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現れ、現れる者たち  作者: アズ
見える、聞こえる
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14/24

14話

 いつもと違う朝、不愉快にする目覚まし音も無く目覚めた私は上半身を起こす。白い清潔感ある無機質な部屋は当然自分の部屋ではない。起きると目の前にはオーバーテーブルの上にお見舞いの赤くてツヤツヤした林檎が3つ置かれてあった。ベッドは窓際で看護師が朝の巡回で開けた窓から風が入ってくる。ベッドの上から見える外の景色は青空だった。鬱陶しい季節になり、その時期だけ太陽が憎い。そこに涼しそうな格好の母が現れた。

「あら、昨日の林檎食べてなかったの?」

「夜食べようとしたら果物ナイフないの気づいて諦めた。それにこんなに食べれないよ」

「そう? ナイフなら看護師に言って借りれば良かったじゃない」

「言いにくいじゃん」

「なんで? それくらい頼んでもいいでしょ」

 看護師は忙しい。だから中々コールで呼んだり頼んだりするのが気が引ける。

「看護師も気が利かないわね」

「そういう問題? 間違っても看護師に言わないでよね」

 私はあの水女の一件で、少年と入れ替わるかたちで助かった私はプールサイドに上がりプールから出ると、どっと疲れが出てその場でどうやら眠ってしまったらしい。そこに職員が私に気づいて救急搬送してくた。

 あれから私の身に起きていた雑音や水にまつわる怪奇現象は消えていた。少年もあれ以来見なくなった。多分、水女の亡霊は私の中から消えたのかもしれない。

 今回の一件で私は間違いを犯した。それは見ず知らずのチャットで知り合っただけの人物を過度に信用していたことだ。それにより自分は死にそうになった。あれから連絡を取らないようにブロックした。あの少年がいなければ私は死んでいた。何故、あの小学生があのプールにいたのかは永遠の謎だ。でも、もしかすると私と少年との縁はまだ繋がっていたのかもしれない。それは一度は離れてもそれが途切れたわけではないように。悪い意味ではあの水女もそうだったわけだ。

 ただ、一つだけ解決出来ていないことが。それは私の顔色が皆には悪いように見えるという現象だった。これは単なる認識の違いで納得出来る話ではない。おかげで私は入院先の病院であらゆる検査をさせられたのだから。

 ただ、病院もなにもないのに入院をさせたりはしない。現に精密検査の結果本当に悪かったのだ。というわけで私は入院することになったのだが、早速嫌な気配がこの病院には至るところで漂っていた。

 病院が嫌いな理由はそういったものに私の体質上感じやすいことにある。これが勘違いならそうあって欲しいと願うが、殺されそうになったばかりで勘違いはもう私の中ではあり得ないになっていた。

 因みに私が入院している病院は地元では大きな病院にあたり、私がいるところは大部屋。女性中心、患者は私以外中年以上。かといって高齢者はたまたまなのかその部屋にはいなかった。病院の築年数は10年以上。古い病棟はこの病院の隣にあり、現在一般患者に使用されている感じはしない。病院の評判はレビューでは5段階評価中星3.5といったところ。この病院で心霊現象にあったというレビューはない。だが、私の直感ではこの病院は何かある。

 それは上の階から何かどんよりとした重い空気があって、それが一番強く感じ、次にこの大部屋に面する通路、日中はなんともないが夜になると嫌な気配が伝わってくる。あと、一階の売店。お菓子やパン、お握りなどが売っている。あの店も何か……他にも色々あってとにかく早く退院したい気分だった。

 だが、先生が言うにはなんでも手術が必要だとか言い出して、入院生活は暫く続くことになる。

 母はそんな私の悩みなんて露知らず、呑気に横で看護師から借りた果物ナイフで林檎を切っている。

 その林檎は甘く、少し枯れた喉を潤した。

 多分、外が暑いからだろう。

 母も自分で切った林檎を一緒になって口にした。

 母も私も梨より林檎派だった。家では父だけ梨派だ。

 私はもう一つ切った林檎を頬張る。その口の中でシャキシャキしてそして瑞々しさが広がり、甘さが乾いた喉を刺激し、更に食欲がそそった。

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