EP:26 - The Case-Book of Dazuma vol.2 〜③〜
幼女とオタサーの姫。
後、取り巻き。
とは言っても、どこに聞き込めばよいか、
「つーわけだリュウノスケ、何かわかったら頼む。」
と、色々に連絡を回す。
売人関係の件は自分も無関係では無い。
背後にあの殲滅者が関わっているかも知れない。
なら猶更だ、ずっぷりと中を覗いてやる。
と、セントラル市街を見回しながら歩いていると、突如裾を掴まれる。
足元を見ると、幼い少女。
ていうか、トレムの所の子供...前にお仕置きした娘だ。
「何してるの?」
「いやこっちの台詞...てか俺が怖くないのか?」
あんな目に遭ったのに。
「俺、お前をしばいたろ。」
「怖かったしびっくりしたけどあんまり痛くなかったし。」
まぁ、流石に本気でやる訳にも行かず、形だけに留めた。
爆弾は痛かっただろうが。
「それでお兄さんは何してるの?」
「仕事中、俺は今お巡りさんだぜ。」
「えー、ヤクザ屋さんかと思ったー。」
「何教えてんだあの女顔神父。」
次はメイド服着せてやる。
そう心に決めた所で、当て無き聞き込みを続けるのもアレだ。
小休止としよう。
「おい...名前は?」
「アム。」
「じゃあアム、何かスイーツ食うか?」
「買ってくれるの!?」
「今食えるだけな。」
食わせ過ぎたらトレムに文句言われる。
まぁ、自分も糖分が欲しいし。
アイス、ケーキ、クレープ...手頃な店を見回して。
「お兄さん、あれ何?」
と、興味がおやつから移る何かがあったのか、また裾を引っ張る。
何だ何だとアムの指す方を見る。
むさい男共がグールの如く一方にすり寄っている。
ソッチ系のパレードにしては極小規模過ぎるし、ガチムチにブヨブヨにヒョロヒョロと見た目のばらつきが酷い。
よく見ると、真ん中に異彩を確認。
煌びやかできゃぴきゃぴしたフェミニンワンピースに身を包む黄緑掛かったブロンドの少女。
というよりは少女か、ソニアと同じくらいの。
「あれか?オタサーの姫ってヤツだ。」
「オタサー?お姫様?」
オタサー...オタクサークルの姫。
男だらけの場合、紅一点である女性が異様にチヤホヤされる現象の事だ。
という目の前の事象を簡単にわかりやすく説明する。
「ッつー事だ。」
「ふーん...アムもお姫様になれるかな?」
「今のまま大きくなれりゃな。」
普通に可愛いし、というのがブレードの見解だ。
と、そっちに対する興味が薄れて来たのか。
「あ、シュークリーム!」
「あれがいいのか?よーし。」
スペシャルイチゴシュークリームと書かれた看板が目に入り、急いで並びに向かう。
拾った店員の声だと、もうすぐこの時間帯の分は売り切れてしまうらしいからだ。
アムを連れて最後尾に並ぶが、もうすぐ無くなるとわかってハラハラ気に慌てている。
万が一無くなったら他に似た様なの売っている所を探そう。
「残り2つでーす!!」
なんてのも杞憂に終わり、彼らの分は残っていそうだ。
現に自分達の後ろに並んでいた者達はいなくなっている。
先程の不安げな表情は何処へ、ワクワクなシイタケお目目に。
表情の変わり様がまるでソニアみたいでこちらも釣られて笑みを浮かべる。
さぁ、自分達の番だ。
だったのだが。
ふくよかな男性が横入りしてきた。
「スペシャルイチゴの奴2つ。」
「あの、並んでいた方がいますので...それにお1人様1つになっています。」
「リリアちゃんが欲しがっているんだよ、早くしろよ!」
「ですから...」
「おい肉袋、それは俺らの分だからどけ。」
「な、何だチンピラめ!」
マナーを守らない奴にいきなりチンピラ呼ばわりされても。
まぁ、チンピラなのは間違っていないが。
すると、アムが自分の前に立つ。
怒り面で。
「お兄さん、順番は守らなきゃいけないんだよ!!」
「何ぃ、子供の癖に生意気言うな!!」
無茶苦茶である。
