SOS 097 vsアルマ6
シルビアとサティは、基本的には
どちらも合理的な人間であり
無謀な作戦を実行するような性格ではなかった。
ただ、冒険者ギルド職員にしては
珍しく真面目で正義感が強く、そして
規則に拘るところがそっくりだった。
ゼンの《融合化》の影響なのか定かでないが、
ソアラは急に術式の構築が上手くなった。
それと同じ様に、シルビアにも変化があった。
他人の術式にあわせて、
自分の術式を変化させることができるように
なった。
それにより、直接的な
攻撃方法が乏しかったサティの《毒操術》
も、実践的な術として使えると考えた。
確かにヒナギク管理官は強いが、
相手を考えれば無事では済まない。
シルビアとサティは、それをよしと
出来るほど、冷徹にはなれなかった。
「《離滅》」
あっさりと必殺術式が破れ、
二人は息を呑む。
振り返るアルマは枯木のような男で、
生きる生命力など、微塵も感じさせない
出で立ちをしている。
まるで幽鬼が乗り移ったような
感情の感じられない表情。
その隙間のような目と、
視線が交錯する。
その時、シルビアの足元に
いきなり方陣が現れる。
物覚えの良いシルビアはそれが
先程のサイエンが使用した
転移術式だと気がつく。
「うわっ!」
すぐ隣にいたサティは足元から飛び出した
三つの影に驚く。
そのうち二つの影は、真っ直ぐにアルマへと
向かっていく。
そしてもう一つ影は、
シルビアとサティを押し倒してきた。
「なっ!」
「ちょっ!」
反応もそこそこに、二人は不意打ちで
地面に押し倒される。
それは、黒髪の少年ゼンだった。
そして、先程の二つの影は
カイケンとサブマスターである
グレースだった。
『《蓮激》』
「《刃華》」
間髪を入れず、二人はアルマに攻撃を加える。
一撃必殺ではなく、手数の多い攻撃術式だ。
アルマはなんとかそれをいなしながら、
距離を取る。しかし、二人の攻撃は
凄まじく、防戦一方になっていた。
二人の嵐のような攻撃を遠めに
感じながら、シルビアとサティは
ゼンと物理的に急接近している。
簡単に言えば、ゼンが二人を
押し倒して乗っかっている状態となっていた。
右手はシルビアの左胸に、
左手はサティの右胸に置いている。
必殺の布陣。
「職員規則第十八条三項」
「心身の危険が充分程度予想される」
「または実際にその状況に置かれていると」
「判断出来うる場合」
「職員自身の判断で」
「対象の排除または討伐行為を」
「行うことこれを是とする」
「つまり」
「あなたを××します」
「何を言ってるか半分以上不明ですけど
とりあえずすいませんでした!」
シルビアとサティの波状論撃に
ゼンは恐れ飛び退いた。
もっとも、職員の仕事着は
対物対術の防護術を付与しているので
ちょっとの衝撃では何ともならないが、
気持ちの問題はそう簡単に割り切れる
ものではなかった。
無論、影響が軽微なのは二人の胸部が
つつましかった為では断じて無いだろう。
「……まあ、いいです。
というか、どうやって転移術式を
真似したんですか?
それとも、元々あなたの術式なのですか?」
と、シルビアはそこでゼンがまだ
この国の言葉を覚えていないことを
思い出し、面倒そうに歯噛みした。
聞きたいことは山ほどあるが、
とりあえず災厄をどうにかすることが
先決になる。
「仕方ない。ゼンさん。
こっちへ。ヒナギク管理官と合流しますよ。
サティ先輩もそれで良いですか?」
サティはコクリと頷く。




