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EP:27-The Case-Book of Dazuma vol.3 〜②〜

少女救出。

そして敵の目的が遂に顕に。


キングダムのとある倉庫。

署から拉致された少女がそこでまた、椅子に縛られていた。

何も思い出せない。

怖い。

一度自分を連れ出してくれたダズマに会いたい。

会いたい。

最初に捕まっていた時は何も覚えていなかったから怖くなかった。

けど、助け出してくれた彼は自分に優しくしてくれた。

怖い。

会いたい、彼に会いたい。


そう思っていた時だった。


自分を見張っているのだろう、男達の悲鳴が聞こえたのは。

心なしか、何か撃ち抜いたような風切り音も。

バタバタと倒れる音まで聞こえた次に、自分の耳元で。

「助けに来ましたわ。」

と、少女の声。

目隠しが外されると、金ブロンドの美しい髪。

顔には仮面が掛けられていて、はっきりとした顔立ちはわからないが。

彼女は優しい笑顔を浮かべて。

「貴女の王子様の元へ連れて行きますわよ。」

と、音符が付きそうなトーンでウインク。

味方らしい。

そこからは、彼女が生み出したのか風が自身の周りを巡りだし。

「身を任せて、行きますの。」

宙へ。







次のバイトへ向かう時だった、彼から連絡が来たのは。

仕事の頼みで、やるべき内容が簡潔にわかりやすく纏められていた。

粗暴な彼にしては意外だと感心しながらも、婦女の誘拐と聞いて憤慨。

バイト先に急用の為、休む事を連絡。

自身がランカーだと知っているので大丈夫と連絡を受け。

すぐさま自宅に戻ってフロンティーヌへ大変身。

そして今、彼女を連れてマハロへ。

「ありがとう、レヴァノンさん。」

駆け寄って来た少女を抱き止めながら、礼を述べるダズマ。

余程怖かったのだろう、しがみついて離れない。

しかし。

「まだホプキンスが...」

「そういえば、連絡して来た当人がいませんわね...」

「ジョン・ドゥと呼ばれる殺し屋と戦っている...」

「ジョン・ドゥだと!?」

嘗て裏社会にいたゴラムが反応する。

それもその筈、裏で名を馳せた敗北知らず、最凶の殺し屋と名高い存在だからだ。

得体の知れない魔法を使い、それを破った者はいない。

話を聞いて、顔を青褪めさせる一同。

「で、ですが、彼は魔人と呼ばれる存在を倒しましたし、ひょっとすれば...」

「しかし、シューダン氏の言う通り、奴は闇属性と呼ばれる不気味な力を...」

「何してるの?」

会話に参加して来たのはポロフ。

事情を説明すると。

「闇属性?...それ使える人間なんていない筈だけど...」

「しかし、ホプキンスは魔人では無いと言ってたぞ?」

「でもなー...うーん...」

そんな筈は無い。

その筈なのだが...何かを思い出しそうだ。

懐かしい、何かを。

「やぁ、賑やかだね。」

次に現れたのはスティーヴ。

些か眠気眼が残っているが、これでも意識は覚醒している。

「ホプキンスが俺を逃がす為にジョン・ドゥという殺し屋の相手を...」

「それも、無敗らしいですわ...」

と、沈み気の彼らに対し。

スティーヴはあっけらかんとした表情で。

「あぁ、それ公の記録ではの話。」

『...は?』

「しかし久しぶりだね、暫く遭遇していなかったと記憶しているよ。」

サラッととんでもない事を言っている気がする。

その口ぶりだと何度も戦った様な感じではないか。

しかも勝っているっぽい言い方じゃないか。

「ただいまー。」

「あ、おかえりB.E。」

「って、ホプキンス!?」

しかもその対峙している筈の当人が平然面で返って来たではないか。

多少傷は見られるが大した事無さげ。

「ご主人様、闇の力を使う人間と戦ったって聞いたんだけど。」

「あぁ、エッジの事だ。」

エッジ?

名無しの権兵衛(ジョン・ドゥ)ではなく?

「え、エッジってあのエッジ?」

「そうあの...前からちょいちょいゲーム感覚で戦い仕掛けて来やがる。」

「へぇ...こっちに来てたんだ。」

どのエッジだ。

理解が追い付かない。

「まぁ、この場ではジョン・ドゥとしよう...あいつとはライバルみたいなモンだ。」

「君がずっと勝っているんじゃなかったっけ?」

「勝たせてもらっているとも言えるな、あいつ本当は恐ろしく強ぇし。」

彼からのこの評価だ。

本気なんて考えたくない。

ともかく。

「バディ、この先どうする?」

内通者はもうわかっているが、足取りを掴まない限りはどうしようもない。

ファクトリーベースにアジトがあるのも嘘だろう。

どうすれば...

「その点については既に動いている。」

そう言って彼は携帯端末の画面を見せる。

写っていたのは、敵の動きが書かれたファイル。

「天空王国?」

計画名なのか、それが気になった。

読んでいくとこうだ。

自分達が見た資料に載っていた【ウィルヘイム】。

それの再現を作り出し、その住民として攫った者達を置くつもりだ。

しかし、何人か帰ってきているのは何故か。

それ以前に、天空王国と言うのは何だ、それを創る事に何の意味がある?