そこに、彼が靡いているであろう少女が現れた。
「ねぇ、早く買ってよー。」
なんて、猫撫で声で。
状況がわかっているのかいないのか。
「ほら、リリアちゃんが機嫌を損なっちゃうじゃないか!最後の2つを寄越せよ!!」
「え、何の話ぃ?」
わかっていないらしい。
が、アムも食べたいので。
「ダメ、アム達が並んでいたの!!」
「あ、なぁんだ、じゃあ...」
「邪魔だって言ってるんだよ!!」
痺れを切らしたのか、蹴り上げようと足を振りかぶる。
「ちょっ、何して...!?」
それがアムに当たるより先に掴む、万力の様な握力で。
勿論、足を掴んだのは鬼の形相のブレード。
自らを棚に上げる様だが。
「この足、何だ?」
「放せ!!」
「どうした!?」
他の取り巻きも来た。
「あ、あいつがリリアちゃんのおやつを横取りしようとしているんだ!!」
「横取りはテメェだろ。」
「え、あのぉ...」
まぁ取り巻き達はそんなの聞く耳持たず。
既に臨戦態勢だ。
対してブレードは冷静に。
「アム、こいつで2つ分キープさせて離れてな。」
「え、うん。」
指示通り、受け取った金を店員に払ってキープするアム。
店員は快くキープを引き受けてくれたので、後は目の前の集団の始末だ。
「やめて、落ち着いてよ!」
「待っててリリアちゃん、これだけいればあんな奴...がッ!?」
と、かっこつけようとするふくよか男の腹へ抉る様に右一発叩き込んで。
そのまま次にヒョヒョロの顔面に肘を入れて、隣のマッチョマンの股間を殴り潰し。
涙目両手で抑え込む所、その顔面に飛び膝をかます。
そんな蹂躙を見せられ、他の取り巻きがたじろぐ。
だが、最初にノした筈のふくよかが立ち上がり。
ブレードにではなく、アムに駆け寄ろうとする。
意図が読めた、人質にする心算らしい。
魔法は使えず、粒子化もできない。
だが、踏み込みだけで届く。
そのまま掴んで地面に叩きつけてやる。
...つもりで動こうとしたら、ふくよかが殴り飛ばされた。
小さくも、何が入っているのかわからない高そうなバッグで、後頭部を。
やったのはなんと、リリアと呼ばれていた彼らがお姫様だ。
そのお姫様は大層ご立腹な様子で。
「リリアちゃん、そんな人様から強奪したのいらないッ!!」
一喝。
彼女はまともらしく助かった。
そのまま流れる様にこちらに向かって頭を下げ。
「すみませんでした、では。」
美しく謝罪してその場を去ろうとするが。
「待って!」
アムは彼女を呼び止め。
店員から受け取ったシュークリームを彼女に渡す。
「アムの分、あげる!」
「え、でも...」
「アムはまた食べにくるから!」
と、健気に言うがやはりどこか惜しそうで。
ブレードは自分の分をアムに渡した。
「へ?」
「俺こそいつでも食えんだよ、もらっとけ。」
「でもお兄さんの...」
「いいから、この間の詫びだと思え。」
申し訳なさげに受け取るアム。
次には笑顔で。
「ありがとうっ!」
「おう...良かったらそこのお嬢さんも一緒に食うか?」
「え、いいの?」
「アンタは何もしてねぇ処か、そこのデブ沈めてくれたしな、ほら行くぞ。」
しかし、彼女の取り巻きは当然黙っていない訳で。
「ま、待て...」
ぶちのめした取り巻きがモノ申そうとした所で。
彼ら3人の腕に突如手錠が掛かる。
何が何だかと混乱している中、掛けた張本人であるブレードと。
偶然居合わせていたダズマの手によって。
「公務執行妨害と暴行未遂に威力業務妨害の罪で逮捕する。」
「だ、そうだ...後は頼めるか、バディ?」
「あぁ、お前は2人のお姫様をエスコートしなきゃだな、バディ。」
「お姫様はお前にもついてるだろうが。」
ここにいないが。
「今はミューセラミスが面倒を見てくれている。」
「まぁ...あいつお姉ちゃんだしな。」
あれでも弟2人持ちである。
ともあれ、この場を離れる。
魔法が使えなくても人をコキャれる男、ブレード。




