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EP:24-Temple of Cocytus - the second half - 〜③〜

結晶迷宮…某乱闘のフォートレスみたいなモノです。それかカーラが乗り移った空母。


ポロフが目を覚ました時、結晶に囲まれていた。

というか、中だった。

入り組んだ様子を見て察するに、迷路...迷宮回廊か。

「ぎゃあああああ!!!」

唐突に響く悲鳴。

反響してエラい事に。

多少"ダミ"が入っているが佳奈江の声だ。

反響が酷くていまいち居場所を特定し辛いが、魔力探知...ダメだ。

この結晶こそが全て異様に濃い魔力の塊だ、探知するだけで体力を奪うレベル。

仕方ない、反響の元を計算して辿るしかない。

ポロフはお調子者で直ぐ頭に血が上りやすい。

だが馬鹿では無いのだ、彼にだって技術の応用ぐらいはできる。

声が響いて反射する方向を集中して計算。

...捉えた、14時の方向。

追う様に駆ければ。


目の当たりにしたのは。


「{この地を脅かす不届き者め、このカーディナル・カナエが退治してくれる!!}」

鏡の様に綺麗な結晶に写る今より髪が長く。

右目を眼帯で隠し、今よりギラギラしている衣装に身を包む佳奈江の姿。

「{ぎゃあああ!!首取れる!!ギブギブなのよ!!}」

そしてヤンキー女子軍団に立ち向かって返り討ちに遭い。

キャメルクラッチを食らってギャン泣き。

を映像の如く眺め四つん這いに跪きながらズルズルの顔で汚く泣き叫ぶ現在の佳奈江。

「いぃいいいいやぁあああああ!!!」

「何してんの?」

精神攻撃なのだろうか、彼女が泣き叫ぶ理由がわからないポロフ。

が、ある意味彼女の年齢で"病気"を患っていたら当然の反応なのだ。

黒歴史を見せられているのだから。

そして彼女が臆病になった原因の記憶でもある最悪のトラウマである。

が、ポロフはそれを見て大した事無い内容だと即座に判断した。

そしてジト目で眺める彼に気づいた佳奈江は先程とは別の形で凍り付いて。

「ち、違うのよ、これは...」

「どうでもいいから。」

「あ、はい。」

一蹴。

良いやら悲しいやら。

羞恥も段々薄れていき、結晶に写っていた佳奈江の過去は徐々に消えて行った。

それを見て、何を思ってか小さく溜めた息を吐くポロフ。

「人間ってよくわかんない。」

「複雑なのが人間ってヤツ...大人になればわかるのよ。」

「...ボクお姉ちゃんより年上だよ?」

「嘘ォッ!?」

自分より幼い少年に見える。

なのに、年上?

お姉ちゃんとか呼んでくれている癖に?

不可解...

「ボクおに...ご主人様の一つ下だよ。」

二十歳(はたち)ッ」

まさかのお酒OK。

何だ、彼が魔人とやらだとしても自分と同じ人間にしか見えないと言うのに何だ、この年齢詐欺は。

いや、魔人だからこうなのか?

...いや、こんなどうでもいい事悩んでいる暇は無い。

と、彼を見つめなおした途端。

水晶に別の影が映り始めた。

黒髪のロング。

とても優しそうな表情をした女性。

慈しみ...表すならそんな言葉を具現化した様な。

そんな彼女の姿を見て、動揺した様に心を奪われているのは...ポロフ。

「誰なのよ...?」

尋ねた。

すると、零れ落ちる様に。

「...お母さん。」

「え?」

似てない。

そんな彼女の思考回路を読んだ様に、彼は首を横に振り。

「ボクのじゃない...」


"ご主人様のだよ。"






