天龍寺⑧
庭に降りて、参拝コースをゆっくり歩く。
通ってきた建物を眺めながら、参道を歩いて曹源池に戻る。
「方丈からは遠くて、見えないんですけど、ここからなら滝石組が見えるんですよ、ほら、わかります?」
「え?どれですか?」
「今は水が流れていないので、分かりにくいんですけど、あの石が上から下に並んでいて、下に滝を受けるような石があるところです」
「え?どこですか?」
イケメンの指指す方に集中するが裕華は本気でわかっていないトーンである。
「ちょっと失礼します」
イケメンが裕華の背後に立ち、裕華の顔の横から手を伸ばす。
「あれが滝石組ですよ」
「はい」
目の前に手しか見えない、イケメンの顔が見えないのに裕華の鼓動が早くなる。
耳元でイケボが手を動かしながら囁く。
「一番上が遠山石で、不老不死の仙人が住む蓬莱山を表現しているんです。その次から下までが、水を落とす石「水落石」です」
水落石の間にあるあの石が鯉魚石で、中国の鯉が滝を登ると龍になるという故事「登竜門」にちなんだ鯉を石に見立てたものなんです」
「下にある滝を受ける位置にある石は三枚の石橋で、自然石で作られた橋なんですよ」
流暢な解説をまるで声優のように、噛まずにスラスラ述べるイケメン。
裕華が突然振り返る。
「それ彼女に説明する為に練習したんですか?」
明るく振る舞いながら、冗談ぽく、可愛く尋ねる裕華。
「………はい」
イケメンが裕華の目を見て返事する。
「隠さないんですね」
裕華が空を見ながら、思ったことを口にする。
「「………」」
「どうして別れちゃったんですか?」
返事を待てずに、下を向いたまま質問を重ねる裕華。




