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12.村の真実

話が飛んでいるように思えますが、そのままお読みください


「おい! そっちの部屋を見ろ!! 」


急速に引き戻される意識の中、一瞬どこか分からない感覚に陥ったがすぐにベリーニ村の入り口近くの家だと思い出した。

マリオンはベッド横の机に立てかけていた剣を取ると急いで靴を履く。

鞘から剣を抜いたと同時に、部屋の中に人が雪崩れ込んできた。

その数は三人だが、その内の一人の男がマリオンを上から下までじっくりと眺めていた。


「お前達は何者だ! 」

「へぇ、こいつか。エルフと一緒に旅してる人間つーのは。っち、薬が効いてねえじゃねーか 」


マリオンの言葉を無視して、一人の男が口を開いた。

他の男たちは目をぎらつかせながらマリオンを睨んでいる。


「エルフなんかとつるむなんて、こいつは人間の敵だ! 殺しちまいましょうよ隊長 」


憎憎しげに口を開いた男に”隊長”と呼ばれた男は、鼻で笑う。


「お前は馬鹿か? 見てみろあいつの顔。聞いてた通り上物だ。殺すなんて勿体ねぇ! 街で売ればいい金になる 」


その言葉に二人の言葉は納得したのか「それもそうだ 」と笑い出した。


「……ユーリ様は! 他の皆はどうした!? 」


他の部屋からは何も聞こえない。

どうして皆の声が聞こえないのか――、悪い想像ばかりが膨らむがそれを振り払うようにマリオンは目の前の男を睨みつける。


「ああ、あのエルフ達ねぇ。あいつらならもうとっくに仲間が始末してんじゃねえか? 」

「嘘だ! 」


男の言葉を直ぐに否定したマリオンは隊長と呼ばれる男に剣を向け、そのまま振り上げた。

ガキンと響いた剣と剣がぶつかる音は静かな家に響く。


「ほお、なかなかやるじゃねえか。細っこい優男のくせに 」


男はニヤニヤしながら受けていた剣を跳ね上げると、マリオンを軽々と弾き飛ばした。

剣の修行をしていたマリオンの実力は低くはない。

けれど目の前の男の剣を受けた時、男の実力のほうが遥かに上だということは嫌でもわかった。


「おいおい。無駄に抵抗しないほうがいいんじゃねえか? お前の実力じゃあ、俺には敵わないってわかってるだろ 」

「うるさい! 」

「おお、こわいこわい 」


馬鹿にしたように肩をすくめる男に再び剣を向ける。


「っち、しつけえ野郎だな。おい! あの女連れて来い! 」


男の言葉に手下の一人が部屋から出て行く。それから直ぐに戻ってきた手下の横には猿轡をされたカンデの姿があった。


「カンデさん! 」


カンデは涙を流しながら首を横に振って何かを喋っているが、噛まされた猿轡ため何を言っているのか聞き取れない。


「おい、この女を殺されたくなかったら剣を捨てな 」


剣を構えたまま睨みつけるマリオンにイライラした声で男が叫んだ。


「早くしねえか! この女死ぬぞ? 」


カンデの喉に剣をあてた男はマリオンに見せ付けるようにカンデの髪をつかみ後ろに引っ張ると白い喉を晒す。


「悩んでる暇なんかねぇだろ? 早くしろ! 」

「わ、わかってるから! だから剣を…… 」


今にも剣を横に引きそうな男の言葉に従い剣を床に落とした。

それに満足げな男は、マリオンとカンデを見て再び笑い出した。


「良かったなぁ、カンデ。こんなお前の命でも大事だってよ。こいつの仲間のエルフはお前のせいで死んだのになあ 」

「なっ―――、どういう……? 」


親しげにカンデに話しかけている男は本当に楽しそうな顔でマリオンを見ている。

男に猿轡を外されたカンデはというと、何か言いたそうにしているのだが、首を横に振り嗚咽が漏らすばかりだった。


「こいつはなぁ……。いや、この村はなぁ俺達の商売に欠かせない村でな、こうやって訪れるやつを村の奴が騙したところで俺達が美味しいとこだけ頂いてるんだわ。この家はわざわざこの為に作られた家なんだよ 」


