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四人でいることが、日常だった -境界線のない放課後-  作者: いもたにし
四人でいることが、日常だった

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5/16

家の中の、いつもの四人

――side. 井神 凉――


放課後。


四人で校門を出て、そのまま俺の家の方へ向かう。

理由は単純で、全員の家が同じ方向で、しかも近いからだ。


3人が一度家へ帰り、支度をしてすぐ合流する。


「今日なに作る?」

「昨日何買ったっけ?」

「お肉が食べたいです」


そんな会話をしながら、鍵を開ける。


「ただいま」

「おじゃましまーす」


玄関に四人分の靴が並ぶ光景は、

もう高校一年の頃から変わっていない。


俺の両親は海外で仕事をしている。

帰ってくるのは年に数回。

だから、この家は――ほぼ俺たちの拠点だ。



――夕食


キッチンに立つのは、だいたい玲茄と悠希。

茉依はその横で補助に徹している。

俺はテーブルを拭いたり、掃除したりする。


「はい、できた」

「うまそー」

「いただきます」


四人で並んで、夕食を食べる。


学校の話。

それぞれの家での話。

どうでもいい動画の話。


ここでは、当たり前に、

四人での時間が流れているだけだ。



――夜


食器を片付けて、各自スマホをいじったり、

テレビをつけたり。


「そろそろ帰る時間かなー」

「今日、悠希泊まりだよね」


玲茄が、当たり前のように言う。


「昨日は茉依だったから」

「今日は私です」


特別な意味はない。

順番だ。


誰か一人が泊まって、

俺の部屋で一緒に寝る。


それが、もう一年も続いている。



――深夜・寝室


電気を消して、布団に入る。


シーツが少しだけ、くしゃりと音を立てた。

体温が、さっきより近い。


「……おやすみなさい、凉くん」

「おやすみ」


悠希の声は、昼間より少し柔らかい。

息が整うまで、少しだけ間があった。


同じ布団。

同じ天井。


布団の中で、指先が自然に絡まる。

離す理由は、特にない。


そこに緊張はない。

あるのは、余韻だけだ。


「ねえ、凉くん」

「なに」

「もっとくっついても、いいですか」


質問というより、確認。

静かな部屋に、かすかに残る温度を確かめるみたいに。


「当たり前だろ」


少し笑って答えると、

悠希は安心したように、小さく息をついた。


しばらく、何も言わない。

布団の中で、距離だけが自然に詰まる。


「……近いですね」


そう言いながらも、離れようとはしない。

視線が合って、呼吸が触れる。


俺が何も言わずにいると、

悠希はほんの一瞬ためらってから、顔を上げた。


触れるだけの、短い口づけ。


そのまま、言葉はなくなる。

シーツが、さっきよりはっきり音を立てた。


明かりの消えた部屋で、

天井は見えたままなのに、意識はそこからだんだん遠ざかっていく。


やがて、

布団の中で、呼吸がゆっくり揃っていった。



――朝


まだ外が薄暗い時間。


「そろそろ帰りますね」

「ああ」


玄関まで見送る。


「では、またあとで」

「気を付けてな」


鍵を閉めると、

家の中は、また静かになる。


いつもの朝だ。


しばらくして、

俺も支度を始める。


数時間後には、

また四人で登校する。



――


これが、俺たちの日常だ。


特別じゃない。

隠してもいない。


ただ、説明する必要がないだけ。


高校一年から続いているこの生活は、

もう“形”になっている。


今日も、

誰かが泊まって、

朝になったら帰っていく。


それだけだ。


俺たちは、四人でいる。

それが、学校の外でも内でも、変わらない。


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