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四人でいることが、日常だった -境界線のない放課後-  作者: いもたにし
外側の夏、内側の夏

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14/18

夏が来る

――side. 井神 凉――


朝の空気が、少し変わった。


校門をくぐる前に、はっきりと分かる。

風がぬるくて、日差しが近い。


「もう夏かぁ」

「そうめんの季節だねー!」

「冬でも食べてるじゃないですか」


三人の声を聞きながら、いつもの四人で歩く。


並びも、歩幅も、変わらない。

ただ、空気だけが季節を主張している。


教室に入ると、窓が開いていた。

カーテンが揺れて、床に光が落ちる。


夏が、来た。



――昼休み


「なあ、凉」


弁当を持って移動しようとしたタイミングで、声が飛んできた。


「今度の週末の連休、空いてるよな?」


綿部隆一(わたべ りゅういち)

同じクラスで、中学からの友人。


俺よりも背が高くて、無駄に身体がでかい。

体育会系のくせに、妙に気が利く。


「特に予定はないけど」

「よし」


少し視線を落とすと、

隣には、白峰優花(しらみね ゆうか)がいた。


「海、行かないかい?」

「……海?」


身長は低く、胸も控えめだ。

けれど、体の線はきちんと女性らしく整っている。


話すと気さくで、付き合いやすい。

自分のことを「ボク」と呼ぶが、

それが不思議と馴染んでいる。


白峰は、このクラスの学級委員長でもある。


そして、隆一の彼女だ。

二人が並ぶと、身長差が30cm以上ある。


「二泊三日」

「泊まりー!」

「です」


俺の後ろから、三人の声が重なる。


「夏だし!」

「めっちゃ楽しみー」

「凉くん、行きましょう」


いつの間にか、話は六人になっていた。


「……場所とか、もう全部押さえてるんだな?」


「当たり前だろ」

「最初からそのつもりだったからね」


二人の声も、全く同じ温度だった。


三人が行く気でいるなら、俺も行くのは必然だ。

断る理由は、ない。


「じゃ、決まりだな」


隆一はそれだけ言って、白峰と二人で廊下に出ていった。


周囲のクラスメイトが、ちらりとこちらを見る。

でも、すぐに興味を失う。


特別な話ではない。

そういう空気だった。



――放課後。


校門を出るまで、六人の時がある。


「水着、新しいの買わなきゃ」

「右に同じー」

「私も新しいの買いたいです」

「みんなで買いに行くかい?」


前から聞こえる会話に、俺は口を挟まない。

隣の隆一も、今日はあまり喋らない。


校門の前で、足が止まる。


「じゃ、また明日な」

「場所とかは、あとで連絡するからね」


隆一と白峰は、俺たちとは反対方向へ歩き出す。

俺たちはしばらく立ち止まったまま、二人の後姿を見つめていた。


「……海か」

「凉の水着も一緒に買いに行かないと」

「ブーメランー!」

「ブフッ」


家の方へ四人で歩き出す。



――


夏が来て、

外が少し賑やかになる。


内側は、何も変わらない。

でも、温度が上がっていく感触は、たしかにあった。


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