天龍寺②
「先輩の普通ってどんな感じっすか?」
目を閉じたまま沙音が尋ねる。
「年収1億は冗談で、同世代で定年まで年収2000万円の170cm以上体脂肪10%以下で、清潔感があって、世間一般のイケメン以上の顔面偏差値で、国立大学卒の絶対に浮気しない、何でも言うこと聞いてくれる優しい人」
歌織が超早口で希望を列挙していく。
「ゲームの話っすよね、リアルの話じゃないっすよね」
「リアルよ、結婚するならこのくらいの条件よ」
「うわぁ~、歌織先輩は一生独身ですね。ご愁傷様です」
沙音は念仏を唱える。
「えぇ~そ~かな~、ゆーぼう先輩みたいに年収1500万円を40年以上稼げる人の方がいいかなぁ~」
歌織が不安げに下方修正案を提示する。
「私が何?」
イケメンと裕華が合流し、初っ端から裕華がドスをきかせる。
イケメンの笑顔がさすがにひきつる。
「何でもないです」
歌織がさすがに空気を読む。
「ゆー先輩たち人力車に乗ってきたんですよね、いいなぁ~、写真見せてもらえませんか」
沙音がすかさず話題を変える。
「あ、写真とってない」
裕華が痛恨のミスに気付く。
「えぇ~もったいない、何やってるんですか~」
歌織がニヤニヤしながら裕華をせめる。
「そういえば撮影スポットで写真とってない、ガイドだけだった。なんでだろ?」
裕華が本気で考えこむが、何もうかばない。
見かねたイケメンが答えをだす。
「アイドルだから、写真とっていいのか、わからなかったんだと思いますよ」




