鉄板焼デート⑫
「何するのよ!」
イケメンの前で、後輩から頭を叩かれた裕華がキレる。
「アホなこと言ってるからでしょ!アイドル声優の自覚あるんですか?」
裕華の3倍、沙音がキレる。
「アイドル声優以前に人としてアウトです。・・・・・・」
まっすぐに鉄板を見つめたままの歌織が一言ぼやいて黙り込む。
背中からドス黒いオーラを放ちながら、凄まじい目力でドームに覆われた肉を凝視する。
「「「「・・・・・・・・・」」」」
高級店にふさわしい静寂な空気が流れる。
「良かったら朝食の時に持って行きますよ?ル・ラバンラで朝食ですよね?」
「はい、そうです」
イケメンに即答する裕華
「7時に朝食予定なんですけど、大丈夫ですか?」
乗り気ではないイケメンが覇気のない声で確認する。
『歌織先輩、私は旅行中はゆっくり寝る派なんですけど』
『私もよ、ゆーぼう先輩もゆったり旅行派で、旅行中に早起きなんてしたことないわよ』
後輩が不安そうに2人だけでひそひそ話す。
「大丈夫です!朝苦手だけど、がんばります!」
覇気だけあって見聞できない裕華が、イケメンと後輩の様子などおかまいなしで会話を続ける。
「そんなに早くから朝食を食べて、何か予定があるんですか?」
「トロッコ亀岡駅9時30分で予約してるんです」
「うそ?私も予約してます」
嘘である。しかし、オーバーに驚いて見せる事で一切イケメンに悟らせない。
そして、後輩に悟らせる。
「ねぇ~ 」
振り向きながら、イケメン対応のアイドル顔から、後輩対応の険しい顔に変化し、異論を言わせない。
「「はい」」
うつむいて返事する2人の後輩。
その隣で裕華の左手は小さくコブシを握りしめた。




