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10.エルフの性質


セルリーアン領から出て隣接したヴィスキーン領に入ったのは、ユーリとの距離が少し近づいてから三日経ってからだ。


「ほら、あそこに見えるのがヴィスキーン領のベリーニ村とジュルード湖です 」


ミカルの指差した先には確かに村が見えた。

森に囲まれているその村から少し離れたところには湖がある風光明媚な場所だ。

マリオンはジュルード湖と聞いて思い出す。


(ジュルード湖って……、ルイザとお茶してる時に話してたところだよね…… )



―――――――――



「ねぇ、マリオン。ヴィスキーン領にあるジュルード湖ってしってる? 」


いつものようにお茶を楽しんでいると急にルイザに問いかけられた。


「ヴィスキーン領は風光明媚な場所って有名だよね。そこのジュルード湖ってリードガルフで一番きれいな湖だったっけ? 」


クレド村だって自然に囲まれた美しい場所だと自負しているマリオンだが、ヴィスキーン領の自然の美しさはかなり有名で、中でもジュルード湖はリードガルフで最も美しい湖と言われている。


「そうそう、そのジュルード湖なんだけどね。そこの特産品って知ってる? 」

「特産品? うーん………、聞いたことないけど。それがどうかしたの? 」

「うーん。今度その湖で採れる貝をね、アリソン商会で取り扱い始めたんだけどね……… 」


言葉を濁し、突然机に頭を突っ伏したルイザからカップを死守したマリオンに、ちらりと視線を投げかけたルイザは嘆息した後口を開いた。


「叔父様がね…… 」

「それって、イーサン叔父様? 」

「話題になるような叔父様は、イーサン叔父様しかいないわ 」


即断言したルイザに苦笑しながら先を促す。


「でね、その叔父様なんだけど。叔母様にアクセサリーをプレゼントしたいって急に言い出してね……。その湖から採れるジュルードパールっていう綺麗な珠をね、勝手に! 大量に! 仕入れちゃったのよ 」


ルイザの説明によると、その湖にしか生息しないジュルード貝から採れる美しい珠がジュルードパールというものらしい。

それは一つの貝から一粒しか採れない希少品の為、一粒でも割と高価なのに、大量ということでかなりの金額になってしまったらしい。

しかもそれが叔母の知るところとなり、激怒した叔母の怒りを静める為、泣く泣く一粒だけで我慢したというのだ。


「ほんと、叔父様には毎回、毎っ回! 大変な思いをさせられるわ…… 」

「ルイザの叔父様の叔母様に対する愛ってさ、相変わらずとどまるところを知らないんだね…… 」

「うん…… 」


ルイザがそっと目線を外す。


「まぁ叔父様の愛はいつでも重い……いや、想いで溢れちゃってるから。気にしたら負けだって分かってるんだけどね 」

「うん。で、結局他のジュルードパールだっけ? それはどうなったの? 」

「ああ、それね。結局かなりの量があったし、物がすごく良いのはわかってたからアリソン商会の宝飾職人さんたちにお願いしました。ついでに言うと、おかげさまで売れに売れて儲けはバッチリよ! 」

