EP:24-Temple of Cocytus - the second half - 〜⑤〜
佳奈江、覚醒。
走れ、佳奈江。
「それでも。」
凍り付いた筈の彼女の。
声が聞こえる。
見ると、氷が解けている。
それどころか、この空間の気温が熱を増している。
やがてそれは灼熱と化し。
彼女の身体から焔が溢れ出す。
紫を纏った彼女の髪は半分焔色を纏い。
いつの間にか両手に構え、投げた札からは焔が溢れ出す。
考えていた。
氷を出す札に書かれた文字。
拠点で落ち込みながらも眺めていた。
文字であり、属性を表す氷を象った形。
正直、何て書いているかなんて読めない、何語かわからないのだから。
けど、もしかしたらと思い。
指を貰った剣で、少し切り。
出た血で札の文字の形を変える。
燃え上がる様な、"炎"に。
拠点を出る時に属性剣をこっそり回収して。
そして今。
「付加...」
溢れ出した焔を、新たに懐から出した属性剣に束ね。
「焔!!」
属性剣は長く太い両手剣と化す。
構え、焔を振り巻きながら走り出す。
そうだ、走れ佳奈江。
目の前の敵を許すな。
この卑劣極まりない悪意を、絶対に倒すんだ。
「ちぃっ!!」
「はぁああ!!」
氷柱が飛び、氷塊が自分を亡き者にせんと飛んでくる。
全て炎を以て斬り伏せ。
勢いを殺さず、錐揉み回転を起こしながら斬りかかる。
辛うじて飛ばれ、避けられたが余波の炎は逃がさず彼女を焦がす。
「調子に乗るな!!」
距離を取った彼女は地に手を着け、魔方陣を施す。
その陣が光り上がった時。
彼女の身体が突如現れた氷の茨に縛られた。
発動直前だったので当然、混乱。
「なッ...にッ...?」
初雪じゃない。
ポロフでもない。
なら。
「ブレードさん!!」
「カナエ、決めるぞ!!」
敵の背後に立ち。
ラヴィーヌを構えるブレードは刃を巨大化させ、氷の魔力も肥大化させる。
対して佳奈江も、剣に込めた炎を肥大化。
急激な差を持つ超高温と超低温、ぶつければ何が生まれるか。
理解したポロフは自身の持つ力で最も強く堅い魔力の壁を初雪と自分の前に張った。
そして、敵を挟む様に立つ2人は駆け出し。
断罪の時。
『無幻爆滅塵!!!』
交差する刃の温度差による化学反応は巨大な水蒸気爆発を起こす。
回廊も全て吹き飛び。
ポロフの張ったバリアはギリギリ耐えきった。
放った2人は蛇の毒の如く傷一つ付いていない。
「大活躍じゃねぇか。」
「ナイスタイミング...だったのよ...。」
ハイタッチ。
それはまるで、相棒の様だった。
佳奈江はヘロヘロだが。
さて、敵はどうなったか。
なんて、文字通り爆心地にいたのだから言うまでもない。
と、その時、辺りが激しく揺れ始める。
この感じ。
「ご主人様!!」
「わかってら、崩れるぞ!!」
彼の怒号を合図として出口まで走り出す一同。
しかし、出口が突如巨大な氷結晶で塞がれる。
放たれた魔力の元は背後。
振り向くと、人型が残っていた。
白く、灰混じりの醜い穴ボコの人型。
先程対峙した敵の正体だろう。
「逃ガシハシナイ...」
悪あがきらしい。
身体を巨大化させ、徐々に寄ってくる。
対峙するにも、突如大技をかました佳奈江は魔力切れ寸前。
ポロフも疲弊が見られ、初雪は精神ダメージがまだ響いている。
自分も消費が過ぎた、決めれても技をあと一発と言った所か。
が、悲観を否定する様に人型の動きが鈍く。
いや、止まった、何かに抗う様に震えている。
よく見れば、1人の女性の姿が抑える様に立っている。
それは、佳奈江とよく似た、先程も目にした姿と同じ。
「{ここは私が抑えます、早く私ごとこれを倒すのね!!}」
「桐江!!」
悲しき死に別れをした友が、魂のままになって現れてでも、彼女達を護ろうとしている。
初雪が悲痛に呼び叫ぶ中、そんな彼女に向かって笑顔で。
「{初雪サマ、ずっとずっと昔だけど、色々ありがとうございました。}」
「桐江...雪...雪...」
「{私は最期まであなたの友としていられて、幸せだったのね。}」
「桐江...」
「{私の子孫...佳奈江ちゃんをよろしくなのね。}」
「任せるの...約束するの!!」
涙ながら叫ぶ初雪の返事に、桐江はより満足そうに笑みを浮かべながら。
「{うん、任せたのね...佳奈江ちゃん。}」
「は、はい!」
「{初雪サマの事、お願いなのね。}」
「はい、任せるのよ、桐江様。」
「{よし...お兄さん!!}」
「あぁ。」
別れは済ませた。
ブレードはエンドブロウダーをタッチする。
【Frozen - Finishing Combat mode - Activity.】
敵を倒し、崩落を防ぐ形成奥義。
大きく振りかぶって、地面に。
「絶界芯樹印!!】」
叩きつける。
地面から結晶の波が人型を包み。
「ナッ...グアアア!!?」
それは樹の如く大きく、広がって育っていく。
瞬く間に大樹と化したそれは根を巡らせ、この本殿の崩落を止め、支える程のサイズと化した。
そして、包まれた人型は完全に停止...そして砕け散った。
本当の遺言は、感謝と共に。




