せや京都に行きまっせ⑧
イケメンの物憂げな眼差しに見惚れて裕華が息をのむ。
凪が生まれて、イケメンと裕華の2人が見つめあう。
窓の外の景色は高速で流れていく。
裕華の鼓動が早くなり、期待に胸がふくらむ。
先ほどからイケメンを握ってる手が、急に汗ばんできたのを感じる。
うっとりとイケメンを見つめる裕華は、握手会のファン状態になっている。
イケメンの御言葉をだまって待っていると、黒服の剥がしではなく、浜倉沙音の剝がしが入る。
「新幹線で初対面の人と何やってるんですか」
沙音は不機嫌を隠すことなく、強い口調で言い放つ。
寝起きだからか、1人席に放置されたからか、アイドル声優の常識を逸脱した裕華の行動からか、沙音自身も何故これほどまでに不機嫌なのかわからず、そのせいで余計に不機嫌のループが加速する。
沙音の剥がしでようやくイケメンの手が解放される。
裕華は笑顔で会釈するイケメンを見て、握手会の自分を思い出す。
会釈で済まし、無言のイケメンに絶望する。
脈はない。
「歌織もなんでそこに座って黙ってるのよ」
思いがけない流れ弾に歌織はおどろくが、もっともなので何も言えない。
プンプン怒る沙音を収めつつ、イケメンをゲットすべく、裕華が再始動する。
「4月のライブの話をしてたら、隣が空いてるから“どうぞ”って言ってもらって、お礼を言ってたのよ」
裕華はほんの少し、しただけの4月ライブを全面に押し出し、沙音を牽制する。
「じゃあどうして、手を握って見つめあってたんですか?」
沙音のごもっともな疑問に歌織も密かに小さくうなずく。
裕華は胸に手を当て、ミュージカルの主演女優のように沙音に訴える。
「やっぱりあたしはアイドル声優だからじゃない?職業病的な感じが出ちゃったのかな」
「「はぁ??」」
歌織と沙音の目が点になる。