「アリソン商会の職人さんだったらすごく素敵な物が出来たんじゃないの? 」


アリソン商会が一流の職人しか揃えていないのが分かった上でそう言ったマリオンにルイザはニヤリと頷いた。


「豪華なものからお手頃なものまでバッチリ出来たよ~ 」


そう言ってルイザはマリオン目の前に何かを差し出した。

それは、美しい輝きを放つ珠を綺麗に並べた髪留めだった。

一目で高価だとわかる乳白色の光沢を纏う珠にマリオンはため息をつく。


「綺麗………だね 」


つい見惚れてしまったマリオンは呟くように言う。


「フフフ、でっしょー! 売り物だけどね~ 」


ルイザは自慢げに胸を張ると髪飾りを持ち上げ、自分の髪に着けた。金の髪に白い輝きを放つジュルードパールがよく似合っている。


「うわ~、よく似合ってるよー! 流石ルイザ 」

「褒めても何もでないからね~ 」


笑いながら答えたルイザだったが、その言葉とは裏腹に今度は違うタイプの髪飾りを取り出した。

ルイザがつけている髪留めとは随分と違い、小振りな一粒パールに小さな金色と銀色の花があしらわれた可愛らしい髪飾りだった。


「はい、これマリオンにだよ 」

「………はい? 」


ルイザの言葉にマリオンは目を大きく見開くと首を傾げる。


「だから、これマリオンのだから 」


ルイザは髪飾りをマリオンの髪に素早く取り付けてくる。


「ちょ、ちょっと! ルイザ! これってすごく高いんでしょ!? 」


慌てて髪飾りを外そうとしたマリオンの手をルイザが押さえると眉を顰めて首を振る。


「外しちゃダーメ! これはマリオンにあげたんだから外したら誰も使う人がいません。だから外しちゃダメ 」

「え? え? 外したってこれだけ可愛かったらすぐ売り物になるでしょ! 」

「あ、これアリソン商会では売り物にならないレベルです 」


話を聞くと、大量に仕入れたパールの中には傷物がいくつかあったらしく、高品質を謳うアリソン商会的には売り物に出来ないのだそうだ。

しかし、物自体は悪くないのでせっかくだからと一族の女性に髪飾りやアクセサリーを作って配ることにしたのだとか。


「一族じゃない私が貰っちゃまずいんじゃ? 」

「あ。いいのいいの、気にしないで。マリオンは私の姉妹みたいなもんだし、お父様からも渡すように言われてたし 」

「お、叔父様にも? 」

「いつもお世話にナッテマス 」


そう言って頭を下げたルイザはどうやら父親の変わりに頭を下げたようだ。


「こちらこそ。って、なんだか申し訳ないような。むしろお世話になってるのはこっちなんだけど…… 」

「うん? まぁそこは私達の仲ってことで。ただでさえそんな格好してるんだから、たまにはソレ付けて可愛い格好でもシテクダサイ 」

「は、はーい 」


結局最後には男装を注意されて終わるのが毎回のパターンだ。


(なんだかんだ言って、貰ってばかりなんだよね…… )


思い出してみると、マリオンはルイザから色々貰っている。お菓子とか小さいものもあれば、髪飾りなどの高価なものまで多種多様だ。

貰うばかりでは申し訳ないと、返せるときには返すようにしているのだが、アリソン一族はマリオンを気に入ってくれているようで何かにつけて色んな物をくれるので追いつかないのが現状だった。

それでも狩りなどで入手したものをルイザやアリソン商会に持ち込むのだが、結局それも買取りになることが多く、マリオンからしたら申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

一度ルイザに「どうしてそこまでしてくれるのか 」と聞いたことがある。

するとルイザから返ってきた「エルフだから仕方ないのよ 」という一言は、マリオンには理解できないものだった。

困った顔をしたマリオンの顔を見てルイザはひとしきり笑うと説明をはじめた。


「エルフって言うのはね、一度好きになっちゃうとすごく執着しちゃうの。物であれ人であれね。で、自分の好きな人、愛する人には色々してあげたくなっちゃうようなそんな生き物だから諦めてね。ね、マリオン 」


笑顔で答えたルイザの勢いに、マリオンは思わず頷いてしまった。


「ああ、そうだ。これって他のエルフもだからね。私達一族だけがそうだとは思わないで 」

「えっ!? そうなの……? 」

「イーサン叔父様見ても分かるでしょ 」


確かにルイザの叔父様の話を毎回聞く限り、叔母様に関することで手を抜くということがない。


「う、うん…… 」

「マリオンは引っ掛けやすいんだから気をつけなさいよ 」

「うん? 」

「いいから、いいから。とにかくマリオンはマリオンでいいの 」


訳の分からない説明をされて首を傾げると。ルイザはマリオンみて微笑んだ。



―――――――――



ジュルード湖と聞いて、そんなやりとりもあったなあ、なんて思い出す。

そんなことを考えていたマリオンを他所に、美しい風景を崖の上から見下ろしながら気楽な様子で口笛を吹いていたクロードが口を開く。


「ねぇねぇ。アル~ 」

「なんですか 」

「確か、ヴィンスキーン領ってドルガー王の生家があった場所だよね~? 」


クロードの問いに、相変わらず無表情な顔を崩さないアルは頷いて肯定する。


「うーん。この前の村より余計にエルフ嫌いが多そうだよねぇ? 」

「ああ、確かに。ドルガー王国の元王都ドーフラも最初はひどかったしな。リードガルフの王都ガルディーニに変わっても民衆が変わるわけじゃないから、最初の二年くらいは近づくだけで逃げられてたっけ 」


エルフは嫌われている―――それが当たり前という認識にマリオンはやはり驚きを隠せなかった。

だって、エルフはその人を好きになったらとことん愛情を注ぐような、そんな愛情深い人達なのだ。


「な、何故。エルフというだけで、そんなに嫌われるのですか? 」


小さな呟きだったが、全員がマリオンを見ていた。


「うーん。どうしてだろうねぇ~? 僕たちも知りたいんだよね~ 」


苦笑したクロードが指を口にあて思案している。


「他の国じゃエルフは人間と同じように普通に生活してるんだよね~。もちろん以前はここら辺も普通に生活できてたんだよ~。でも、ドルガー王国の前の国王になった途端、急にエルフの迫害が始まったんだよね~ 」


