鉄板焼デート⑭
「え?いいんですか?」
歌織が瞳を輝かせて、イケメンに遠慮しない。
「いいですよ。私だと残しそうなんで、是非もらってください」
イヤミも下心も感じさせずに、イケメンがサラッと言う。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
イケメンがステーキ皿を裕華に渡して、歌織まで回してもらう。
「ありがとうございますぅ♡うちの後輩がスミマセン」
イケメンに色目全開の裕華。
笑顔でイケメンからお皿を受け取り、物凄い形相で歌織にお皿を渡す。
『わかってるよね?』
『はい』
イケメンに聞こえないよう、ひそひそ話す先輩、後輩。
間に挟まれた沙織は両脇の厄介な先輩たちに関わらないように目を閉じた。
ステーキを堪能し終えると、シェフがガーリックライスの調理を開始する。
鉄板からガーリックの香ばしい香りがしてくる。
シェフの見事な小手さばきで、白いライスがこんがりパラパラのガーリックライスになっていく。
「お待たせしました」
5分と待たずに、ガーリックライスが提供された。
「すごーい、チャーハンよりパラパラでおいしい。これなら何杯でも食べれちゃう」
歌織が相変わらずの間抜けコメントを言うと、イケメンからまたも声がかかる。
「よかったら、食べますか?」
「え?いいんですか?」
「どうぞ、どうぞ~」
またもイケメンから裕華を経由して歌織に料理が渡される。
「これほんとに美味しいです。ありがとうございます」
イケメンにお礼を言う歌織。
「どういたしまして」
ニコニコしているイケメンの隣で、裕華もひきつりながらニコニコしている。
しかし、笑顔とは裏腹に、裕華の眉間にしわが出来ていた。
「じゃあ、明日朝7時に、お先に失礼します」
急いでガーリックライスを食べ終えたイケメンが、席を離れようと挨拶を済ます。
「え?この後、デザートとコーヒーがありますよ」
不意を突かれた裕華がイケメンを引き留める。
この後、イケメンについて行く気マンマンだった裕華が、動揺しながら問いかける。
「もうお腹いっぱいですし、いろいろ観光したいと思いまして」
「デザートもらってもいいですか?」
裕華を無視して、歌織は自分の欲望に忠実に従う。
「どうぞ、どうぞ、みなさんで召し上がってください。じゃあ、おやすみなさい」
シェフに一礼し、颯爽とイケメンは去っていった。
「なかなかいい奴ですね」
歌織が珍しくイケメンをほめる。
「歌織さ、わかってるって言ったよね?」
イケメンが不在となり、不機嫌を隠そうとしない、威圧感のある声で裕華がにらむ。
「はい」
無邪気な笑顔の歌織。デザートを楽しみにし過ぎてウキウキしている。
「あ、ゆーぼう先輩もデザート欲しいてすか?あげましょうか?」
「いらないわよ、それよりあんたが邪魔するから逃がしちゃったじゃない!」
マジ切れする裕華。




