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紅の救世主  作者: メアー
4章.未だ見えぬ悪意
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27.北の山の秘密




大怪鳥ガルデルダ討伐に貢献した

【暗黒戦鉈・撃破】改め【暗黒収束砲・撃破】によって、山頂は荒野と化し


その中で意図的に隠されていた建築物を発見したのだった。


「また【神界文字】か……。おそらくこの山には何か秘密があるんだろう。ロンベール殿、済まないが古代遺跡を調査しておきたいので……。」


「えぇ、かしこまりました。私共は先に昇降機でふもとまで降りて待機しておきます。坊っちゃまを休ませねば……。」


「えぇ、頼みます。」


ロンベール達を先に下山させ、豊とはカイパーは建築物を調べた。


「ダムの構造と似ている。入れそうだ。」


『すると、ココもなんらかの施設なのだろう。』


「とにかく調べてみよう。」




豊が操作パネルを起動させ、扉を開けると

施設内の照明が次々と点灯し、それは奥まで続いていった。


「【神界文字】での案内板……。どうやらエネルギー施設の様だ。」


『救世主、貴様【超越者】共の文字が読めるのだな。』


「あぁ、冥王は女神たちの事を【超越者】と呼ぶのか。神界文字は【救世主】を勅命された時に憶えたんだ。完璧ではないけどね。」


『自らを神と名乗る輩は信用ならぬ。【超越者】共は宇宙を管理する事を、知的生命体の使命だと思っている奴らだ。均衡という大義名分が有れば、銀河や星を破壊する事もいとわない。』



「すべての宇宙が支配下にあるかと思っていたが、そうじゃなかったしなぁ……。」


『奴等が管理しているのは全体の2割にも満たない。我が支配していた領域も同じくらいだ。』


「宇宙は際限なく広がっているのか……。」



『それで、救世主。この施設の目的はなんだ。』


「見たところ、エネルギー施設らしい。特殊な縦型のタービン風車を利用した【風力発電】だ。」


『ほう、標高が高い山の寒暖差で発生する強風を利用しているのか。しかし、この施設。何故【神界文字】とやらが使われておるのだ?』


「そこまではわからないけど……。偶然と云うにしては文体がはっきりしている。過去に機構の神が存在していたのでは?」


『あり得んな。奴等がこんな中途半端に手をつける理由がない。奴等にとって世界の選択肢は繁栄か破滅、どちらかしか許されない。知的生命体というだけで、宇宙を統括しようなど烏滸がましいものだ。』



「冥王の支配とは違うのか?」


『先代がどうかは知らぬが、我は支配というよりは、縛らないだけだ。神界機構の介入を牽制しているに過ぎない。』



「僕は、冥王の宇宙侵略行為があったと云う話を聞いて来たのだが……。」


『それはおそらく、先代の話であろう。宇宙の時間には差異がある。【超越者】共が先代に対して反旗を翻してすぐ、我が先代の椅子を奪った形となった。1000年2000年は誤差の範囲内だからな。』


「結果として、僕は間違って冥王を討ったのか……。」


『気にするな。宇宙では良くある。超越者共も、先代が我に喰われるなど予測もしていなかっただろうしな。我も、今まで同様、自分を倒しに来た輩と思い違いしていた。』


「結局のところ、あの場で僕達に必要だったのは話し合いだったんだな……。皮肉が利いている……。」





ふたりが会話を進める中、施設内に保管されていた電力の管理装置を発見した。

大掛かりな液晶モニターと操作パネルが印象に新しい。


「よし、ダムの時と同じ作りだ。冥王。電気を取り込んでくれ。機械はこっちで操作する。」


『わかった。』




豊が装置の電源を操作すると、それと同時に

立体映写機が起動した。

光によって映し出された人物は、異様な程に美しく、現実離れした人物であった。


灰色の瞳に灰色の髪、真っ直ぐとこちらを見つめる目には、生き物に本来備わっているはずの熱はなく、底の無い恐怖を感じる。


『これは……超越者か?』


「つまり、神界機構に属する者か」


映像の画質と音質は、経年劣化によって所々破損しているが、その様子は要所要所聞き取る事ができた。





『この映像を見ている者がいるとすれば、おそらく、ワタシの念願は達成されなかったのだろう。』


そう切り出した映像の人物は目を瞑り、少し沈黙してから言葉を続ける。


『ワタシは【神界機構】より追放され、誰の支配下にも置かれていない、この【未開惑星】へと辿り着いた。機構の仲間たちは、知的生命体管理における、適切な誘導としてワタシが提唱した【優良遺伝子操作】を激しく非難した。……命に関わる倫理的な話は、不死のワタシには理解の及ばない所だが、共感性により、想像は出来る。提唱後、遺伝子操作によって優れた点だけを残した結果、少しずつ生殖機能が低下し、やがては子孫が残せなくなる事が数十万年後分のシミュレーション実験から発見されたのだ。おそらく優秀な彼等は、この事を予見していたのだろう。ワタシの見通しが甘かった。この案件を通してしまっていたと考えると、とても恐ろしい。彼等がワタシを迫害したのも頷ける。』