カンデはぼろぼろと涙を零しながら床に膝をつくと悲痛な声をあげている。


「村長も協力的でなあ、娘を人質にすればなんでも言うことをきいてくれて俺達は最後にこうやって殺したり、売ったりするだけでいい。ほんと良い村みつけたぜ 」

「―――なんて事をっ! お前達は村人まで力で支配してい―――うぁっ! 」

「マリオンさんっっ!!!」


全てを言い切る前にマリオンの意識は途絶えた。

後ろから頭に受けた衝撃で意識が遠ざかっていく。手下の一人に剣の柄でやられたのだろう。

悲痛なカンデの声に大丈夫だよ、と言いたかったが無理だっそれは叶わなかった。

薄れ行く意識の中、マリオンはカンデが家に案内してくれた時のことを思い出していた。



――――――――




カンデに案内された家の中はとても綺麗に掃除されていた。

村に人が滅多に訪れないと聞いていたのに、いつも掃除しているとしか思えないほど行き届いた部屋が目に入る。

テーブルの上には野の花が飾られており、既に食事も用意されていた。

用意が全て整っている様子に何故かなんとも言い難い気持ちになったのだが、案内をしてくれた少女カンデはそんなマリオンに気づくことなく家の説明をしている。

井戸や手水場は家の裏に、二階建ての家の中は一階に一人部屋が二つとキッチンとダイニング、二階には二人部屋が二つあるとのこと。


(確かに……宿泊を断っていたらこの食事は無駄になってたんだけど。なんだろう……、なんか気になる )


そんなことを考えていたマリオンの袖をそっと握ってきたユーリに目を向けると、ユーリは首を傾げて微笑んでいた。そして顔に手を伸ばしてきたかと思うと、そのままマリオンの眉間をそっと撫でる。

その時初めて自分が眉根をしかめていたことに気づいたマリオンは、ユーリの小さな優しさで眉間の皺を緩めることが出来た。

小さな声でお礼を言うとユーリは嬉しそうに頷き、カンデの説明に耳を傾けていた。


「他に何かわからないことはございますか? 」


一通り説明を終えたカンデが確認するように皆の顔を見回す。


「あの、これは……? 」


アルが用意されている食事をみて問いかけるとカンデは頭を下げる。


「村長が、皆様が泊まるからと食事の用意をするように言われておりましたので 」

「……そうですか。皆様のご好意に感謝いたします 」


珍しくアルが無表情に少しだけ笑みを加えたことにマリオンは目を丸くした。


(うわ~アルさんが笑うとやっぱり破壊力があるな~ )


