依頼②
ギルドの応接室を出たセレス、貴族の令嬢として室内で走るなどというはしたない真似はしていないもののその歩くスピードは並みではない。
綺麗な姿勢を保ちながらスタスタと早歩きしていく。
追いかける流星はたまったものではない、同じ早歩きでも距離がどんどん離れていってしまう、たまらず走って追いかけようとするとすれ違うギルドの職員から咎められる様な視線を向けられるのだ。
まるで、学校で廊下を走ってはいけません!と注意されてる気持ちになる。
「は、はやい、ちょっと待ってくれ」とセレスの背中に声をかけても
振り返りもせず「はやくなさい」と返されてしまう。
セレスはどんどん進んでいきそのままギルドの外にまででた。
流星も続いて外に出て息を調えながらキョロキョロとセレスを探す。
どうやら待っていてくれたみたいだ、扉の横に腕を組んで立っていた。
「来たわね、それじゃ走るわ」
「へ?」
流星の返事も待たずに走り出した。
綺麗な髪を靡かせて走るセレスを慌てて追いかける流星。
何処まで走るのだろう?と思いながらついていくとそのまま首都を囲む城壁の門にまでついた。
そして、そのまま手続きをして街の外に出た。
「え?もしかしてこれから《ジ・ルクスの翼》に向かうの?」
「そうよ」
「準備とか親睦を深めたりとかは?」
「必要ない」
「せめて準備は必要では?」
「これを見なさい」
そう言って渡されたのは紙の束であった。
目を通すとそれは依頼書であった。
きっちりとギルドマスターの印も捺されている。
依頼の成功報酬から素材の買取り価格、失敗時のペナルティまで記されてある。
加えて前金変わりに迷宮までの移動手段と探索に必要な道具や食料をギルドが用意するとも書いてあり、そのリストも付いていた。
「あれね」
そう言ったセレスの視線の先にあったのは一台の馬車。
しかし馬車を牽いているのは普通の馬ではない、魔獣だ。
「お待ちしておりました、セレス様、リューセイ様、荷物は積み込んであります」
「宜しくお願いするわ」
そう言って乗り込むセレスに続き流星も乗り込む。
二人が乗り込んだのを確認した馭者は手綱を握って発進させた。
窓から流れていく景色がこの馬車のスピードを物語っている。
しかし不思議と激しい揺れはなかった、きっと魔法的な何かがかけてあるのだろう、このセカイに来たばかりの流星にはどんな技術かはわからなかったけれどただスゴいなぁと景色を眺めていた。
「さあ、まずは準備が先よ、景色を見るのはあとにして」
「準備って何を?」
「これよ、ギルドが用意した物資をリストと照らし合わせなから収納するの、貴方、アイテムバックは持っているわよね?」
「ええ、持ってますけどもなんで知ってるんですか?」
アイテムバックはそのグレードにもよるが結構な高級品である。
貴族出身の冒険者や上位ランクの冒険者ならともかく庶民な駆け出しの冒険者が持っているようなものではない。
「貴方、ソロでCランクになったんでしょ?なら持っていない方が不思議だわ」
冒険者ランクをあげるには依頼を達成するなど功績を重ねていくしかない。しかし日帰りで出来るような簡単な依頼だけをこなしてCランクになれるわけではない、それなりの長期に及ぶものもある。
それに依頼といっても人を襲う魔物の討伐から今回のように素材の採集もあり、討伐証明のために倒した魔物の一部を持ち帰ったり、素材をギルドに納品したりと運搬することもかなり大変なのだ。
そもそも大量のものを1人で運べないということもあるし、大量のものを1人で運んでいたら盗難にだってあいやすくなる。
見張りという意味でも仲間は必要なのである。
まあこういった問題もアイテムバックがあれば解決するのである。
Cランクまでソロで至ったと聞いた時からアイテムバック持ちであるとセレスは確信していた。
むろんセレス自身もアイテムバックを保有している。
「さあ、収納するわよ」
そう言ってリストと照らし合わせながらきびきびと作業をしていく。
流星もセレスに渡されるものをせっせと収納していった。
「言うまでもないことだけれど、回復薬や毒消しなど何本かはすぐに取り出せるようにしておくのよ」
「はい」
「はい、これで最後ね、リストに漏れはなかったわ、私はこれで不足はないと思うのだけれど、なにか他に必要なものはあるかしら?」
「ありません」
「迷宮都市についたらすぐにダンジョンに潜るわ、今のうちに休んでなさい」
「了解です」
この短い時間の中ですでに上下関係は出来上がっていた。
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