荒野②
駅でラーメンを食べて、中央線から京葉線に乗り、千葉へ向かう。
パークに行く途中のポン・ポージュでグッズを選ぶ。
「みてみて、手袋、めっちゃかわいいい」裕華がリボンのついたキャラクターになれる手袋に手を入れる。
「かわいい!!ゆーぼう先輩、かわいいです」
「カチューシャもセットにしましょう」
歌織も手袋に手を入れ、同じキャラのカチューシャもつける。
「かわいい!でもあたし、その赤のカチューシャ家にあるからな~」
「オソロはやめて、先輩は黒にします?」
「あたしが黒だとパンダになるからな~」
黒と原色のブランケットを肩から羽織って試着する井ノ瀬裕華がなぜだかパンダに見えて、歌織は必死に笑いをこらえる。
「そんなことないですよwww」
「ばかにしてるでしょ、まぁ黒は持ってないから今日は黒にするわ」
主役とヒロインの手袋とカチューシャでそろえた2人が準備万端でチケットブースに向かう。
歌織が陸パークに行きたいと提案する。
「新アトラクションが出来た、陸パークですよ」
裕華は海パークに行きたいと提案する。
「今日はクリスマスよ、ムード満点、大人の雰囲気の海パークでしょ」
「海パークでお酒が飲みたいだけでしょ」
裕華にお酒を飲まれると厄介なので、歌織は海パークを回避したい。
「それもあるけど、新アトラクションなんて激混みのところに行って顔バレするの嫌なのよ」
クリスマスに行列なんて絶対に嫌な裕華は陸パークを回避したい。
「ゆーぼう先輩は声バレしても、顔バレはしませんよ」
「ちょっと歌織、どういう意味?正座する?」
井ノ瀬裕華が先輩風をふかせて、即座に結論を出させる。
「じゃあ、もう海でいいです。行きましょう」
抵抗むなしく、正座拒否して海チケットを購入した2人がエントランスを目指す。
15時をまわってようやくエントランスを通り抜けると、大きな音楽と歓声が聞こえてきた。
昼用花火がバンバン打ち上げられ、観衆が手をたたいて一斉に拍手する。
「わぁー、先輩、ちょうどショーやってますよ」
「見よう、歌織」
2人が人垣の上の一部分だけ見えるショーを必死に見る。
終盤で最高潮の盛り上がりに一瞬で参加できる2人が周りに合わせて手をたたく。
「「ミーちゃーん」」声バレがうんたらかんたらと言っていた2人が、声を張り上げる。
声優の透き通った、力強い、遠くまで届く声が会場全体にひびく。
しかし、パークの主役のミー君とミーちゃんのショーの最中にひびく声を気にする観衆は一人もいなかった。
主役が手を振って帰る時間になり、歌織はあわててスマホを取り出し写真の準備をする。
フロートの最上段にいる、ミーちゃんが映るように下から上にスマホを構える。
歌織と裕華がピッタリくっつき笑顔で急ぎながらシャッターを連写する。
ミーちゃんは手を振りながらバックヤードに消えていった。
歌織は早速写真を確認するためにスマホを操作する。
自然な笑顔の2人と見切れているうえにあさっての方向をむいたミーちゃんの写真が映る。
「ゆーぼう先輩、これインスタに上げていいですか?」
裕華が歌織のスマホを受け取り確認すると顔をゆがませた。
「あたし、盛れてないし、ミーちゃんそっぽ向いてるし、イマイチ」
「そーですか?いつもの先輩ですけど」
「あたしは普段もっとかわいいわ!フィルター使ってるけど」
「あたしはフィルター使った事ないんでよくわからないんです。すみません」
「このナチュラルめ、粛清するぞ」
「じゃあ、とりあえず写真を撮りにミーちゃんハウスに行きましょう」
ハウスに着くと40分待ちと看板に表示されていた。
行列の最後尾に並び、少しずつ進んで行く、その間にも後ろに行列は伸びて行く。
ミーちゃんと写真を撮ると意気揚々としていた歌織と裕華の口数が徐々に減る。
行列の前後に延々とカップルが並んでいて、蛇行してすれ違う度にカップルのイチャイチャを見せつけられる。
「大人のクリスマスデートスポットですね、先輩…」陸好きな歌織は海のカップル率の高さにうんざりする。
子供連れの親子や、友達グループもいるが、ついついカップルの方に意識がいってしまう。
「歌織、ひどい顔になってるよ」
歌織はカメラにとられて晒されたら、ファンが万単位で減りそうな顔でトボトボ行列について行く。
「そうですか?普段なら先輩が真っ先にカップルに呪いをかけるのにどうしたんですか?」
上品かつ優雅に裕華は両手を胸の前で組、目を閉じて顎を引き聖女のように祈った。
「今日が独身最後のパークだから、みんなの幸せをあたたかい気持ちで祝福できるの」
「なるほど…」
歌織は目線を行列のカップルから雲にうつした。
流れる雲を見て、今、何をしているのか忘れようとした。
心を無にする修行の時間が終わり、ついにミーちゃんと対面する。
更新遅くなってすみません。
ちょくちょくチェックしてくれてる方、ありがとうございます。
次回、14日までに更新します。
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