そんなアルの顔をボーっと見ていてるだけで何も答えないカンデにアルが片眉をあげる。


「……どうかされましたか? 」


その問いに目を瞬かせたカンデはハッとして再び頭を下げた。


「い、いえ。あの、それではし、失礼します 」


どうやらアルの笑みに見惚れていたのはマリオンだけじゃなかったらしい。

カンデは顔を赤くしながらパタパタと走り、扉の前で思い出したように振り返った。


「あの、何か御用がありましたらこの横の紐を引いてください 」


カンデの言う紐は、扉の横の小さな穴を通り家の外に繋がっているようだった。


「これは、私の家に繋がっていて引っ張ると向こうでベルがなりますので。それでは失礼します 」


それだけ言うとカンデは外に出て行った。

慌しく出ていった少女にクロードが肩をすくめた。


「……じゃあどの部屋使いますか~? 」

「俺とマリオンが同じ部屋でいいんじゃないか? 」


クロードが喋り終わると同時にユーリが口を開いた。


「却下です。ユーリ様は私達三人の誰かと一緒に居ていただかないと困ります 」

「マリオンと一緒でも問題ないだろう 」

「ええ、問題はありませんよ。マリオンが私達と同じくらい腕が立つのでしたら 」

「無理です! 」


ユーリが答える前にマリオンがアルに答えた。

マリオンの言葉にユーリはがっかりした様子でマリオンを見ているが、マリオンだけでユーリが守れるかといわれれば無理なので仕方ない。


「あ。私、ちょっと井戸で手を洗ってきますね 」

「えっ、俺も……! 」

「まだ話は終わっていませんよ 」


自分がいたらユーリが少し我儘になるらしい、とこの短い期間で理解したマリオンは自分がここにいないほうが話が早く着くと判断し、外に出ることにした。

キッチンへ向かい裏口へと続く扉から外へ出ると、後ろからユーリの声とそれを嗜めるアルの声、それからミカルとクロード笑い声が聞こえた気がしたがそのまま扉を閉める。


(クロードさんたち、また面白がってるな…… )


マリオンは空を見上げると小さく嘆息した。

外は青空からいつしか薄紫色に変わっており、夜の帳が落ちようとしていた。


「あの、マリオン様……ですよね? 」


後ろから不意にかけられた声にドキリとしたが、何事もなかったように振り向いたマリオンの前には先程の少女カンデが家の影に紛れるようにひっそりと立っていた。

年の頃はマリオンより少し下というところだろうか? 

どこか不安気な様子で辺りを気にしている少女を訝しく思いながらも、これ以上彼女が不安にならないように優しく声をかけた。


「はい。あなたはカンデさん……ですよね。先程は案内ありがとうございました 」

「い、いえ。あの、私…… 」


そこで言葉を詰まらせたカンデは下を向いたまま黙ってしまった。

そんなカンデを見つめていると、彼女の握り締めた手が震えていることに気づく。


「カンデさん……? どこか具合でも悪い――― 」

「あの!! 食事で用意している飲み物は絶対に飲まないでください! 」


マリオンの言葉を遮った少女はそれだけ言うと踵を返した。


「え!? あのどういう意味…… 」


戸惑うマリオンに気づいたカンデは足を止めると振り返らずに口を開く。


「用意した飲み物は全部美味しくないんです。だからお客様にだすような物じゃないのに……。いいですか、絶対に水以外の飲み物を口にしないでください 」


それだけ言うとカンデの足は再び動き出した。後姿を見つめていたが、それは暗闇に紛れてわからなくなった。


「……まずい飲み物って? 」


首を傾げながらぼんやりとカンデの消えた方向を見ていたマリオンに「マリオン部屋決まったよ 」とミカルが声をかけてきた。


「あ、ミカルさん。部屋決まりましたか 」

「ああ。結局、私とクロードが一階の一人部屋。二階はユーリ様とアルが一緒で、残りをマリオンが使うことになったよ 」


大体そうなることは分かっていたマリオンは苦笑しながら家の中に戻ると、既に三人は食事を始めているようだった。


「お先にいただいてるよ~。こんな小さな村にこんな美味しいワインがあるとは嬉しい驚きだよ~ 」

「ええ、本当に美味しいワインですね。ミカルも飲んでみたらどうです 」


そう言ってワインを飲む二人を見て、先程のカンデの言葉を思い出した。


(あ、あれ? カンデがあれだけまずいって言ってたのに……、飲み物美味しいんだ? )


「さぁ、マリオンも食べよう 」


ミカルに誘われマリオンも食事の席につくと、クロードに果汁を絞った物を勧められる。

しかしカンデの言葉が脳裏を過ぎり、何故か飲む気にはなれず断ることにした。


「あれ~? マリオンってこれ好きじゃないの? 美味しいのに 」

「ええと、今日はそういう気分じゃないのでお水にしときます 」

「そう? じゃあ僕達で楽しんじゃおうーっと 」


そういってクロード達は飲み物と食事を楽しんでいる。

マリオンも美味しい食事を楽しみ満足した頃には、カンデの言葉は記憶の片隅に追いやられていた。



盗賊団に力で支配された村でユーリ達が行方不明になってます

甘甘になりませんっ。すみません



ブックマークありがとうございます!

嬉しいです。皆様が読んでくださってると思うと

やる気が出ます^^


評価をして下さった方いらっしゃいますが

ありがたい評価に驚いています。

最後まで楽しく読んでいただけるように頑張ります

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