天龍寺③
「えー!ぜんぜん撮ってもらって、よかったのに~」
裕華が甘えた声で残念がると、歌織がまたも読み間違える。
「私が撮った写真おくりますよ。ラインでいいですよね」
歌織がスマホで送る写真選びに集中すると、後ろから裕華が歌織を呪っていた。
『今のは写真撮れなくて残念でしたね。からの写真撮影で、見てみてカワ(・∀・)イイ!!からのライン交換の流れだろうが、邪魔するなよバカ』
イケメンの手前、笑顔の裕華だったが、目が鋭く、負のオーラがダダもれだった。
「あの、私も写真もらえませんか?」
イケメンが裕華と歌織に尋ねる。
「私はいいですけど…」
歌織が裕華をチラッと見て、視線をスマホに戻す。
「いいんじゃない」
可愛らしい高い声で裕華が返事する。
下を向いてスマホを操作する歌織は意識的に裕華を見ない。
ニコニコしながら、先ほどの100倍、負のオーラを放つ裕華。
沙音は何もできず見守る。
「私のラインに送ってもらっていいですか」
イケメンがスマホ画面にラインのQRコードを開いて、歌織に差し出す。
「はい、送りますね」
歌織がラインの友達追加して、写真を送信する。
「ありがとうございます。よく撮れてますね」
イケメンが安堵しながらスマホを眺める。
歌織はスマホの操作中で気づかない。
裕華は歌織を睨んで気づかない。
沙音だけがイケメンの緩んだ顔に引っかかりを感じた。
「ゆーぼう先輩も送りましたよ~すっごく上手に撮れてますよ~、感謝してくださいね」
謎に歌織が自分の手柄を強調する。
「いつまでもあると思うな親と金と友情」
死神のような生気のない瞳の裕華が、誰にも聞こえないような小声で毒づく。
歌織がウインクで裕華に必死に合図を送る。
それを見た裕華のイライラが加速する。
中立の沙音もわけがわからないよ状態で困惑する中、イケメンの電話が鳴る。
着信音をミュートにし急いで方丈から出て行くイケメン。
イケメンの姿が完全に見えなくなった瞬間、裕華の怒りが爆発する。
「あんたが連絡先交換いてどうするのよ」
「ゆーぼう先輩が写真許可するからでしょ、私のせいじゃないです」
「あの流れでダメって言えるはずないじゃない、歌織も少しは察しなさいよ」
「察しました。だから合図送ったじゃないですか」
「そう、それ、何あのウインク、どういうこと?」
「何でわかんないんですか?あれはライングループ作りましょうって言ってくださいです!」
歌織が勝ち誇る。
「わかるかぁ~~、あれで何でわかると思った」
裕華の怒りが再度爆発した。
みかねた沙音が仲裁に入る。
「いや~でもどうなんすかね?イケメンの様子からすると、ゆー先輩から写真をもらいたくないから、急いで歌織先輩から写真をもらった可能性もありますよ」
「は?そんなはずないでしょ」
裕華がキレキレで否定する。




