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結構近くにいた





王都の邸に来て四日が経った。つまり、パーティーから二日後である。


この二日間で、私は思い出した事がある。


私が、愛して止まないナターシャちゃんの出てくるゲーム《月下の円舞曲》。

そこに登場する人物達が、あのパーティーにちらほらいた事に気がついたのだ。



まず一人目は、私のお友達一号である《マルロ・ペンドラ》君。

彼は、彼の義兄であり、攻略対象の《ルイス・ペンドラ》の敵役なのである。

確かに、ゲーム中でも顔の左半分を隠していたし、金髪癖っ毛だったが十五歳になると、最早私の愛する天使ではなくなっていて、ただのイケメンに成り下がってしまっていたので、全く気づかなかった。



そして二人目。この国の王子である《マリウス・ディエ・イディア》君である。

ちなみに、彼を選んだ際の敵キャラが《ナターシャ・ロゼライン》ちゃんである。マリウス君も、十五歳になるとただのイケメンになるが、ナターシャちゃんは可愛い天使から、美しい女神にジョブチェンジする。流石私の推し!!



後は、ナターシャちゃんの側に侍っていた数人の天使、御令嬢達。

出来れば私も仲間に入れて欲しいが、天使のマリウス君のお陰でめちゃくちゃ嫌われてしまっている。

でも、嫉妬深いナターシャちゃんかわゆす。



と、こんな感じで何人かの登場人物に出会っていた。

まぁ、だからなんだという話なのだが、特に何だということはない。何故なら、私には関係ないからだ。


私はただ、天使達と推しのナターシャちゃんを愛でるだけ!ただ、出来ればナターシャちゃんを国外追放になどさせたくないし、なってしまったとしても付いていきたい!養いたい!!


私は、元一人暮らしをしていた社会人!庶民暮らしなどへでもない!!



まぁ、今できる事が私には思いつかないから、特にすることはない。だから今は、私の天使ちゃんに手紙を送…。



「テレサ!!王都では退屈だろう!私と騎士団の視察でも行かないか!!」

「…お爺様…いつこちらに…?」

「つい先程だ!」

「えっと、休まれなくて大丈夫ですか?」

「何、私はそんなに柔ではない。さぁ、行こう!」



どうやら、拒否権はないらしい。


渋々重い腰を上げて、騎士団のある王宮へ向かう事になった。

そして、お爺様は準備万端でここまで来たらしい。私の愛馬、大福ちゃんも一緒に連れて来ていた。



私は、前を馬に跨り駆けるお爺様を追って、王宮へと向かうのであった。











王宮には荷物検査も無いまま通された。

それで良いのか…ここ、王宮の正門だよね?警備ガバガバ過ぎだろ…。

きっと、私の目は今死んでいるだろう…。



お爺様が止まったので、私も大福ちゃんを止めるとすぐに、騎士であろう体格の良い男性達が近づいて来た。



「おお!ダグラス殿!!お待ちしておりましたぞ!!」

「そちらが噂のお孫様ですか!?」

「おお!久しいな、ホーク!テレサ、こいつは今第一騎士団の団長をしているホークだ」

「孫娘のテレサ・ルーベルンですわ」

「ホーク・マドラです。お会いする事ができ、光栄です」



そう言うと、ホークと名乗る騎士が馬上の私に綺麗なお辞儀をする。

私も笑顔で頷くが、この対応であっているのかは謎。


と言うか、何故騎士団長が出迎えに来るんだ。訓練とかしてなくて良いのか…。



「要らないとは思いますが、私が修練場まで案内致します。さぁ、お手をどうぞ?」

「そうですか、ありがとうございます。ですが、お手は結構です」



そう言ってくれたホークさんの手をやんわり断って、私は自分で降りた。

すまない。こういう体質なんだよ。


少ししょぼーん顏をするホークさんに、心の中で謝っておいた。

それを見ていたお爺様は笑っていた。



「悪いな。テレサは触れられるのが死ぬ程嫌いらしくてな、最近では全て躱されてしまってな!」

「何と!!ダグラス殿をですか!?」

「流石お孫様!!」

「是非、手合わせ願いたいですな!!」



やめて下さい。絶対に嫌です。

それに、お爺様も余計な事を言わないで欲しい。きっとこんな感じで、私の個人情報が色んな所に流れていっているのだろう。

そうだ!