「ウィルヘイムは言わば魔法都...奴らは人間の選定と支配を目的にソレをモデルとした拠点地を創り上げるのが目的だろうな。」

「そんな大それた計画...」

「今回、あそこ以外の拠点も探し当てた、当然他の情報も入って来た。」

誰にやらせたのか、聞く前に、ファイルの後ろでテレビ通話の画面が見えた。

見間違えようの無いガンスリンガールック。

「ハイエンダー、協力感謝する。」

[礼には及ばぬ、拙者の仕事にござる。]

「この件、警察のみで扱いきれる物じゃねぇ、国家問題の範疇だ。」

「それでは、敵は思っているより巨大な組織と?」

「あぁ...それにこの腕輪、用意したのがあのいけ好かない裏切り者なら奴もその組織とやらの尖兵だろう。」

「そこに関する情報もあったのか?」

それに答える様に、新たなファイルが開かれる。

音声記録だった。

敵の構成員なのか一員らしき者の声と。

[渡してきたぞ、次はどこのを標的にする?]

仕事の相談をしているヴェインの声。

[この間は3人だぞ、中々骨が折れた。]

[ですが、まだ足りません...もっと多くの者を連れてきてもらわねば。]

内容からして、誘拐計画。

読めてしまった。

「一連の誘拐事件、犯人はヴェインだった。」

「そうだ、そして解決するのもこいつだ。」

マッチポンプ。

自分も妻子持ちの癖して。

[金目当ての犯行だそうだ。]

しかも下らない理由に腹が立つ。

聞けば賭け事の借金が祟り、それを帳消しにする為にこの計画に乗り。

父親でありながら誘拐を繰り返している。

「我音が録ったファイルはこちらでコピー済み、刑事さ...チャールズ先輩に送ってある。」

「仕事が早い上に的確だな、刑事に向いているぞ。」

「ランカーが性に合ってるんでね...アレクセイのじいさんにも送った、吊し上げだ。」

今にでも指名手配されるだろう。

しかし、ランカーや魔力がある者が狙われている。

対策を何とか練れないモノか。

そう悩んだタイミングで幸か不幸か新たな報せ。

否、不幸だ、間違いなく。

[今新たな情報だ...先程別所でヴェインが攫ってきたのは、あのソニア嬢だそうだ。]

だが、次に我音が聞かせた情報は彼ら全員を驚愕させるには十分のモノだった。

ソニア?"あの"?

軍人である姉と違って、魔力を持っていない筈だ。

ブレードですら動揺している。

だが、瞬時に動揺から怒りに。

怒りは刹那で殺意に変わった。

「我音、敵の本拠は...我音?」

応答が鈍い。

次第に何かのアラートらしき警報音がノイズ混じりに聞こえてきた。

見つかったらしい。

にしても、タイミングが余りにも良すぎる。

...最悪の可能性が頭を過る。

嗚呼、過っては頭を巡り続けている。

自分は魔力をロクに使えない。

いや、一つだけ消えていない反応がある。

だが、初雪やアニマに差し控えられている力だ...それはともかく。

「ポロフ。」

「へ、何?」

彼を呼び寄せ、耳打ち。

秒後に小さく頷いて目を瞑り。

そしてまた秒後に開くと。

「当たりだよ、ご主人様。」

「そうか、ご苦労。」

返事を聞き、ブレードはナイフを引き抜く。

グリップには滑り止めの布が巻かれている。

目的がそれだけにしては過剰に。

さて、魔力を切らした人間が、あるいは使えない人間が、魔力を行使する方法は一応幾つかある。

これはその一つ。

「バディ、俺を信用してくれるか?」

「え...あぁ、もちろんだ。」

「ありがたい、じゃあ...動かず見ておけよ、他のお前らもだ。」

そう言って彼はナイフの刃を。

「痛みは感じねぇ、安心しろ。」

椅子に座る少女の胸に深々と刺した。

余りにも突然。

驚愕の出来事に声が出ない。

が、刺された少女は聞くに堪えない金切り声を上げながら、姿を変える。

少女が座っていた場所には、少女処か見知らぬ男性の死体が倒れる様に座り込んでいた。

「これは...」

「擬似憑依系魔法【偽寄生(デミパラサイト)】...あの娘はまだ敵の手中だな。」

簡単に説明すると。

偽寄生...遠くから意識だけ何かに乗せる魔法。

ポロフ達魔人が意志だけを飛ばす方法と同じ。

違うのが、これが精度が悪い上に術師を数人揃えないと使えない不出来な魔法という事。

そして、これがそこまで距離を取れないという事。

コーニッシュが赴いたキングダムの倉庫がギリギリの距離であり、セントラルを挟んでA.Sまで届くとなれば。

「あの子はセントラルに...?」

「そうだ...それに、今このナイフに着いた魔法の痕跡をスティーヴが洗っている。」

「もう出たよ。」

覗き込むと、それは最初に探索したアジトらしきビルからセントラル署を挟んで丁度真反対に位置する商業ビル。

わかったら後は即行動あるのみ、この場を出る。


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