俺たちの戦いはこれからだ②
「ゆー先輩そろそろ機嫌を直してくださいよ」
「そうですよ~縁切り神社にイケメンが来なかったからって落ち込み過ぎてすよ~」
「たぶん来てるし!会えなかっただけよ!」
仁王門を背にし、清水坂をゆっくり下る3人だった。
道端は細い路地の多い京都にしてはかなり広い。
けれども世界各地からの観光客が、両端のお土産屋さんを出たり入ったりで大渋滞している。
ホテル予約時に、ホテル最上階の鉄板焼コースを付けた3人は寄り道せずにまっすぐ清水坂を下る。
「19:00にレストランでしょ?まだ2時間以上あるからお土産屋さんによりたいです」
カラフルな清水焼の箸置きセットに歌織が立ち止まる。
「ここからホテルまで30分以上かかりますよ、夕食の前にお風呂も済ましたいですし、急ぎましょう」
沙音は歩きながら説明する。
立ち止まった歌織を置いて先々進む。
裕華も沙音に着いていく。
歌織が1人取り残されて、渋々2人を追いかける。
「縁切り神社なんて行ったから時間ないんですよ、ゆーぼう先輩」
「しかたないでしょ、イケメンが行くって言ってたんだから」
歌織と裕華が言い争いを始めるが沙音は黙々と坂を下る。
「行ってたら絶対に会いますよ、清水寺みたく広い所じゃなかったんですから」
「参拝時間が短くて間に合わなかっただけでしょ?」
「私達はタクシーで来たんですよ、絶対に先回り出来てますよ」
「イケメンもタクシー飛ばして行ったかもしれないじゃない?」
「お1人様でタクシーはあんまりないですよ」
「そんなのわかんないでしょ!安井金毘羅宮に1人タクシーで行ったかもよ」
イケメンの去り際を裕華はしっかり見届けていた。
自分達の乗ったタクシー乗り場と反対方向へイケメンは消えていった。
タクシーで先回りできた自信が裕華にはあった。
だけど、歌織と沙音には言わない。
言ってしまうと、自分でも認めざるを得ないから言わない。
裕華はイケメンを信じたかった。
「行ってませんよ、ゆーぼう先輩がうざかったから新幹線で適当に言っただけですよ」
忖度のない思ったままを歌織は口にする。
「そんなことない、イケメンが来た後で会えなかっただけよ」
裕華は語気を強めるが、内心自信がなくなっていく。
「来てません、ゆーぼう先輩と縁切りしたくて、その場しのぎに言ったんですよ」
歌織は強気にしか見えない裕華を滅多打ちする。
「京風なんじゃないですか?ぶぶ漬けでも~は帰れでしょ?"安井金毘羅宮に行く"は縁切りたいとか?そんなんじゃないですか?知らないけど?」
歌織が大雑把な予想を立てる。
「・・・・・・。」
裕華は何も言い返さない。
「タクシー捕まえますね」
沙音は淡々とナビゲートし、不毛な会話に参加しない。
坂を降りて東大路通りまで来ると、バスやタクシーが1分間隔で通り過ぎる。
空車を見つけて、乗り込み、ホテルへ向かった。
「ゆーぼう先輩、やっぱり運命なんてないんですよ」
得意げな歌織をよそに、裕華はホテルに着いてからずっとキョロキョロ、イケメンを探す。
回りを見渡してもイケメンはいない。
歌織もいないことをわかった上で勝ち誇る。イケメンはいない!
運命なんてない。
裕華は後ろ髪を引かれるながら、ロビーを後にし、部屋に向かった。




