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四人でいることが、日常だった -境界線のない放課後-  作者: いもたにし
四人でいることが、日常だった

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9/18

触れない距離から、触れようとする

――side. 井神 凉――


昼休みの校舎裏は、静かだった。


「……終わったな」

「そうですね」


茉依の告白騒動は、あっけなく終わった。

数日おきに、今日を含め、三度。

同じ返事を繰り返した一年生は、ついに諦めたらしい。


周囲の関心も、時間とともに薄れていき、

今ではもう、別の話題に取って代わられている。


俺たち四人の中では、

最初から「問題」にすらなっていなかった。


「茉依、平気?」

「全然ー」


即答だった。

それ以上、誰も何も聞かない。


それで、終わりのはずだった。



――


「……なあ」

「ああ」

「気に食わねぇ」


三年の三人。

以前、忠告めいた言葉を投げてきた連中だ。


校舎の窓越しに、

並んで立っている四人の様子を見ている。


「普通、ああいうのあったらさ」

「少しは、空気変わるよな」

「なのに、何もない」


笑っている。

距離も、配置も、声のトーンも。


「……変だな」

「だよな」


一人が、つぶやく。


「だったらさ」

「このネタ使って、外からつっついたらどうなると思う?」


沈黙が落ちる。



――side. 井神 凉――


放課後。


下駄箱を出たところで、声をかけられた。


「ちょっといいか?」


振り返ると、

そこにいたのは、あの三人だった。


「前にも忠告したけどさ」

「最近、あの噂すごいぞ?」


俺たちは立ち止まる。

けれど、誰も構えない。


「あの噂?」

「このあいだの一年の件。あれ、結構噂になってんだぜ」


茉依を見る視線。

探るようで、試すような目。


「お前たち4人、付き合ってるやついないんだろ?」

「だけどいっつも4人でつるんでてさ」


「男子1人に女子3人、なにかあるだろってなるわけよ」

「変な勘繰り、されてんだろ?」


――ああ、これか。


「されてますよ」

「いつも通りです」


悠希が、淡々と返す。


「いつも通り、って……」

「そんなん普通じゃないだろ!?」


だんだん語尾が強くなる。


「普通じゃないのは、知ってます」

「でも、私たちには関係ありません」


会話は、噛み合っていない。



――


三人の目は、

どこか期待しているようにも見えた。


踏み込めないくせに、境界線だけは越えたがる目だった。


嫉妬


迷い


亀裂


どれかが、表に出る瞬間を。


何かが起きると思った。


一瞬でも、

揺れると思った。


――けれど。


四人は、そのままだった。


「……ほんと、意味わかんねぇな」


小さく、失望が漏れる。



――帰り道


歩き出すと、

自然に四人の距離が戻る。


「変なの」

「そうですね」


茉依は、特に何も言わなかった。


誰かが守る必要も、

誰かが気を遣う必要もない。


それが、俺たちだ。



――side. 三年男子生徒――


背中を見送りながら、

三人は立ち尽くしていた。


「……だめだ、あいつら」

「つけ入る隙、ねぇって」

「手応えなさ過ぎてムカつきもしなくなったわ」


崩すつもりだった。

揺らすつもりだった。


でも――


「……これ以上、関わる意味もねぇか」


それだけが、残った。



――side. 井神 凉――


家に着く頃には、

その出来事すら、どうでもよくなっていた。


外がどう思おうと、

俺たちは、変わらない。


明日も、

ただ四人で登校するだけだ。


それ以上でも、以下でもない。


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