鉄板焼デート⑥
「おいしかったですね」裕華がイケメンに話しかける。
「そうですね、おいしかったですね」1人ぼっちのイケメンは楽しそうに裕華と話す。
鮑の皿が下げられて、箸休めのサラダがサーブされる。
「特選黒毛和牛の炙り三種盛りサラダです。お召し上がりください」
「サラダなの?」歌織は相変わらず思ったことをそのまま口にする。
「お肉7割、野菜3割だから、サラダというよりローストビーフの盛り合わせですね」
沙音は歌織に同調しながら、裕華の監視を怠らない。
隣の裕華を監視しつつ、歌織と適当な会話を続ける。
スマホで写真を撮りながら、談笑している裕華とイケメンの会話に聞き耳を立てる沙音。
何も考えずに食事を楽しむ歌織。
同じ物を食べながら、それぞれ違う腹の内を形成していく。
「この三種盛り、ソースもサラダも三種類ですっごくおいしいね」
歌織は裕華を放置し、沙音と2人で食事を楽しむ。
裕華もイケメンと2人の食事になるよう、全力で会話を回して、後輩に邪魔するスキを与えない。
完全に2on2に分かれて個人プレー大会となった。
「私たち今日、安井金毘羅と清水寺に行ったんですよ~」
甘え上手なおねぇさん風に裕華がイケメンの肘にボディタッチをしながら、瞳を潤ませる。
「そうなんですか?どっちも大迫力なところですよね?」
「清水の舞台はテレビ通りの迫力でした。安井金毘羅はもう絵馬がすごくって!!」
ボディタッチに無反応なイケメンに対する不満をまったく出さずに、裕華は営業スマイルで会話する。
「そうなんですか~、まだ安井金毘羅は行ったことないから楽しみです」
「行ったことないんですか?」
ついつい裕華が本気で問いただす、モテ要素0の質問をせずにはられなかった。
「ええ、まだないんです」
裕華のオーバーリアクションにも淡々と答えるイケメン。
横から裕華を観察する後輩には、敗戦するイメージしかわかない。
だが、裕華の瞳はまだ死んでいなかった。




