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天龍寺⑤
「ゆーぼう先輩を1人にして大丈夫かな」
法堂を目指して歩く歌織が沙音に尋ねる。
「大丈夫ではないっしょ、でも一緒にいたら邪魔するなって怒りそうだし…」
どうするべきか、無言で悩んでるうちに法堂に到着する2人。
天井を見上げると巨大で大迫力の龍が睨みを効かせてこちらを見ていて、ビビる歌織。
歌織が自分自身に問う。
『ゆーぼう先輩をこのまま野放しにしてよいのか』
そうしたら、心の奥底にいるリトル歌織が反応する。
『いいはずないでしょ、バレないように後をつけろ』
「そうよね、わかった」
「は?何がっすか?」
歌織の突然の言葉におもわずツッコむ沙音。
「ゆーぼう先輩にバレないようにしながら、後をつけよう」
「バレたらどうするんすか?」
歌織のアホ提案におもわず大声になる沙音。
「大丈夫、怒られる」
「それ、ぜんぜん大丈夫じゃないっす」
「大丈夫よ、だってゆーぼう先輩に怒られても、別に何ともないじゃない」
「たしかに」
少し冷静になって考えた沙音は同意する。
「でもゆーぼう先輩をほったらかしにして、帰ってから事務所やかえでに怒られたら嫌じゃない?」
自信満々に述べる歌織。
「なんすかそれ!めっちゃ嫌っす、なんて理不尽!!」
沙音が頭をかかえて、心底嫌そうな顔になる。
「じゃあ、行こう」
歌織が来た道と逆方向から方丈に戻る道に進んだ。




