天龍寺①
歌織と沙音が石畳の参道をサクサク進み、中門に到着する。
「けっこう速足で来たのにぜんぜん追いつかないっすね」
沙音が不思議そうにつぶやく。
「先輩達は人力車に乗ってたから、寄り道してるんじゃない?」
「なんすかそれ、先に言ってくださいよ、こんなに急ぐ必要なかったじゃないっすか」
「キィーー、うそ~、だってアイドル声優だもん、外で写真撮られたらどうするのさ」
しかめっ面の歌織が便利な言葉で後輩をはぐらかす。
「それより、早く参拝しよ、見どころ盛りだくさんみたいよ」
本堂参拝受付を見つけ歌織が、がぜんやる気をだす。
方丈に座り曹源池庭園を眺める2人。
「ここが国の史跡・特別名勝第1号らしいっすよ」
沙音が参拝料を払った時にもらったパンフレットを読み上げる。
「へ~でも納得ね~心が洗われるわ」
乾いた空気で遠くの山までクッキリ見える。晴れた冬の空の淡い青冴える。
東京とは違う古都の空気がリラックスさせてくれる。
「そうっすか~それじゃさっきの同級生にラインしていいっすか?」
リラックスしたまま沙音がぶっこんでくる。
「なんでそうなるのよ」
歌織のリラックスは吹っ飛んで、臨戦態勢となる。
「いや~ほら~歌織先輩の心が洗われたから、男嫌いも治ったかなぁ~と思って」
沙音は遠くの山を見ながらリラックスしたまま続ける。
「それとこれは別よ」
歌織は断固拒否の体制。
「じゃあ先輩は一生独身でアイドル声優を続けるんですか?」
リラックスし、本音をぶちまける沙音。
「・・・・・一生続けれるかな」
歌織が小声で問いかける。
「一生独身だったら続けれるんじゃないっすか」
沙音があっけらかんと返す。
「えぇ~私一人で生きていけるかなぁ~」
「ムリっすね」
沙音は容赦ない。
「え~じゃあ結婚か~」
「それもムリっすね」
沙音は本当に容赦ない。
「じゃあどうしろって言うのよ」
歌織が古都にふさわしくない大声を出す。
「それはあれですよ、一人で生きていける能力をつけるか、結婚できる能力をつけるかですよ~」
「何それ」
「とりあえず料理が出来たらどっちも第一段階クリアじゃないっすか?」
「いや~シュークリーム動画がなかったら料理できないのバレないにな~」
「悔しいぜ、頑張るぜ、はははは」
歌織はキャラ声でおちゃらける。
沙音はさすがに笑えず、無言で考える。
『他にもいっぱい料理できないネタ動画上がってますよ、ていうか、料理以外にも治さないとダメなところだらけですけど……』
とは、さすがに声に出さない沙音。
「歌織先輩は付き合ったことないんですよね?」
「高校の時に三日だけ付き合ったことあるわよ」
『それ付き合ったことにカウントしちゃうんだ』
目を丸くさせて、無言になる沙音。
「歌織先輩はどうやって結婚するつもりなんですか?」
だんだん真剣なトーンになっていく沙音。
「年収1億を70歳まで稼ぐ、普通の人にプロポーズされたら結婚してあげてもいいかな」
歌織も後輩につられて真剣なトーンで返す。
冬の京都らしい静寂がおとずれる。
『マジか』
沙音は驚愕し言葉を失う。歌織をまじまじ眺めるが本気で言ってるようで頭を抱えて目を閉じた。