ーーーーーーーーーーーーー






「...」

結晶回廊の別の場所にて。

同じ女性の姿を見つめている者が1人。

「...母さん。」

「{ブレード。}」

見つめるその瞳に宿るのは、悔恨。

何に対してか。

「{ヒーロー...目指して見なさい。}」

それは嘗て、故郷で言われた言葉。

泣いてばっかの自分に、慰める様に。

元気づける様に、優しくかけてくれた言葉。

「俺はあんたの望む子にはなれない。」

「{今は結果が出なくても、いつかあなたはヒーローの様に輝ける、そんな気がするの。}」

「そんな時は来ない。」

「{ヒーローっていうのはね、弱い人達を護る強い人の事よ。}」

「俺は奪う側だ。」

「{どうしても自分に自信が持てないなら、お母さんが勝手に目標決めちゃうわ。}」

「自分に自信は持てたよ、だけど。」

「{ヒーロー...目指して見なさ―}」

「その道に行けない、俺は"悪"だから。」

繰り返される偶像に向けて、ローグを放つ彼。

ガラスの様に砕け散るソレを、眺める彼の瞳は。


どこまでも冷たく。


そして次に宿ったのは猛々しい怒り。

ローグをしまい、取り出したのはラヴィーヌ。

「俺でこれだ、他がどうなるかなんて予測着かねぇ。」

氷震だけで全て片付けられない。

規模も構造も想像が付かないのだから。

だから、物理で片付ける。

魔力を少し過剰に込めると刃に光が灯り、巨大化する。

使い方が段々わかってきた。

胸糞悪くなるモノ見せられたし。

「今ロードショウ、クライマックスの幕開けだクソったれ!!」

ブレード、ブチ切れ。






ーーーーーーーーーーーーー






佳奈江とポロフは走る。

初雪の声が聞こえたとポロフが口にしたからだ。

それも、悲痛なのが。

嫌な予感しかしない。

急いでポロフの声探知を頼りに回廊を駆け巡る。

そう時間も経たずに見つけた。

けど、見つけたのは初雪と...結晶に写る偶像。


じゃない。


浮き出た何か。

佳奈江によく似ている誰か。

「{あなたのせいで私は死んだの、あなたが存在したせいで。}」

「嫌...嫌...」

思い出した、旅館の歴代女将の写真で見た事ある顔だ。

自分の祖先...初雪が言っていた女性だろう。

「{あなたがいたから私は忌子と言われ、殺された。}」

「雪はそんなつもりじゃ...」

昨夜、一昨日に聞かされた。

ブレードが隣の彼と戦った夜。

初雪と懇意であった祖先、桐江は懇意であった為に最終的に迫害され、殺害されたと。

初雪は不可解な力を使う為、悪魔の子と呼ばれていたらしい為...だそうだ。

それはやがて、風化した話であった...荻野家以外では。

目の前の彼女、自身の祖先、桐江が言っているのはその時の事。

そして初雪はずっと気にして来た。

元々佳奈江に関わりたくなかったのは、これが原因だ。

今では魔法も浸透して来ている、昔と違う。

だが、何かのきっかけで彼女が自分といるのがきっかけで迫害されたらどうする?

それなら彼女に敵扱いされていた方が鬱陶しいけどマシだった。

辛いけど、マシだった。

目の前の彼女みたいに恨み言を言われるくらいなら。

「桐江...雪は...」

「{悪魔の子!自分は私と違って死んでいないのに今更友達気取りなんて図々しいのね!!}」

そう言って手を振りかざすと、現れたのは氷柱。

刺々しく、当たればひとたまりも無いだろう。

けど。

「...悪かったのは雪なの、償えるなら。」

"悔いはないの"そう言って手を広げて立つ。

初雪はずっと待っていた。

自分といた事を理由に彼女を殺害した人間たちを憎みながら。

我慢しながら、ずっと耐えて生きてきた。

でも、思っていた。

自分が彼女の前に顔を出さなければ、彼女は理不尽に死なずに済んだ。

自分が悪い、自分が悪いのだ。

罪を認めてこの罰を受けよう。


そう思っていたのだ。


目の前で同じく手を広げた佳奈江がその攻撃を庇う様に腹に受けるまでは。

「ぐぅッ...」

「お姉ちゃん!!」

刺さった箇所から決して少なくの無い血が溢れる。

「佳奈江...どうして...?」

攻撃を真に受けた佳奈江は痛むより、身体が急速に凍り付き始める。

勿論苦しい、尋常でないくらい。

だけど。

「話は...聞いていたわ..理解はしているのよ...」

「だったら!」

「馬鹿にしないで欲しいのよ!!」

伝えなきゃいけない言葉がある。

「ご先祖様が私に似ているのなら、貴方がいてくれて感謝しない訳が無いのよ!!」

こんな性格だから友達ができなかった。

ずっと辛かった、自業自得だけど。

その中、ブレードとの思い出の場所にフッと浮かび上がる様に彼女が現れた。

謎だった、怖かった。

でも気になった。

馬鹿な自分は"幽霊少女"と敵づけてがなり立てるしか手段を思いつけなかった。

本当はもっと素直に言えば良かった。

寂しいんです、友達になって下さいと。

目で追うほどにその姿は綺麗だったのだから。


だから。


凍り付く身体の中、彼女は叫ぶ。

「だから、ご先祖様の姿を借りて酷い事を言う偽物は許せないのよ...」

「ふぅん...私の子孫は随分と愚かみたいなのね。」

「私は貴方の子孫じゃないのよ...」

凍り付きが止まらない。

先程から解凍の呪を罪でいるポロフだが。

止まらない、このままでは身体全体が凍り付く。

「一族の恥よ...そのまま凍てつきなさいのね。」

勝利を確信した桐江。

身体が全体凍り付く佳奈江。

「お姉ちゃん!!」

「佳奈江...そんな...」

彼女に触れても、氷は溶けない。

砕けない、自分が動揺しているからか。

そんな自分のせいで、また人が死んだ。

大切な人が。

黒歴史は誰にでもある、真面な人でも必ず。

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