荒野①
2人が駅に向かって歩き出す。
満足そうな笑顔で井ノ瀬裕華が謝る。
「せっかくの京都旅行キャンセルするけどゴメンね」
佐崎歌織も安堵した笑顔で応える。
「お見合いならしかたないですよ。かえでもわかってくれますよ」
状況を確認したところで、井ノ瀬裕華がひらめく。
「代打に浜倉沙音か倉持由比にもう一度、声かけてみる?」
「そうですね。結婚してる水原先輩は無理としても、2人は行けそうですもんね」
2人がスマホを取り出し、グループチャットを開始する
井ノ瀬裕華『かえでスマン!2日3日にお見合いかも?その時は京都行けん、スマン』
清野かえで『??は???』
井ノ瀬裕華『私の代わりに沙音か由比が京都行ってくれん?』
浜倉沙音 『予定あいてたら行きまーす』
倉持由比 『弟が東京来るから無理です』
清野かえで『歌織は行けるよね?』
佐崎歌織 『行くよー』
清野かえで『お見合いって何ですか?』
井ノ瀬裕華『お見合いするの』
清野かえで『誰と?』
井ノ瀬裕華『誰かはわからない』
清野かえで『バカですか?』
倉持由比 『 …… 』
浜倉沙音 『www』
「こいつらナメてるな」
井ノ瀬裕華は下を向いてスマホに視線を固定したまま呟く。
「ナメてますね」
隣で佐崎歌織も同意する。
年齢の割に子供ポイと言われる2人は、若いのに大人の魅力があると言われる後輩トリオにいつも通りの扱いをうける。
「ゆーぼう先輩、どうします?」
いつもながらの舐められた状況だが、今日の2人は強気だった。
「ど~しよっかなぁ~」
裕華の口元は嬉しそうに緩み、手で口元を覆う
ひさしぶりに精神的に優位な立場となった井ノ瀬裕華がニマニマしながら、歌織と見つめあう。
「ちょっと泳がせて、ゆーぼう先輩がお見合いしてから、おどろかせるとか、どうですか?」
「何も言わずに突然、年収3000万のイケメン彼氏を見せびらかすか」
井ノ瀬裕華の中でドンドン夢と希望と年収が膨らみ、幸せに満ち溢れていた。
「後輩のチャットはスルーして、遊びに行くか」
フライングドヤ顔で力強く言う。後輩に対する積年の不満を一気に晴らすべく、サプライズを準備する。
歌織もサプライズに賛成だが、スルーして、お腹をさすりながら本能にしたがう。
「ゆーぼう先輩はお腹空きませんか?何か食べてから遊びに行きませんか?」
「たしかに、もう13時かぁ、歌織は何食べたい?」
「ラーメンとクリスマス限定のチョコレートチュロスとアップル&シナモンのホットドリンクが食べたいです」
歌織は遠まわしに、遊びに行きたいところを指定する。
「それ千葉の某テーマパーク?」
「そうです、行っちゃいましょう。ゆーぼう先輩の独身最後の某テーマパーク」
そう言って井ノ瀬裕華の手を左手で引っ張って、右手でテーマパークを指さす。
「おぉ…独身最後!いいね!!最後の独身遊園地。行こうか歌織」
「はい!」




