鉄板焼デート⑧
裕華は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
イケボにやられたのと、スッピンだったのを思い出して固まってしまう。
そうこうしてるうちに、全員がサラダを食べ終え、片付けられると、シェフが一礼し、鉄板の前に戻ってきた。
マジシャンの助手のような美女が、優雅に特選黒毛和牛を乗せたカートを押してくる。
鉄板の上に布を敷き、お肉と野菜の皿を客一人一人の前にセットする。
仰々しい演出に慣れていない歌織、裕華、沙音は歓声をあげながら、ハイテンションで写真を撮る。
騒ぐ女性陣を尻目に、イケメンは淡々と写真を済ます。
まわりの空気に合わせて、義務的に写真撮影するイケメンのテンションは低かった。
「では、始めさせていただきます」
写真撮影が止んだのを見計らいシェフが説明する。
「松坂牛シャトーブリアンと京野菜の付け合わせです」
説明と同時に肉と野菜の皿が一旦、鉄板から降ろされる。
油をひいて、薄い白い物体をシェフが炒め始める。
「何してるの?」歌織が率直な疑問を小声で投げかける。
「さぁー」沙音にもまったくわからない。
「スライスした芋を炒めてるんじゃない?」裕華が見たままの感想で山を張る。
「ガーリックチップですよ」イケボが耳元でそっとささやく。
1つ空いている空席から身を乗り出して、シェフに聞こえないよう、裕華のそばまでイケメンが最接近する。
雷に打たれたような衝撃が裕華の背筋を走り抜ける。
「え?ニンニクなんですか?あんなに大きなニンニクあるんですか?」
間違えた羞恥心を微塵も感じていない裕華がニンニクで切り込む。
不意打ちのイケボで乙女になってしまった自分がバレる方がよっぽど恥ずかしかった。
それを横から見ている後輩2人も下を向いて耳まで真っ赤にしていた。




