天国③
「「え~ヤダヤダヤダ!」」
「どうしてクリスマスに、嫌いな食べ物を食べなきゃいけないの?」
歌織は本気の抗議をスタッフにする。
「そだーよ、おぇっ!てっ、なっちゃうよ、見せられないよ?」
裕華も続いて抗議する。
「えぇ?いいから早く進めろって?」
スタッフから裕華にカンペが出される。
「ひどい、大人がひどい。みんな、私達が苦しんでるところ見たくないよね?」
わぁああーと、どちらかわからない歓声が上がる。
「え?どっち?」
見た~~い!見たくなーーい!それぞれ合いの手が入る。
「見たくないって、じゃあこのコーナーは飛ばしましょう」
歌織が一方的にきめつけると、会場からいっせいにブーイング響く。
「はいはい、スタッフさんがさっきからカンペを叩き続けているから行きますよ」
「えっと、このコーナーでは、歌織の苦手な納豆料理を私、井ノ瀬裕華が作って歌織に食べさせる」
「そして、私、佐崎歌織が裕華先輩の苦手なシイタケ料理を作って食べてもらう?いっぱい食べてもらえた方の勝利です?」
「なお、敗者はキツーイ罰ゲームが待ってます」
オォーォーーー!
観客はノリノリである。歌織と裕華は引き気味である。
「いやいや、納豆の時点で罰ゲームなんですけど!」
「クリスマスに納豆?ひどくないですか?」
「ひどいよね!クリスマスに納豆とシイタケって?」
「あたしがクリスマスにシイタケ食べても喜ぶお客さんなんていないよ?」
歌織と裕華が観客に話しをふると歓声が上がり、ちらほら見たいという声が聞こえる。もう見たくないという声は上がらない。
「みんな見たいって、仕方ないからはじめるわよ、歌織」
「仕方ないですね。始めますか」
「まず、私から先輩にシイタケ料理をご馳走させていただきますね」
「メールを紹介します。ペンネーム:ぼう先輩さんから」
「クリスマスのシイタケレシピを思いつきました。シイタケって軸を取ったらイチゴ見たいじゃないですか??」
「シイタケのショートケーキって美味しいそうな気がします。だって見た目はほぼイチゴと変わらないんで、歌織先生、ゆーぼう先輩にぜひ美味しいシイタケケーキを作ってあげてください」
「とのことです。いや~初回から飛ばしてきますね」
「飛ばし過ぎでしょ、この後どうするの?てゆーか私、シイタケがイチゴに見えたことなんて一度もないけど?」
「先輩、大丈夫です。私も一度もありません」
「けど、シイタケショートケーキを作ってご馳走させてください」
この後の事を考えない歌織は、笑顔でショートケーキにシイタケを大量に並べて行く。
「出来ました。さぁ ゆーぼう先輩、お召し上がれ」
歌織がお皿を顔の高さまで持ち上げて、観客、カメラ、裕華に向かってキメ顔を見せる。
「ヤダヤダヤダ、シイタケ乗せすぎじゃない?」
「どこを切ってもイチゴが食べられるように全体にイチゴを配置しました」
「バカか?全部シイタケやないか!イチゴなんて1切れもないやないか」
「あぁ」歌織がわざとらしく手を口にあて目を見開いてみせる。
「ほんとだ、シイタケだ」
頭に手をやり、舌をペロリとだすと、観客から大歓声が上がる。
カワイイーー!天使!!マジ女神!!!サイコーーー!
よく訓練されてた歓声が一斉に叫ばれる。
歌織が両手を上げて観客の声援にこたえると、永遠と歌織コールが続けられる。
裕華は鳴り止まないコールに観念する。
「じゃあ、行きます」
裕華がシイタケケーキを一口食べる。
その瞬間、裕華の顔はギュッと力強く閉じて固まる。
裕華の鼻の奥に、シイタケ特有のレンチオニンの香りが広がる。
歯にはイチゴとまったく異なる固い食感が残る。
そして、舌の味蕾に生クリームとスポンジの甘味とシイタケの旨味が広がり、絶妙に不味かった。
おもわず裕華は机の下に隠れてエスケープ用バケツの蓋をあけ、顔を突っ込み処分する。
「ふー、放送事故になるところだった」
裕華は素早く立ち上がり、何事もなかったかのように振る舞う。
「ゆーぼう先輩、どうでしたか?」
「はぁ?どうでしたか?言わなくてもわかるでしょ!」
「0点、0口よ」
観客は大いに喜んで拍手する。
ゆーぼう先輩ナイスファイト!ゆうかサイコー!
ゆーぼう世界一カワイイよーーー!
井ノ瀬裕華への賛美が送られる。
裕華は両手を突き上げて、全力で声援を浴びる。
とてもご満悦の様相だった。
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