめて。
それはアイリスから貰った守護の短剣だった、一度きりの護りは発動してしまってもう只の折れた短剣であったけれど、わざわざ刃を潰して柄に穴を開けて紐を通して首にかけれるようにしたのだ。
魔法的な効果も神の奇跡なんてものも宿っていない、けれども流星にとっては大切な《お守り》であった。
勇気をもらって迷宮を進んでいく。
☆☆☆
暫く階段をくだっていくと少し開けた空間についた。
第一層である。
《ジ・ルクスの翼》は地下10層からなる迷宮だ。
そして、目的の素材をドロップする魔物がいるのは6層以下の階層である。
先ずは6層を目指す。
ギュイーンと奇怪な音をたてて敵が現れた。
殺人人形。
人間大のデッサン人形みたいだ、肩口からは腕の変わりに鋭い剣がはえていた。
「いくわよ」
「はい」
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