話し続ける彼の後ろには、実験を行う為に用意されたであろう機材が山の様に構築されている。


培養液で満たされた試験管の中で、細胞が分裂し、その傍らで子供大にまで成長した人間が、巨大なカプセルの中で眠っている。



『しかし、ワタシは結果に満足せず、秘密裏に持ち出した遺伝子サンプルを元手に、この星で実験を繰り返し、完璧な遺伝子に一部欠落を持たせる事で、繁栄の問題は解決を見せた。次に、有機知的生命体の闘争本能に関わる脳の一部に、遺伝子の時点で細工を施す事で、争いの無い世界を作ろうと試みたのだが失敗だった。しかし、消すのではなく、本能を弱める事で均衡を保ち、知的で冷静な人類を生み出す事が出来た。彼らはまず、思考し、怒りに身を任せない。命を余す所なく謳歌し、成長を遂げ、まさしく理想的な生命だ。これならば、彼等も納得してくれる筈。ワタシを受け入れてくれる筈だ。』




豊は、突然の事実に唖然としていた。

「情報量が多い……。いや、しかし……遺伝子を操作して人の感情を操作するなんて……。極論にも程があるし、根本的な命の倫理観が抜け落ちている……。」


彼の話す事象は、豊の考え方とは著しく乖離した理論だ。


元あるものを、理性で推し量り生きるのと

根本を制限するのとでは、結果は同じであっても過程も意味合いも異なる。


人間が理性で生きる為には、環境と、経験の積み上げが必要不可欠であり、本能を弱める事で再現する事柄ではないからだ。



『我々、宇宙を超越をした者に、多数を含む生命体の気持ちは分からないのだろうと、【ワタシが作った者達】は言った。生命体として、形成する原子の数や構造は異なるが、論理は一緒のはずだ。社会を形成し、文化を作って安全を確保し、未来に子孫を残す。不老不死の私からして見れば、非常に健気で哀れな存在だ。実に愛おしい。なればこそ、同じ種族同士で無駄に争う彼等を救いたかった。幸せを全うし、余計に苦しむ事なく、生きてほしかった。』



「なんて傲慢な……。女神はアホだが頭は良かったし、自然のままに、善にも悪にもなれる人の在り方、理性の可能性を受け止めていた。だけど、コイツにはその度量がないじゃないか……。」


『それ故に此奴は、神界機構を追放されたのだろう。超越者達は、管理をするが直接的に手はつけない。それが奴等の掲げた、奴等の宇宙におけるルールだからな。』


その後、立体映像により施設の意味などが解説された。彼は自身の目的を成し遂げ、神界機構に帰る手筈だったという。





『ふむ……。【神化】か、星の概念に作用する事で、事象を意のままに操る【上位存在】となるつもりだったのだな……。』


「まるで、存続システムへの介入だな……。【神化】は人が進化の果てに【超越者】になる事を意味しているのか。」


『そうすれば、【神界機構】に対して自身の存在を、主張可能と云う事だな。自分の正しさを証明する為に連絡を取ろうとし……。それ故に施設とエネルギーを用意したと……。』


「しかし、なんからのトラブルからそれが為されなくなった……。」





『……。この映像から察するに、この施設の劣化具合から推察すると、かなり前のものの様だ。断定は出来ぬが……。』


映像はそこで終わっていた。

記録媒体が風化し、欠落していた為、完全に再生する事が叶わなかったのだ。




「この世界の謎は、おそらく古代遺跡に残された映像資料を辿ってゆけば、明かされるのだろう。結果として、神界と連絡を取る手段も分かった。」


『あとは、施設の情報と、電力を頂いて帰るとしよう。』


蓄えられていた電力はおよそ3.63GW。

水力発電ダムの3倍にあたる。


これによって、冥王は失った電力を補充し、新たにエネルギーを得た事で、大気圏脱出に必要な力の4割を取り戻した。



その後、豊は機械を操作し、正確な世界地図と、エネルギー施設の場所を調べあげ、これの印刷に成功。


下山を行い、ロンベールとの合流を果たして

王都への帰路に着いた。




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