SOS 098 vsアルマ7
ヒナギクと合流したシルビアとサティ、そしてゼンは
通訳のカイケンが居ないため、カタコトでの会話を余儀なくされる。
しかし、シルビアはその状態にも関わらず、
ゼンの持っている情報を可能な限り共有させることが出来た。
言語に精通しているシルビア故の特技だった。
「……つまり、ゼンくんは今だけは転移術が使えるってこと?」
ヒナギクがシルビアに尋ねる。
「はい、おそらくそういうことです。
元々はカイケンさんの敵対勢力であるあのサイエンとかいう
猿仮面の女が持っていた術式らしいですね」
「《融合化》って能力は使えないの?」
サティもシルビアに聞く。
「使えるみたいですけど、今はあの二人に使っているみたいです。
同時展開はまだ危険でしょうね」
二人とは、カイケンとグレースのことだった。
「なーる。だからあんなに息が合ってるのね」
ヒナギクが納得する。
「でも、あの二人だけで勝てますか?」
サティが冷静に聞く。
「勘だけど、難しいかな。
実力的っていうより、あのカイケンさん。
多分本気は出してない。
負ける気は無さそうだけど、率先して勝つ気も無いね」
ヒナギクがばっさりいく。
「それって……やっぱり、あの人は裏切りものってことですか?」
サティが声を顰めて言う。
「いや、もっと単純。自分の手の内を
見せたくないだけだと思う。
でも、グレさんも気づいているし、
それでも戦力にはなると踏んで連れて来てるから、
状況として悪くはないわね」
ヒナギクは少しだけ考える。
「ねえ、ゼンくん?
《融合化》ってあたしにも掛けられるの?」
身振りでゼンに直接話をする。
「えと、あの二人の術式? を中止、停止?
させれば多分。はい…でも、誰とですか?」
ゼンは近くにいる機嫌の良くなさそうな
シルビアをちらちら見ながら、言葉を確認するように
ぼそぼそと話す。
「誰とってわけじゃないけど……
ちょっと試してみたいことがあってね」
ヒナギクはニヤリと笑い、全員に集まるよう指示する。
それを聞いて、シルビアとサティは眉を寄せる。
言った意味は分かるが、それを作戦と呼んでいいのかと
困惑してしまったからだ。
「大丈夫。あたしってほぼ勘で生きてきたけど、
今回はほぼ確実に上手くいく気がするのよ。
シルシル。サッチー。あたしを信じて。
……あとゼンくんも」
「…信じろと言われれば信じますが」
「管理官の言葉であれば、私は信じますよ」
シルビアはやや戸惑いながら、
サティはある意味盲目的に、ヒナギクの言葉に追従する。
ぎりぎりの翻訳技術で、シルビアはヒナギクの意向を
ゼンに伝える。ゼンもおそらく半分程度しか理解
出来ていないだろうが、不承不承で頷く。
そこで、あれ? とシルビアは何かを忘れていることに気が付く。
いると目障りなあれだ。
「……あの、ソアラは?」
誰に聞くでもなく、声に出したシルビアは
ちょうど真正面に座っているヒナギクと目が合う。
「あ、言うの忘れてた。
何か、途中で術式の構築が止まってたでしょ?」
「そう言えばそうですね…
ソアラにしては空気を読んだと思ってましたが」
「はい、あたしもそう思ってました」
「向こうで気絶してたわ。多分、術式酔いね」
「……」
「……」
術式を構築する場合、術と術の間を取ることは
非常に重要だったりする。
連続に見える攻撃も、その構築手順や構築時間などで
身体に負担をかけ過ぎないことがコツだったりする。
言い方は適切ではないが、オズマット教務官がよく言う
「良い感じに手を抜くこと」が大事なのだ。
例えれば、ソアラは息継ぎなしで延々と泳ぎ続けていたようなもので
いくら体力があっても、それではちょっとの遠泳も出来はしない。
それが属に言う「術式酔い」という状態異常だ。
「子供じゃあるまいし……」
シルビアの小言を流しながら、
ヒナギクは場を締める。
「ま、全員今のところ無事で何より
終わり良ければ総て良しってね。
準備はいい?」
「はい!」
「はい」
「は、はいっ」
「それじゃあ、反撃開始と行きますか!」
ヒナギクが愛刀に力を込める。




