天龍寺⑩
蝋梅の下に行くと、甘くフルーティで清楚な香りがあたりに漂っていた。
「すごい♡ いっぱい咲いてて、すごくいい香りですね」
裕華が元気いっぱいにはしゃいでみせる。
「小ぶりなので、遠くからだと、わかりにくかったりしますけど、近くで見るとすごいですよね」
「蝋梅は雪中四友の一つで、雪が降る季節に咲く花の一つなんですよ、花言葉は”先導”、”慈愛”」
「はぁ」
イケメンが元カノの為に用意したであろう、雑学に気のないを返す裕華。
「そういえば、そろそろお腹空きません?お昼どうします?」
元カノから離れたいし、この後もイケメンを確保したい裕華が先導する。
「スミマセン、お昼は大阪で友人と食べる約束をさっきの電話でしてしまったんです」
「あ、じゃあ私もご一緒していいですか?」
「スミマセン、それはちょっと……」
さっくと軽く聞く裕華にイケメンが言葉を詰まらせる。
「女とですか?」
「はい」
「元カノさん、と、です、か?」
裕華が恐る恐る間合いを詰める。
「いえ、元カノの友達です。別れたのを心配してくれて」
イケメンがしれっと真実を伝える。
「……………」
裕華がイケメンを凝視しながら思考をめぐらす。
『それってどういう心配よ?てゆーか、それってイイ人ぶりながら、完全に弱ってる隙に狙ってるんでしょ??』
裕華は焦りからつい本音をくちばしってしまう。
「行かないでほしいです」




