デート結果⑥
「そら、フラレますよ」
清野かえでは歌織の発言を無視した。
やさしくて無視したのか、忙しい人気声優だから無視したのかは、わからない。
「ぜんぜん、本は大丈夫だった。笑ってくれてたし」
へへへ、とよゆうタップリでこぶしを握り親指を立てる。裕華は暑苦しい真顔を披露する。
「すごいですね。さすが、裕華先輩と付き合える人はちがいますね」
「それ、ほめてるの?」
「半々です、じゃあどうしてフラれたんですか?」
清野かえでは腕を組んだまま思案する。
瞳を閉じて、かわいい顔を歪ませて考えるが真実が見えない。
「知らんがな、バーに行ってフラれて帰ってきて、今ココ」
井ノ瀬裕華は両手をグーにして親指で地面を指す。
振られたショックを微塵も見せない元気な裕華だった。
裁判長かえでがとりあえず疑ってかかる
「バーで何しました?」
「えっとね~」
裕華は急に甘いかわいい声を出す。
「バーで?」
演技かかった裕華がかえでの追求をはぐらかす
「普通にお話してただけだよぉ」
かえでは理由を察する。これはやらかしている、アウトだと。
「そういうのいいから、さっさとしゃべってください」
「やだも~聞いちゃう?バーの話きいちゃう?大人の話よ」
「聞きたいです」歌織はいつも通り純粋な目をしていた。
井ノ瀬裕華は足を組み換えテーブルに肘をつき、手をほほにあてて上目づかいで甘い声を出す。
「バーの会話を外で話さないのが大人のたしなみよ」
「あぁ~もうそういうのいいですから、早く話してください。もう行くんで要点だけでお願いいたします。」
かえでが腕時計を突き出し指で文字盤をトントンする。
裕華は肩をすくめて、降参した。
「普通に会話を回して、聞きたいこと聞いただけよ」
「あたしは借金なくて結婚式の貯金もあるから大丈夫だよー、イケメン君も大丈夫よね、とか」
「夫婦別姓はイヤだなー、あたしは苗字変わるの抵抗ないよーとか」
「結婚したら子供は3人で郊外に一戸建てに住んであたしは仕事セーブするよー、どう思う?とか」
「あとね~」
「え?多すぎませんか? 普通はoneデートone質問ですよ」
かえでが延々と続きそうな裕華にストップをかける。
「だって、結婚後に借金とか発覚したらイヤじゃん」
「それはイヤですけど、そういうのはもっと前に済ましておきましょうよ」
「ほら、お互い社会人じゃん。なかなか時間が合わなくて、なかなかデートできなかったし」
「それに結婚に大切な情報を聞くタイミングって難しいのよ」
裕華は堂々と胸を張って常識的な事をのべる。自分の非常識な行動は棚に上げて。
「だったら、結婚相談所にでも行ったらどうですか?最初から正確な情報あると思いますよ」
疲れ気味のかえでが投げやりな態度でぶっきらぼうに言い捨てる。
「アイドル声優がそんなの行くはずないでしょ」
即答する井ノ瀬裕華。行かないと断言しながら、大発見した発明家のように目が光る。
疲れたかえでは裕華の目の光を見逃す。
どうでもよくなってきた、朝から裕華に付き合った事を後悔し始めた。
「まそうですね」
「結局、別れ話になる前に何したんですか?」
などと、言いながら上の空になっている。
欠席した水原奈央、倉持由比、浜倉沙音はかしこいなとか考えだした。
どうして私は朝から来ちゃったのか悩み始めた所でようやく核心にたどり着く。
やっと振られた女の子のようになった井ノ瀬裕華が告白する。
「結婚情報誌を広げて一緒に見ようとしたら注意されたの」
「バーで広げる雑誌じゃないから後で見ようって、イケメンに注意された」
「もっともだと思います」
裕華は胸をはって振られた女の子の仮面を投げ捨てる。
「だが断る、いま見よ、て言って振られました」
さすがの歌織も言葉を失う。
清野かえでも脱力する。言葉が出ないところをひねり出す。
「やらかしましたね、The endです、 帰りたい」
清野かえでが腕時計を見て、立ち上がる。
「反省点が多すぎるので、今度じっくり反省会をしましょう」
清野かえでの言葉に、裕華と歌織が困り顔を見合わせる。
「じゃあまた今度よろしくね」
微妙なスマイルでかえでに手を振る2人であった。
「さて、行くわよ歌織」
井ノ瀬裕華も立ち上がって店を出ようとする。
「え?どこへですか?」
「結婚相談所に決まってるでしょ」




