決戦前②
「デート前にどうしてビールなんか飲んでるんですか?」
歌織はお酒を飲む人の気持ちがわからないので困惑する。
「馬鹿だね~デートの前だから1杯飲むんじゃない」
一口飲んだだけで見事に酔っ払いのオッサン化した裕華が、さも当然のように言う。
「いい?デートよ、クリスマスイブに青山のハウスレストランでフレンチよ、ソムリエにとりあえずビールで、って言えるはずないでしょ」
「だから風呂上りに1杯ひっかけてからデートに行くの!」
ドヤ!!と言いたげな顔の井ノ瀬裕華がいた。
「今日はビール飲まなかったらいいじゃないですか?」
ソフトクリームを食べ終えた歌織は手に残った紙を握りしめながら物申す
「おこちゃまですねぇ~、いい?好きな男の前で軽く飲んでほろ酔いした女はモテるの」
「そんな酒臭い女がモテるわけないじゃないですか」
井ノ瀬裕華は肘をテーブルについて手を顔にあてて、セクシーなお姉さんボイスでつぶやく。
「においなんてどうとでもなるの」
「それよりお酒でほんのりと顔が赤くなったり、かわいく甘えたりして色気が出るほうが大事なの」
「そうなんですか?でもお店で飲むし今飲む必要ないのでは?」
一口お酒を飲むと酔っぱらう歌織は正直に思ったことを口にする。
「デートで酔えるほど酒を飲めるか!」
「こちとらビール、酎ハイ、ワイン、日本酒、ウィスキーを1周してやっと酔えるの!」
「歌織みたいに一口のんで酔っちゃった、とか言えないの」
酔っ払いの絡み酒にしか見えない井ノ瀬裕華が熱弁する。
「デートでしこたま飲んで、酔っちゃった、は何もかわいくないから、ただのおっさんだから」
「そうですね」歌織はダルそうに返事する。
「だから飲みたくて飲んでるんじゃないの、デートの為に飲んでるの」
「そうだったんですね、すみません。」
「正直言うと、お風呂上りのお手入れの時は女子力高いなと尊敬してましたけど、ビール飲んでるときはやっべーやつだと思ってました」
歌織は目を輝かせて礼賛する。
「女はちょっと隙を作ったほうがモテるの、このビールは女子力なの」
井ノ瀬裕華は後輩から向けられる尊敬の目に後ろめたい気持ちを含んだニンマリ顔でささやく
「あんたもお酒が飲めるようになったらわかるかもね」




