表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/51

災難って意外と続く






今私の剣は、尻餅をついた相手の喉元に軽く触れている。


つまり、私の勝ちだ。



開始早々で決着がついてしまい、皆静まり返っている。

私は、くるりと体を向けつかつかとお爺様の元まで歩いて行く。



「お爺様。約束ですから、私は見学致しますわ」



そう言ってから、剣を貸してくれた方に剣を返す。

すると、静かだった修練場が騒がしくなった。



「おおぉ!!なんだ今の!?」

「す、凄ぇ!!動きに無駄がない!!完璧だ!!!」

「あれでまだ八歳って、本当なのか!?」



そうですね、中身はババァですよ。

力を手にした欲求不満ロリショタ大好きババァです。



「お返し致しますわ」

「あ、はい!しかし、凄まじい速さでしたね!」

「流石、ダグラス様のお孫様ですな」

「そんな、あの方が手加減をして下さったのでしょ?」

「ははは、これは手厳しい。あの者も、まだまだ未熟でしたな。無礼を私からお詫び致します」

「いえ、ホーク様。頭を上げてください。私が大人気なかっただけですわ?」

「大人気…?ははは、そうでしたか。流石お孫様です」



いや、団長。そこ笑う所なの?確かに見た目八歳だけどさぁ…。それにしても、皆興奮しすぎだろ?大丈夫なのか?この騎士団…。

一応、毎日鍛錬はしてるんだよね?こんな中身ババァ、外面小娘に負けて良いの?解雇とかされない??


というか、一体私は何処に向かわされているのだろう…。今なら剣士になれそう…。



「ん?そこにいるのはテレサ嬢か?」



遠い目をしていたら、突然誰かが背後から声を掛けてきた。

振り返ると、そこにはマリウス君と前に見た侍従が立っていた。



「これはマリウス殿下。息災でしたかな?」

「ダグラスか。あぁ、お陰様でな。今日はダグラスだけではなく、テレサ嬢も来ていたのか」

「お邪魔させていただいております」



私は、マリウス君に模範的な礼をした。


こんなむさ苦しい男しかいない修練場で、可愛いショタに会えるなんて!!付いてきてよかった!!!ありがとうお爺様!!!


私は、心の中で大歓喜した。



「殿下、少し来るのが遅かったですな。今、テレサ嬢が素晴らしい剣技をお見せになられたところです」

「そうなのか!?それは残念だ…」



はぐっ!?マリウス君がしょんぼりしている!!可愛い!!くっそ可愛い!!



「テレサ嬢、もう手合わせはしないのか?」

「え、えぇ。私が勝ったら、今日はもう手合わせは無しという話ですから」

「そうか、では、また来た時に見せてもらおう」

「…え」



何?どういう事??また来た時???


私の脳内に『?』が飛び交う。

何故そういう事になるのか?



「ははは!やられたなテレサ!『今日は』などと言うからだ」

「はっ!そういう事ですか!!」



今日はって事は、また次がある…という事だ。

なんという…。

自分で墓穴を掘ってしまったのか…無念。



まぁでも、もうしたくないならホークさんを倒さないといけないらしいから、同じ事か。

よし、絶対に殿下に見られる前に倒そう。


私は心の中でそう誓った。



「ところで殿下は、何故ここに?」

「あぁ、乗馬を習いに行く道すがら、騎士達の様子を見ようと思ってな」

「そうだったのですね。それはご苦労様です」

「そうだ。良かったらテレサ嬢もどうだ?」

「え、私もですか?」



嬉しいお誘いだけど、良いのか?私はただの伯爵家の娘だぞ?ナターシャちゃんを誘うならまだしも、私など誘っても良いのか?



「遠慮は要らない。私が、ダグラスの絶賛するテレサ嬢の乗馬の腕前を見てみたいのだ」

「テレサ、行ってきなさい。どうせここに居ても見ているだけなのなら、殿下と乗馬をしていた方が身になる」



確かに。むさ苦しい男達より断然ショタが良い。


ショタの寿命は短い事だし、今日はお言葉に甘えよう!