「お爺様。先日招いて頂いたロゼライン邸でのパーティーで、マリウス殿下に会いました。そこで、私の個人情報が殿下に流れていたのですが、一体どういう事なのでしょうか?」

「おぉ、マリウス殿下に会ったのか!それは、私がお前の話をしたからだ」

「そうですか…もう二度と、しないで下さいね?私の人間関係が破綻します。もし、今後も誰かに漏れていたら…夜、寝ぼけてお爺様の口を縫い付けてしまうかもしれません」



私はにっこりと笑ってみせる。

すると、その場が静まり返った。

私の記憶が正しければ、ここに居る者達は王に仕える騎士の筈なのだけど、こんな小娘の言葉でビビらないで欲しい。


しかし、こればかりは引かない。



「お爺様、返事が聞こえませんけれど?」

「あ、あぁ、気をつける」

「是非、そうして下さい」



気をつけるって…やめるって言って欲しかったんだけど、まぁ良いか。

次やったら仕返ししてやるから。





少し空気が凍ったが、気を取り直してホークさんが案内してくれた。


思ったよりも広い修練場では、今も刃を潰した剣で打ち合っている騎士達が居た。

そして、こちらに気づくと手合わせをやめて駆け寄ってくる。



「ダグラス殿!お久しぶりです!!」

「また手合わせして下さい!!」

「ご指導お願いします!!」



騎士達が、次々とお爺様に声をかけていく。



「そうか。だが今日は、テレサをお前達の鍛錬に参加させに来たのでな」

「…はい?え、何ですかそれ??」



私は、ただ視察だけするものだと思い込んでいたのだけど…と言うか、お爺様も視察としか言っていなかったのね?参加??は?馬鹿なの??お爺様って、馬鹿なの??



「ん?言ってなかったか?」

「はい。言っていたら、意地でも来ませんでした。」

「なら、そうだな。おっ、そこのお前。テレサと手合わせしてくれ」

「お爺様、嫌ですよ?」



お爺様は、見るからに屈強そうな騎士を呼んだ。驚きながらも近づいてきた彼と、模擬戦をしろと言うのだ。

周りのざわめきからするに、この相手はそれなりに強いのだろう。



「テレサ、お前がこいつに勝ったら、今日は見学でいいぞ?」

「今日はって何ですか?永遠にしませんよ」

「そうすると、ホークと戦ってもらわないとだな」



なんで??

一体、お爺様の頭の中はどうなっているのか?一回、切り開いて見てみようか?


私は、思わず溜息をついた。



「仕方ないですわね。お爺様は言い出したら聞きませんから…。どなたか、剣を貸していただけますか?」

「でしたらこれを!」



近くにいた騎士さんが、持っていた剣を貸してくれた。

やはり、いつも使っているものよりも少し重い。が、このくらいなら問題ないか?


少し準備運動をして、ドレスのまま修練場の中に入る。

すると、相手に選ばれた騎士も入ってきて、向かい合って立つ。



「ダグラスさん、本当に良いんですか?」

「あぁ、テレサに遠慮はいらんぞ」

「…貴族の令嬢相手にそれは、なぁ?」



相手の騎士が、そう言って困った様な…馬鹿にした様な顔で私を見てくる。


ん?この人、今私を馬鹿にした?こんなガキに自分が本気を出せるわけないって?侮ってます??



「いえ、全力で構いませんわ。私、貴方を瞬殺する自信がありますもの。ふふふ」

「おいおいお嬢さん、それは言い過ぎだぜ?いつもダグラスさんに手を抜いてもらっているのかな?本気なんて出したら、お嬢さんなんて赤子同然です」

「あら、お爺様ったら私にいつも手を抜いていましたの?」



審判として私達の間に立っていたお爺様に問いかける。凄く残念そうな顔で。


しかし、お爺様は笑って答えた。



「今のお前にそんな事をしたら、大怪我じゃ済まないだろう?馬鹿な事を言っていないで、さっさと構えなさい」

「そうですわね。軽く捻らせていただきましょう」

「後悔しても知りませんよ?」

「ふふふ、ご心配痛み入ります」



私と騎士は剣を構えて向き合う。



「それでは、始め!」







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