百年以上先に生まれたマリオンには知らない事実だった。

ただ、エルフと人間を迫害していたドルガー王国をエルフ達が打ち倒しリードガルフは平定された、そんな簡単な話しか知らない。

だから迫害していた王国を倒したエルフ達が、助けたはずの人間に何故嫌われているのか全くわからない。


「まぁ、僕らが生まれる前からそうだったからね~。うちの父なんて、人間の態度が急に悪く変わったってすごく驚いたらしいよ~ 」

「私の父もそう言ってましたね。それはそれは病原菌か何かのような手酷い扱いになったそうですよ 」

「この国での僕たちの扱いはその頃から変わってないけどね~ 」


事も無げに話す二人にマリオンの胸が痛くなる。

何故、今の時代の人間はエルフを迫害しているのだろうか。

百年後にはみんな仲良く暮らせているのに。

マリオンの脳裏にエルザとクレルが浮かぶ。

もし、この二人が不当な扱いを受けていたら絶対に許せない。


「ほら、皆がそんな話をしているからマリオンの顔が泣きそうになってる 」


ユーリの言葉に、アルとクロードはマリオンをじっと見つめて首を傾げている。


「どうしてマリオンが泣きそうな顔してるんだ? 」


隣に立つミカルに、マリオンはただ首を振るしかできない。


「そんな顔しないでよ。別にマリオンを悪く言ってるわけじゃないよ 」

「そうですよ。ですからそんな顔をしないで下さい 」


そう言って心配そうにしている二人をみてマリオンは下を向く。

心の中では、何故? どうして、と疑問符だらけだった。

しかし、いくら考えてもマリオンにわかるはずもない。


(いつか理由がわかればいいな…… )


そうやってなんとか自分の心に収拾をつけた時、クロードとアルに頭を撫でられた。


「あ、あの! 何故皆さんはいつも私の頭を撫でるのでしょうか? 」


出会ってから結構な頻度で頭を撫でられているマリオンは先程の悩みを忘れ、目下の疑問を問うた。


「うーん。なんていうか、マリオンが可愛いからかな~? 身内を可愛がるお兄さんって感じになっちゃうんだよね~ 」


目を細めたクロードの微笑みはやっぱり色っぽい。これでもう少し真面目な話し方をすればすごくカッコいいのにちょっと残念だ、と思ったのは内緒だ。


「なんだか子供扱いされているような気がするんですが…… 」

「ええ~~!? 僕たち子ども扱いなんてしてないよ~? ね、アル。ミカル 」


クロードの言葉に二人とも頷くと、再びマリオンの頭を撫でた。


「皆、マリオンの頭を撫ですぎじゃないか? 」


ユーリが面白くなさそうに眉を顰める。


「いやだな、ユーリ様。マリオンに焼きもちやいてるんですか~? そんなに心配しなくてもちゃんと撫でてあげますよ~ 」

「お、おい! やめろっ 」

「クロード、ユーリ様が嫌がってるでしょう? やめなさい。ユーリ様は私があとでゆっくり撫でて差し上げますから 」

「―――っ!!! いらん! 」


クロードとアルがユーリの頭を撫でようと手を伸ばし、それを回避するユーリが面白い。

先程までの悩んでいた自分を元気付けるようなユーリ達の態度に、笑みが零れた。

マリオンが横をみると、ミカルも苦笑している。


「あの人たちは気にしないように。いつものことだから 」

「はい! 」

「少しは気にしてよ! 」


ミカルに大きく返事をしたところで、クロードに突っ込まれたが無視をしておく。


「私達は先に湖へ向かいますから、ユーリ様たちはごゆっくり。ああ、別行動で先に村へ向かわれても結構ですが? 」

「ええ~ミカル、ひどいよ~ 」

「じゃあ、皆で一緒にいきましょう! 」


マリオンは元気な声で皆を見た。


「いつか、人間とエルフがこうやって仲良く話せる日がきっときます! 私はそう信じてますから。まずはあの村から頑張りましょう! 」


未来から来たマリオンの声は、それが本当に来るという自信で溢れていた。


「マリオンのいう通りになるって俺も信じるよ 」


ユーリはマリオンの言葉を笑顔で肯定してくれた。皆も同じように笑顔で頷いてくれる。

皆で顔を見合わせると笑いながら歩き出した。



エルフの性質?性格?は重い……いや想いから出来てマス

新しい領に入ったので、次は少しは話を進めたいデス

というか、甘甘を早く書きたいのにっ

もう少しお待ちください<甘甘成分



いつも読んでいただいてありがとうございます。

思ったより早く投稿できました。

ただ、いつもより文字数が多いので読みづらいかもしれません(汗


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