「では、御一緒させて頂きます」

「わかった。では行こう」





そう言って案内された場所には、既に大福ちゃんが居た。

その近くにも、何頭か馬が繋がれている。



「これが、テレサ嬢の愛馬か」

「はい。大福と言います」

「ダイフク?不思議な名前だな」

「お爺様にも言われましたわ。でも、私もこの子も気に入っているんですよ?」



そう言うと、大福ちゃんがそれを肯定するように、私にすり寄ってくる。

可愛いので、頭を撫で回す。



「本当に信頼しあっているのだな」

「はい。もう家族ですから」

「そうか。私もそんなパートナーに会えると良いのだが」

「殿下はまだ、決まった子が居ないのですか?」

「あぁ、そうなんだ。今は練習だしな」



そう言って、他の馬達を見る。

皆、今は大人しくしている。



そして、ただ話していてもあれなので、乗馬をする事になった。

最近慣れ始めてきたらしいマリウス君と、今日は場内を少し散策する事になった。



大福ちゃんがいつもの様に座ってくれる。そこに横向きに座ると、大福ちゃんが立ち上がり視線が高くなる。



「本当に賢い馬だな」

「はい。大福は賢い子なんです」



マリウス君も馬に乗せてもらい、先生や護衛の準備も整ったところで、散策開始だ。





流石王宮の庭。

いくつもの木々が均等に立ち並び、美しい花々も咲き誇っている。

当たり前だが、うちとは比べ物にならない。



前を歩いて行くマリウス君の、まだ完璧ではない、少しぎこちなさがある姿は、見ていて本当に可愛い。

何故こんなに可愛い天使が、あと数年でただのイケメンになってしまうのか、不思議でならない。




そんな風に思いながら歩いていると、誰かの声が聞こえてきた。



「これは殿下!乗馬中でしたか」

「ロゼライン公に、ナターシャ嬢か」

「殿下、先日は私のパーティーにお越し頂きありがとうございました」



ナターシャちゃん!私の天使!!


そこに居たのは、ナターシャ様とその父親らしき男性だった。


何故ここにいるのかは知らないが、こんなところで会えるなんて、まさに運命!!


私を見るや否や、ナターシャちゃんとお父さんの顔が歪む。


やだ、そっくり…。



「殿下、そちらは?」

「あぁ、こちらはダグラスの孫娘の…」

「テレサ・ルーベルンと申します」



私は馬から降り、礼を取る。



「あぁ、元・第一騎士団の団長殿のお孫様でしたか…。して、何故貴女が殿下と?」

「それは、私が誘ったのだ。丁度ダグラスと騎士団を見に来ていたのでな」

「殿下が!!…そうですか」



お父さん、笑顔が黒いです。

流石公爵様、威圧感が半端無いですね!!



「そうだ殿下!私の娘も、乗馬に同行させていただけませんか?」

「お父様!?そんな、私が殿下となんて…」



ほんのり頬を染めて恥ずかしがるナターシャちゃん…まじ天使。



「ロゼライン公、お嬢様に乗馬のご経験は御座いますか?」

「いや、だがお前達が付いているのなら、問題なかろう?」

「いえ、経験もなく万が一の事があっては大変です」

「お前達は、一体何の為に殿下に付いているのだ!そのくらいどうにかするのがお前達の仕事だろう!!」



お父さん…それは、幾ら何でも横暴でわ…?


しかし、ナターシャちゃんのお父さんは引かないらしく、ナターシャちゃんを殿下の馬に乗せた。


いやいやいや!お父さん、それは幾ら何でもダメですよ!!相手は王子様ですよ!?正気ですか!?


どうやら、ナターシャちゃんのお父さんは、ナターシャちゃんが可愛くて仕方ないらしい…その気持ち分かる。まじ天使だよね。でも、その行動はよろしく無い。



お父さんがナターシャちゃんを馬に乗せたのはいいが、その後お父さんは何故か馬の後ろに立った。

やばい気がして、私は咄嗟にナターシャちゃんのお父さんを突き飛ばした。

その行動は、どうやら正解だったらしい。



「いっ…何をするか!?」

「きゃあっ!?」

「うわっ!?」

「ぐぅっ!!?」

「「!!!」」




お父さんを突き飛ばしたすぐ後、私の体は吹っ飛ばされた。

馬に蹴られたのだ。


咄嗟に腕で庇った為、腕が死ぬ程痛い。体も強く打ち付けたからか、上手く息ができない。



「テレサ嬢!!」

「ルーベルン様!!誰か!早く医師を呼んで下さい!!」



周りがかなり騒がしい。しかし、その時の私には、そんな事を気にする余裕はなかった。

痛みに顔を歪めながら薄目で見たものは、骨が飛び出し変な方向を向いた私の腕だった。



そして、そのまま私は気を失った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