鉄板焼デート③
裕華が左隣にいる沙音に目で訴える。邪魔するなよと。
沙音が小さくうなずく。
裕華の高い合コンスキルで、右端のイケメンからは裕華の般若面も、ビビりながらうなづく沙音も見えなかった。
歌織はスマホで京都タワーの夜景を必死に撮影する。
徹底的に裕華と目を合わせない。
ウエイターが鉄板前菜の皿を下げに来てくれ、軽く会釈する歌織。
まっすぐ正面を見据える歌織が歓声をあげる。
活鮑が1人一皿ずつ準備される。
「三重県産の鮑になります」
鉄板の上に布を敷き、皿を鉄板に乗せる。
生きてるアワビを客にしっかり見せる。
全員の視線が自分の鮑にくぎ付けになる。
裕華すらイケメンから鮑に視線が固定される。
シェフが小さな楕円の油の丸を10個作り、その丸の中に、殻付きのまま鮑が運ばれる。
チチチチと小さな音を立てる鮑に一つ一つ、ピカピカの銅製のドームをかけて蒸し焼きにする。
裕華がスマホの写真を準備し、撮影しようとすると、あっという間にドームを外され写真を取り損ねてしまう。
あ~あ~、本気で残念がる裕華。
鮑を円から鉄板の手前側に移動し、シェフが鉄板をピカピカに磨く。
すぐ近くにきた鮑の写真を撮り終え、イケメンを見ると、イケメンは写真チェックをしていた。
「写真撮れましたか?」
裕華が何気なく聞くと、イケメンが笑顔をふりまく。
「撮れましたよ、ほら」
裕華にむかってスマホで撮高を披露するイケメン。
すると裕華の役者スイッチが連打された。
「いいな~、あたしちっとも撮れなかったんです。ほら」
いい女の演技を全身で披露する。
甘い声がオーディションより本気の声だ。
サキュバスのオーディションなら即合格。
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裕華に勝ち筋がハッキリした。
心をボティコンに着替え、脳内ではミラーボールがキラキラするダンスホールで勝利の舞を踊る。
「ゆーぼう先輩!私もばっちり撮れましたよ!!」
無垢な笑顔で歌織がVサインを送る。
悪意のない、活鮑でテンションがあがりまくった歌織。
思わず初心を忘れて裕華を見て後悔し、歌織はすぐさま鮑に視線を戻した。




