EP:25-Tukimi sake. 〜⑤〜
旅館の屋根の上。
夜風に吹かれ月を見上げながら酒を飲む女神たち。
そこに。
ほぼほぼ就寝中であろう、時間帯。
月が綺麗。
夜風が不思議と緩めく屋根の上に、人影2つ。
「ほれ、盃がカラじゃぞ。」
「そういうお前もなの。」
アニマと初雪。
実年齢不詳...恐らく100年は軽いだろう。
なんて事情を実は理解していた織江は2人の要望通りに酒とアテを用意した。
干し肉、干し魚と漬物。
噛み締めれば程よく味が出て。
日本酒を流し込むとほろりと酔いが溜まって気持ちが良い。
「久しぶりなの...飲むの。」
「ワシもじゃよ、記憶まだ不完全じゃけど。」
"似たモノ同士"で酒盛りしようと、今日の昼間にアニマから持ち掛けたのだ。
「この数日間、お前と一緒にいた男のお陰で色々解決したの。」
「ぬっふっふ...流石じゃろう、ウチのにぃは。」
「何でお前が自慢げなの。」
えっへんと胸を張り、また自分の分の酒を注ぐアニマ。
だが、徐々に雫になり、それも小さくなり。
「無くなったか...女将からもらってくるかのう。」
「必要ねぇ。」
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その声と共に新たに現れたのはブレード。
と、後ろでは酒瓶を運ぶポロフの姿。
完全に予想外で慌てる2人。
「な、何でお前がいるの...」
「そ、そっちのも...」
「アホか、お前ぇらの動き丸見えだったんだよ。」
「ご主人様、重い...」
「そこに段あるから置けよ、俺らも混ぜろ。」
「まぁ...」
「別に構わないの...」
見た目幼女2人が飲酒をしている光景にツッコまないのが彼らしい。
あまつさえ混ざって来るとは、魔人も一緒に。
ポロフはゆっくりと酒瓶を置いて、一息つく。
その隣でブレードは酒を新しい盃に注いで彼に渡す。
「うぇー、ボク飲んだ事ないけど苦いんでしょー...」
「慣れりゃ楽しい味だぜ、ほら2人も。」
彼女らの分も注いで渡し、自分の分も。
4人分揃った、重ねて。
『乾杯。』
そしてぐびっと。
「やっぱり雪は辛口が好きなの」
「アニマは甘口。」
「俺はどっちも行ける。」
「うぉぅ...へにゃって来る...」
四者四様の感想を見せる。
とりあえず、ポロフは無理そうなので。
「お前こっち飲めよ、俺がこれ飲んどくから。」
甘いカクテルの缶を渡して、ポロフの分をぐいっと飲み干す。
それを見て、悪戯心でも生まれたのか。
「わぁ、ご主人様と関節キッス。」
「そっち系かお前。」
「違うよ!?」
そしてカウンターを食らう。
目の前の男はそういうネタには基本無敵だ。
「へー、ちび助そういう趣味だったの。」
「ポロフ、大胆。」
「違うってば、もう!」
見た目が女の子っぽいせいでよりそういう弄りを受けやすい彼。
昼間は女装させられまくって心が死んでいた。
「あ、これ美味しい。」
「お子様舌なの。」
「言い方キツイよぉ...」
「アニマも好きそうだがな。」
「後で飲む!」
「ここにもいたの...」
それからどうでもいい事を話した。
初雪がここに残る事。
ポロフはブレードについて行く事。
今回の事件の総締め。
「濃い数日間だったの。」
「元々は旅行であり、祠の確認とラヴィーヌを頂きに来たのが本目的だった訳だが。」
「目的多すぎるの欲張り者。」
「ポロフが襲い掛かって来たり、異常気象が起こったり。」
大変だった。
けど、終わってみれば良い結果も残っている訳で。
初雪は過去の呪縛から解き放たれ。
ポロフは強制とはいえ味方に。
新しい武器も手に入れて、この地の戦力も目覚めた。
幸先が良い。
「これもそれも、お前が齎した結果なの、ブレード。」
「結果が勝手に起こっただけで、俺はその場にいただけだ。」
「にぃはヒーロー。」
「違う。」
「でもご主人様、みんなの事...」
「違うって。」
護ってなんかいない。
全て、戦っただけの結果だ。
誰かがそれで助かっても、それは自分が行った事では無い。
「"英雄的思想"になるのはごめんだ。」
「英雄偶像...何なのそれ?」
「どこぞの馬鹿な男が企んだ計画の名称だ。」
「誰なのそれ...?」
「あぁ、ダグ...あん?」
着信。
オリヴァーからだ。
やっとキャッチを拾って、返してくれたらしい。
目の前の宙にモニターが表示される。
「よぉ、多忙のリヴ。」
[多忙はお互い様だろう、何やら大変だったらしいなB.E。]
「今に始まった事じゃねぇよ。」
[そうだな...って、おいそいつ。]
「あ、オリヴァー久しぶり。」
と言ってモニターに向かって手を振るのはポロフ。
突然敵対していた筈の彼が映ったので彼からしたら訳がわからない事だろうが。
一から説明する、この地で起きた事をわかりやすく。
[成程な...まるで物語の主人公の如き苦労っぷりだな。]
「ハッ、だとしたらシナリオがナンセンスだぜ。」
[だな。]
向こうは何も持っていないが、こっちは持っている猪口の酒を飲み干す。
「で、今何やってんだ兄妹?」
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某所。
通話中のオリヴァー。
そして足元には...
無惨に壊された祠の残骸が。
「何、ちょっと野暮用でな。」
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翌朝。
寝坊助が数人いたのでアニマに命令して連続ボディプレスを朝から起こし。
さっさと準備して揃って玄関へ。
大変な事がいっぱい起きたが。
得るモノも沢山あった。
「たまにで良いから連絡寄越すのよ!」
「そうでないと、佳奈江が寂しがるの。」
「そう言ってる初雪サマ、昨夜薄ら泣いてて冷たぁッ!?」
雪玉を生み出してぶつける初雪。
それなりに硬くしたらしい。
「下らない事言うんじゃないの。」
「照れ隠しがバイオレンス過ぎるのよ...」
改めて、初雪はここに残る。
佳奈江にも教える事は大量にあるし。
まぁ、そこから先は彼女達の物語だ。
『お世話になりました!!』
挨拶を済まし、背を向けて歩き出す一行。
少し後ろを向くと、佳奈江始め旅館の者達が大きく手を振ったり頭を下げたり。
またここに、皆で来たい。
この面子で、また初雪とも酒を飲みたいし。
アニマも"また"が楽しみらしいし。
絶対に来よう。
to be continued...
なんて。
"みんな"一緒に来たかったな。
今回はここまで。
閲覧ありがとうございました!
次回は月曜日!




