EP:24-Temple of Cocytus - the second half - 〜①〜
第24話。
佳奈江が自らの作り出した地獄に焼かれる話…数分ぐらい。
ボス戦回、というかそのラッシュ。
主人公以外のキャラの成長描写を入れてみたかった。
表紙です↓
https://twitter.com/poh_YmikuIMZVQ/status/1397470910957772801?s=19
異常気象の大寒波の真っ只中。
旅館にて。
魔法を使う事のできない者が2人、見つめ合っている。
「行くぞ、ジュリアス。」
「OK、ダズマさん。」
意を決した表情で。
死地と定めた場所へと向かう。
『どうもどうもどうもー!!』
宴会場の舞台へ。
こてこてのスパンコールスーツに身を包んで、両手をパンパン叩きながら愛想笑顔を振りまいて。
日本の"カンサイ"という場所で流れるらしい音楽をバックに。
この場にいるみんなの気分を盛り上げるために色々披露する事になったブレード一行。
魔法が使える者は結界の維持。
あるいはこの旅館に近寄る化け物の退治。
「こんな顔してても実は男らしい所あるんですよ!」
「おいおい何言ってるんだジュリアス、そんな可愛らしい顔でどこが...」
「"アソコ"が大きい!!」
「下ネタじゃないか!!」
「それで、さっきから思っているんだけど"アソコ"って何?」
「知らずに言ってたのか!?ネタでもなく!?」
何はともあれ、ウケもあって盛り上がりは順調。
ジュリアスのアレは天然なのだろうが。
ダズマが何とかアドリブで繋いでいるが苦しそうだ、可哀想に。
何とか終わらせて、舞台袖にはける2人。
入れ替わる準備として袖で待機しているのは女子3人。
「準備はいいわね、クラナ、ソニア。」
「うん、メーちゃん。」
「は、はいぃ...」
次は彼女達の番。
舞台へ小走りしながら登場する。
3人共、どこから調達したのかキャピキャピした衣装に身を包んでいる。
実はスティーヴが簡易的に創作した物である。
ヒーロースーツを作る感覚で魔法少女チックなデザインも勉強済みの彼は彼女達と衣装を作り。
曲を何度も聴かせて、舞台へ向かわせた。
雑かもしれないが、舞台袖でカーディガンを肩に掛けながら腕を組むその姿はまるでアイドルプロデューサーの様。
だが、ソニアはスサノオの姿での演技ならまだしも、そのままの姿をさらけ出して舞台に立った経験はほとんど無い。
緊張を抑えるべく、少しだけスサノオモードになりながら歌っている。
色んな意味でボロが出せないので気が気ではない。
丁度結界保持作業から休憩中のチェリムはそれを理解している為、妹の可愛さを眺める半分、心配で苦笑い。
疲れているだろうが、後でブレードに労う様に頼むとしよう。
しかし。
「彼らは無事なのだろうか...」
ーーーーーーーーーーーーー
悲嘆の神殿・深部。
というより、本殿。
「解放!!」
人型を纏めて凍り付かせ。
「はぁッ!!」
片手剣で全て砕いていく佳奈江。
確かに人型の元は人だ。
だが生体反応は無い、もう全て死体であり化け物だ。
躊躇してはいけない。
そして油断してもいけない、先程の二の舞になる。
だからこそ確実に、仕留める。
「お見事。」
拍手しながら素直に誉めるブレード。
続いて初雪も。
「この短時間で大した成長なの。」
「ブレードさんの動きを見たからなのよ。」
彼女自身も気づいていなかったが。
佳奈江は飲み込みが早い。
尚且つ、応用力も高い。
気づいていなく、持ち腐れだったが。
旅館での仕事はそのスキルを以てそつなくこなしてきた。
彼女を借り出す際に、女将から聞いた情報である。
勿論、心配していたし、反対もしていたが。
この地に、ランカーはいない。
自分達が帰った時の為に、彼女を鍛えておきたいのだ。
ランカーとしての資格は、この神殿の攻略を以て特例で発行してもらう、義父に。
それと、先程拠点に刺した筈の焔の剣の魔力を彼女から感じるのが気になる。
まぁ、それが幸と成れば良いが。
と、そうしている間に最奥の前まで辿り着いた。
ビル何階分あるのか、壮大な扉が目の前にある。
そして、その前に人影が一つ。
黒衣、白い仮面。
それは前にブレードが刑事として働いた時に遭遇した...
「奇遇じゃないか。」
なんて、友好的な声色で接してくる。
彼の仲間かと思ったが、やけにその彼の反応が固い。
というか暗い、仇敵を見つめるかの様に。
「こんな所で何してやがる、殲滅者。」
「あ、殲滅者!?」
目の前の男が、この国で起こった内乱、"ミキシング事変"で大量虐殺を起こし、英雄と呼ばれる男?
