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四人でいることが、日常だった -境界線のない放課後-  作者: いもたにし
四人でいることが、日常だった

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6/16

誰もいない夜

――side. 井神 凉――


夜。


本来なら、今日は玲茄が泊まる日だった。


「今日は帰るね」


そう言われた時は、

特別な理由があるようには聞こえなかった。

たまにあることだ。


「そっか」

「また明日」


それだけで終わる。


こういう日は、次の順番の茉依が泊まる。

それが、いつもの流れだ。


……だったはずだが。


「私も今日は帰るねー」

「明日、朝早いんだよー」


茉依はそう言って、鞄を肩にかけた。


「悠希は?」

「私もです」


三人とも、同じような温度で、同じ方向を向いている。

相談した様子もない。

示し合わせた感じもない。


ただ、そうなっただけだ。


「じゃあ」

「またねー」

「おやすみなさい」


玄関で見送って、鍵を閉める。


ガチャ、という音が、

やけに大きく家の中に響いた。


――静かだ。


テレビもつけていない。

キッチンも暗い。


四人分あった生活音が、

一気に消えている。


リビングに立ったまま、

しばらく動かなかった。


誰もいない。


それだけのことなのに、

少し、間が空いた。


「……」


ソファに腰を下ろす。

いつも誰かが座っている場所だ。


右も左も、空いている。


今日は、

肩に重さがない。

体温も、ない。


それを「物足りない」と思うかどうか、

自分でも分からなかった。


寂しい、とは違う。

落ち着かない、でもない。


ただ、

久しぶりだな、と思った。


一人で過ごす夜。


風呂に入って、

簡単に明日の準備を済ませて、

歯を磨く。


全部、一人分。


効率はいい。

何も、困らない。


布団に入る。


シーツは、きれいだ。

くしゃりと音を立てるのは、俺一人分。


天井を見る。


――思えば。


この一年、

こうして一人で夜を迎えることは、

ほとんどなかった。


誰かがいて、

別の呼吸があって、

触れていなくても、近くにいた。


それが当たり前になっていた。


「……まあ」


悪くない。


そう思えたことに、

少しだけ驚いた。


一人でも、眠れる。

明日も、普通に朝は来る。


何かが欠けた感覚はない。

何かを失った感じもしない。


ただ、

今日はそういう日だっただけだ。


目を閉じる。


静かな部屋で、

自分の呼吸だけが聞こえる。


それでも――


不安は、なかった。


明日になれば、

また四人で並んで登校する。


それを、疑っていない自分がいる。


――朝。


目覚ましが鳴る。


いつもより、

少しだけ、すっきり目が覚めた。


支度をして、家を出る。



いつものコンビニの前で、三人の姿を見つける。


目が合って、

自然に合流する。


距離は、いつも通り。


「おはよ、凉」

「りょーくん、おはよー」

「おはようございます、凉くん。眠れましたか?」


「まあな」


それ以上、

何かを言う必要はなかった。


誰も泊まらなかった夜は、

何も変わらなかった。


俺たちは、今日も四人でいる。


それだけで、

十分だった。

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