嵐山⑨
「じゃあ、そろそろ出発しますね」
車夫が渡月橋の説明を終えて、桂川沿いに進む。
雪の積もる嵐山を眺めながら、渡月橋を背にして進む。
途中に見えた宝厳院で立ち止まる。
宝厳院を外から見ながら、車夫が歴史ガイドをしてくれる。
人通りも少なく、絶好の撮影チャンスだったが、男性陣から写真撮影の提案はなかった。
いつも通り写真撮影しましょうかと車夫は言わない。
人力車に乗ったことのあるイケメンも戸惑いつつ、スルーして京都の歴史をおとなしく聞く。
裕華は何も違和感を感じず、楽しそうにはしゃぐ。
「宝厳院って室町時代からあるのに、京都じゃ新しい方なんですか~すごいですね~」
裕華が京都に全力で媚びる。
「え~宇治上神社は950年前の拝殿が現存してるんですか~」
ハイテンションで歓声を上げ、裕華は男性陣を盛り上げる。
MC裕華が見事に回してるうちに、何事もなく天龍寺に到着し、人力車を降りる2人。
車夫にお礼し、総門をくぐり裕華とイケメンは参道を進む。
※
「沙音、そろそろ行こう、ゆーぼう先輩が先に行っちゃたよ」
歌織はいつでも逃げれるように、店の入り口からギリギリ見えた沙音に呼びかける。
歌織と沙音の目が合い、一瞬だけ時が止まる。
沙音が大きく手を振って、手招きする。立ち上がる様子はない。
「はぁ?先に行くわよ」
歌織は怒って店を後にする。
「ちょっ、歌織先輩、待って~」
沙音が慌てて歌織を追いかける。
歌織が少しゆっくり歩いて2人が並ぶ。
「そんなに怒らないでくださいよ」
「怒ってないし、あきれてるだけ、女の子1人で男子の輪に入るはダメでしょ」