そして、彼の声色を聞く限り、友好な関係で無いのは確か。
「何、手に入れたい物があってわざわざこの僻地まで来たわけさ。」
「英雄様ってのは随分暇らしいな。」
「そんな訳無いだろう...俺にも大儀というモノがあってね。」
「小物に大儀ね、そりゃご苦労なこった。」
「ッ...ふん、こちらだって苦労したんだ、この力を身に着けるまでねぇ!!」
前にも見た黒剣を取り出し、振りかざすと白いオーラを溢れさせ。
白狼を数匹生み出した。
理解した。
「道中の化け物を生み出していたのはテメェか。」
「あのお堀を超えるのが特に大変だった、何体かおじゃんになったし。」
この口ぶりからして。
「あの人型を踏み台にして渡っていたって事か。」
「なッ!?」
何たる非道。
殺してはそれを化け物に変え、酷使していたというのか。
許さない。
札を懐から出し、構えようとする佳奈江。
だが。
「そうそう、そちらのお嬢さん方には退場してもらおうか。」
指をパチンと鳴らす殲滅者。
すると、大扉が勢いよく開き。
強烈な氷風を以て辺りを吸い込み始める。
「な、きゃあ!?」
「ッ!?」
「カナエ!!ハツ!!」
2人が吸い込まれる。
そして扉が閉まろうとしている、非常にマズい。
中に何があるかなんてわからないが、ロクなモノじゃないのは確かだ。
行きたいが、目の前の馬鹿が邪魔だ。
その時。
「ご主人様!!」
空を裂く様に2人を追うのはポロフ。
良いタイミングだ。
「2人を頼む!!」
「任せて!!」
「任せた!!」
やがて、扉が閉まった。
さて。
再度、通せんぼする様に立ち塞がる殲滅者。
改めて、後ろには大扉。
インペリアルを召喚...時間が無い。
「俺、暇じゃねぇんだけど?」
「ここから先は永遠に暇になるさ。」
「へぇ...そりゃ素敵。」
互いの得物の刃先を向け合った。
どちらも刃先は面を指している。
「何ライバル臭く立ち振る舞ってんだ三下の雑魚風情が。」
「吠えるねぇ...本気見せてやろうか...」
歪な細剣に黒い焔を宿す殲滅者。
間違いない、あれは"黒"だ。
どこであの力を手に入れたか。
それより。
さっきの白いオーラに続いて道中に化け物共に感じたモノと同じ感覚。
死体を操っていたのも、ドーマンを操っていたのもこの男。
陸軍の中に敵のスパイがいる?
あるいは、彼が軍部の関係者という事だ。
その正体は気になるが、そんな事より今は。
「さっさと退け、俺をあそこに向かわせろ、俺がテメェをピューレに変える前に。」
そう口にし、彼は紅黒い弾丸を殺し尽くすに刺し込む。
奥に入れられた彼女達が気がかりだ。
いくらポロフがついていたって、目の前の殲滅者の自信。
何かとんでもないモノを仕込んでいると見ている。
護ると決めた矢先にこれだ、自己嫌悪。
とにかくさっさと退ける、"黒"には"黒"だ。
刹那で肉薄。受け止め。
互いの斬撃をいなしながら剣戟を繰り出す。
放っては弾き。
繰り返し斬り合う。
そして鍔迫り合いになり。
「やるじゃねぇか小物くん。」
「減らず口がお得意だな、クズの分際で。」
「語彙力はもっと勉強しな。」
「ッ...さっきから生意気だな下級如きがぁ!!」 」
相も変わらず煽り耐性は低い様だ。
反応した様に激昂し。
一気に力強く、ブレードの刃を押し返す。
弾かれたブレードは大きく仰け反り、隙を見せてしまう。
それを相手が見逃すわけなく。
勝機と見たか、突きを繰り出す。
鋭く、素早く、疾風の如き突きに闇の如き漆黒を彩った焔を宿す殲滅者。
その姿は正しく必殺の剣。
確実に、邪魔者であろうブレードの息の根を止める。
隙だらけで、今ならそこいらの雑兵でも軽く刺し殺せそうな状態の彼を。
仮面の中で舌なめずりを隠せない。
これで終わりだ。
そう思い込んでいた。
彼の憎たらしいにやけ面が見えるまでは。
刹那、粒子になって消えた後、完全迎撃体制の彼が立っている。
居合の構え。
【Dispair - Finishing Combat mode - Activity.】
刃の軌道を右に傾げて躱し。
左裏拳で剣を持つ手を弾いた。
弾かれたその姿はまるで、先程のブレードと少し入れ替わったかの様に隙だらけ。
そんな輩を斬り伏せんと、黒焔を宿した刃を振り抜いた。
一刀一閃。
「黒狼演舞・絶!!」
鋭き黒刃が殲滅者ごと後ろに位置する大扉を両断する。
が、扉以外の手ごたえがない。
敵の身体が煙の様に消えていく...逃げた様だ。
退けれたなら別に構わない、それよりこっちだ。
扉の向こうから溢れ出す氷風。
その奥に見えたのは...結晶の山。
氷でできた巨大な結晶の山。
これが元凶か、殲滅者が仕掛けたモノだろう。
ブレードはラヴィーヌを召喚し、刃先を地面に突き刺す。
足元に深蒼色の氷を発生させ、ヨットの様に移動する。
攻略開始...そう思っていたが。
ライバルポジになりきれない。
彼が規格外の為。




