デート結果②
新宿駅西口から徒歩5分、よく行くアフレコスタジオから徒歩2分のカフェ“バニラマッシュルーム”。
アフレコの合間によくお世話になる。
わざわざ同業者が多い場所に集合しなくてもと思いながら入店してキョロキョロしていると、「こちこち」おばちゃんみたいな大きな声が飛んでくる。
井ノ瀬裕華がブンブン手を振っているテーブルにへ行くと2人の女性が座っていた。
井ノ瀬裕華はコートを椅子にかけて風呂上りのようなスッピンに無造作ヘアという乾かしただけのヘアスタイル。部屋着、一歩手前のパーカーにズボンで昨日と同一人物とは思えない変わりようだった。
清野かえでは髪をきれいにまとめて完全フルメイク、スマホのアプリで加工したような異常にかわいいファンタジーな撮影用の2.5次元使用だった。
昨日とは正反対の2人が座っていた。
3人がそろうと店員さんがすぐ来てくれた。
「「「コーヒーお願いします」」」
店員さんはていねいに返事して、テーブルから離れる。
「かえで今日デート?」清野かえでを見た歌織が私見を述べる。
「仕事です。今日はネット動画番組ようの衣装です」
「忙しいのに来てくれてありがとうね、かえで」泣きじゃくった後のダミ声で井ノ瀬裕華が弱々しくささやく。
歌織とかえでが互いに見つめ合う。アイコンタクトで、どーぞどーぞと発言を譲り合う。
「お待たせしました」店員さんがコーヒーを3人の手元にセットする。
台風の中心に飛び込んだように、ひと時の空白が生まれるがすぐに暴風域にもどる。
「クリスマスイヴに振るとか男としてサイテーじゃない」裕華がパワハラ気味に後輩に同意を求める。
「そうですね」歌織は間髪入れずに相づちを打つ。
「そうですか?振るつもりでクリスマスにわざわざデートするとは思えないんですけど……」
「何かやらかしましたか?」
清野かえでは冷静に分析する。
「何もやらかしてないよ!」
「でも昨日、銭湯の後かなりお酒を飲んでてうざかったです」
無罪を主張する井ノ瀬裕華被告に証人、佐崎歌織の思わぬ横やりが入る。
「いやいやちょっと飲んだだけで酔ってないし、何もやらかしてないよ」
裁判長、清野かえでが無言で井ノ瀬裕華を見つめる。最年少とは思えないかえでのプレッシャーに裕華が挙動不審となり手が震える。コーヒーカップがふるえる。
「何やらかしたんですか?」裁判長は公平な審査をあきらめ、決めつけた。




